上 下
56 / 713
サマバケ

DAY17

しおりを挟む
 ピンポーンとインターホンがなる。

「はーい」

と返事して扉を開けるとカレンがいる。何か不服だけど、1人よりは少しマシに思えてくる。

「おはようさん!」
「おはよ、早く入って。」
「おじゃましまーす。」

なぜか料理を教えることになった私。あの時の自分を少し恨みたい。

 一応、前の時よりは部屋は片付けたつもりだ。昨日の晩、ゴキブリが出た時は大変だった。叫びそうになりながら、隣のカレンに悟られないように退治しないといけないのが、なんというか面倒くさかった。何でこいつなんかに気を遣わないといけないのよ。

「んで、何から教えてくれるん?」
「まずはアンタ、何を作れるの?」
「ご飯は炊けるし、お湯は沸かせる。あとは鍋とか。プッチンってするやつ。」
「ほぼできてるやつじゃないの?まずは卵を焼いてみるか。」

カレンに卵を1つ手渡す。コンコンと机の角でヒビを入れて…グシャ。

「マジか!?」
「クソッ、今回はいけると思ったのにな。」
「どこがよ!?いい、ちゃんと見ててね。卵ってのは机で軽くヒビを入れてそこに親指を当てるか入れるかして開く!」

パカッ

「いい?ちゃんとできるまで教えてあげるから、2個目!」

カレンに2個目を渡す。机の角で軽くヒビを入れて、親指を当てて…グシャ。

「あーもう!なんでそうなるの?」
「まさかこれが、イッ、イッ、イップスってやつか?」
「知らないわよ!どんな力で握ってるのよ!はい、次!」

3個目。同じように机の角でヒビを入れて、ヒビを入れて、ヒビを入れて…

「怖がりすぎよ!」
「だって力弱くしたらヒビ入らないし。」
「さっきまでと同じ力でやったらいいの!」

次はしっかりヒビが入る。親指を軽く入れて…グチャ。

「んもおぉぉぉ!何でそうなるの?」
「だって…」
「だってじゃない!」

こんなんだったら、巨乳の黒リボンのロングヘアに『おに』って書いたハチマキでもつけてやる!

 卵割りの訓練は日が傾くまで続いた。黄身が少し崩れるくらいになっていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。あのモンスターだった頃に比べたらマシじゃない?」
「まだ、まだだ。この黄身の形も崩れないところまでやりたい。」
「今なら卵焼きくらい作れるでしょ?」
「違うんだ。俺の予想では…目玉焼きの方が簡単なんだ!」
「そりゃあ、フライパンに油しいて、卵落とすだけだからね。」
「少しでも簡単に作りたいだろ。」
「もしかして、私の時間気にしてくれてる?」
「いいや、一切。」

思わず、カレンの右脇腹にストレートをぶち込む。呻き声を上げながら割った卵は、黄身の形も崩れることなく、パカッと割れた。

「やった!割れた!ちゃんと割れた!」
「これでとりあえず、今日は終わりね。」
「じゃあ、これを焼いてみるわ。」
「えっ!?」

結果、まっくろーーーーーー!

「次は、卵焼きを教えてくれ。」
「あ、あ、あ、う、あ、え、あ、う。ギイャーーーー!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

交錯する群像劇

妖狐🦊🐯
BL
今宵もどこかのお屋敷では人と人による駆け引きが行われている 無垢と無知の織りなす非情な企み 女同士の見えない主従関係 男同士の禁断の関係 解決してはまた現れて 伸びすぎたそれぞれの糸はやがて複雑に絡み合い 引き合っては千切れ、時には強く結ばれた関係となる そんな数々のキャラクターから織りなす群像劇を とくとご覧あれ

【完結】あきらめきれない恋をした

東 里胡
青春
雪降る入試の日、お守りを無くしてしまった二宮花菜は、他校生の及川空人に助けられ恋をする。 高校生になった花菜は空人と再会するが、彼には一つ年上の春香という彼女がいることを知り早速失恋。 空人の幸せを願い、想いを口にすることなく、友達として付き合っていくことに決めた花菜。 だが、花菜の想いに気づいてしまった春香は、空人に近寄らないでと泣く。 どんな時も良くも悪くもあきらめが悪い花菜だったが、空人のことはあきらめなければと想いを抑え込もうとしたが――。 空人の親友真宙を交え、絡んでいく恋心と同じように花菜の病が加速していく。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

「2人の青、金銀の護り」 それはあなたの行先を照らす ただ一つの光 

美黎
ライト文芸
先祖が作った家の人形神が改築によりうっかり放置されたままで、気付いた時には家は没落寸前。 ピンチを救うべく普通の中学2年生、依る(ヨル)が不思議な扉の中へ人形神の相方、姫様を探しに旅立つ。 自分の家を救う為に旅立った筈なのに、古の予言に巻き込まれ翻弄されていく依る。旅の相方、家猫の朝(アサ)と不思議な喋る石の付いた腕輪と共に扉を巡り旅をするうちに沢山の人と出会っていく。 知ったからには許せない、しかし価値観が違う世界で、正解などあるのだろうか。 特別な能力なんて、持ってない。持っているのは「強い想い」と「想像力」のみ。 悩みながらも「本当のこと」を探し前に進む、ヨルの恋と冒険、目醒めの成長物語。 この物語を見つけ、読んでくれる全ての人に、愛と感謝を。 ありがとう 今日も矛盾の中で生きる 全ての人々に。 光を。 石達と、自然界に 最大限の感謝を。

今日も君の心はハカれない

本田ゆき
青春
私、葵遥です。 「あおいはるか」と呼びます。 名前は普通ですが、漢字のみで書くとよく中国人みたいだねと言われます。 現在、芸能科もある都立小鳥遊学園「普通科」に通う高校1年生です。 顔面偏差値だけが取り柄の平凡な私だったのですが、この度めでたく青い春がやってきました!! 私の意中の人は今をときめくスーパースター東陽太……の双子の弟、東静夜くん!! 東くんの何処がいいかと言うととても言葉では語り尽くせないんだけど……。 強いて言うなら、まず笑った顔が可愛くて軽く人が死ぬレベルで本が好きで本読む姿が様になっててもう彼のために読書という行為があるのかと実感するし身長が低い事気にしてて牛乳頑張って飲んでる努力が微笑ましくて尊いしときおり見える八重歯がちょっとエロティシズムを感じてそれだけでご飯3杯余裕でいけるし彼が生きてくれているという事実だけで普段宗教とか興味のない私にも人類を生み出してくれた神様に感謝せざるを得ないし彼を生み出した全ての軌跡に感激し……「ストップ、遥」 「え? ユウちゃん何で止めるの? まだ東くんの事100万分の1も語れてないのに……?」 友達のユウちゃんこと河合優希は普段の美形を歪める様に眉間に皺を寄せ、頭を押さえながら答えた。 「真顔で答えるのやめて。怖いから。 遥が東の事好きなのはよぉーく分かったから、もういい」 「ごめんね、私が理由を聞いたばかりにルカちゃんを暴走させちゃって……」 ユウちゃんの横でしゅんとなっているのがもう1人の友達のハル、もとい天江春香だ。 漢字は違うけど私と同じく名前は「ハルカ」なので私は「ハル」と呼び、ハルは私のこと「ルカちゃん」と呼んでいる。 「え? 私何か悪い事しちゃった?」 「いや、遥は悪くないよ。いつも通り中身が残念なだけで--」 ……これは、そんな残念な美少女、葵遥の前途多難な恋物語である。 ※この様に主人公が時々バグります。 何でもオッケーな方のみご覧下さい。 ※他サイト様にも掲載しています。

親友に彼女を寝取られて死のうとしてたら、異世界の森に飛ばされました。~集団転移からはぐれたけど、最高のエルフ嫁が出来たので平気です~

くろの
ファンタジー
毎日更新! 葛西鷗外(かさい おうがい)20歳。 職業 : 引きこもりニート。 親友に彼女を寝取られ、絶賛死に場所探し中の彼は突然深い森の中で目覚める。 異常な状況過ぎて、なんだ夢かと意気揚々とサバイバルを満喫する主人公。 しかもそこは魔法のある異世界で、更に大興奮で魔法を使いまくる。 だが、段々と本当に異世界に来てしまった事を自覚し青ざめる。 そんな時、突然全裸エルフの美少女と出会い―― 果たして死にたがりの彼は救われるのか。森に転移してしまったのは彼だけなのか。 サバイバル、魔法無双、復讐、甘々のヒロインと、要素だけはてんこ盛りの作品です。

アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための10の技

MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。 私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。 すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。 そんな方に言いたいです。 アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。 あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。 アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。 書いたまま放ったらかしではいけません。 自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。

処理中です...