45 / 713
サマバケ
DAY8
しおりを挟む
今日は学校ではなく、ラクタプドームに来ている。高校対抗、学校別のポイント制の大会だ。俺の出番は1日目の200mIM(個人メドレーの略)と2日目の100mFly(バタフライの略)だ。とりあえず今日の出番は昼前だから、アップは軽めにしておこう。
試合の時のアップは基本的に自由だ。男女別でコースが別れていたり、途中から飛び込み練習のためコースを空けないといけないが、それまでは自由。アップはメインプールとその横にあるアッププールでできて、その行き来は自由。どちらも人でいっぱいで泳げそうになくなるのは目に見えているけど。
まずはメインプールで長めの距離を落ち着いて泳ぐ。泳ぐのを許可されてからすぐのあまり人がいないときにしないと、遅れると全く泳げなくなる。まずは200mほどゆっくり泳ぐ。終わったときにはプールサイドには人がごった返していたので、俺は諦めてアッププールに向かった。
アッププールは人こそいるものの、元々25mずつしか泳ぐ気がないので、それで十分だ。肩と足を温めてから、全種目少しずつ泳ぐ。どれも調子はまあまあ。ベストこそ出るもののそこまでのタイムは期待出来なさそうだ。
飛び込み練習が解禁されたので、列に並ぶ。1本飛んで、ゴーグルのゴムの長さ調整をしてから2本目。ゴーグルはなんの問題もなくなって、俺はアップをやめた。
「加太、調子はどうだ?」
「イマイチですね。」
「何だそれ。でも今日は白野に勝つんだろ。」
「当たり前じゃないですか。」
顧問とそれだけ会話をして、観客席に戻る。試合まではあと2時間ほど。俺は試合を見ながら隣のピー也と話していた。
「カラオケは最終日でいいよな。」
「いいだろ。楓連れていくのは?」
「アウトだ。目の前に幼馴染を見ると俺は何をするか分からん。」
「ハハッ!ならやめとくわ。」
試合前1時間を切ったので俺はイヤホンを耳に突っ込み、音楽を聴き始める。聞いているのは昨日新しく作ったプレイリスト。夏にピッタリのサウンドがだいたい10曲で組んでいる。俺は集中力を高めていく。
試合前30分。試合用の水着を履き始める。更衣室は使わずにスタンド裏でするのが水泳部の当たり前だ。なぜなら、試合用の水着を履く時に使うザックという布があるため、別に更衣室まで移動する必要がないから。キツめのサイズを自分で選んでいるので履くのには時間がかかる。慣れれば10秒で履けるらしいが。
試合前15分。招集のアナウンスがあって、俺は召集所に向かう。召集所では、同じレースに出るメンバーが思い思いにストレッチしていて、誰も何も話さない。それぞれのレーン別に別れた椅子に座ってさらに集中力を高めていく。
試合前3分。前のレースが始まって、俺はジャージを脱ぐ。メッシュキャップを被り、ゴーグルをつける。その上からシリコンキャップを被り、準備完了。最後に肩を軽く伸ばして、自分のレーンの前に行った。
試合前1分。プールと審判に一礼をしてから、いつものルーティーン。肩甲骨を剥がして首をコキッと音を鳴らす。最後に親指で人差し指の関節を鳴らして、金木研の真似。これでスイッチオン。中学時代から何ら変わらぬルーティーン。周りの音が消えていく。
ホイッスルが鳴ってスタート台に上がる。ドーム中が静寂に包まれる。ピッという音に反応して飛び込む。若干反応には遅れたが、まずは得意なバタフライ…のはずなのに先頭から置いていかれるのが見える。しょうがない後半勝負だな。背泳ぎは本当に苦手。とりあえず泳ぎきって平泳ぎの息継ぎの時に見えた先頭は15メートルほど先。ここで焦っても遅くなるだけだから。しっかり一つ一つの動作を丁寧にして着実に距離を詰めていく。平泳ぎのターンの時に見れば10mほどまで差が詰まっていた。最後は得意なクロール。地獄のような練習を耐え抜いた体力をフルに使って先頭に追いつくように全力で泳ぐ。1人、2人と抜いていき、ラスト1人になった時にゴールした。タッチの差で2位だった。
白野には勝てたが、前半に課題があったレースだった。スタンドに戻ってからは応援。無声応援とは言われているが、自然と声が出ていて、試合が終わった時には声が枯れていた。
試合の時のアップは基本的に自由だ。男女別でコースが別れていたり、途中から飛び込み練習のためコースを空けないといけないが、それまでは自由。アップはメインプールとその横にあるアッププールでできて、その行き来は自由。どちらも人でいっぱいで泳げそうになくなるのは目に見えているけど。
まずはメインプールで長めの距離を落ち着いて泳ぐ。泳ぐのを許可されてからすぐのあまり人がいないときにしないと、遅れると全く泳げなくなる。まずは200mほどゆっくり泳ぐ。終わったときにはプールサイドには人がごった返していたので、俺は諦めてアッププールに向かった。
アッププールは人こそいるものの、元々25mずつしか泳ぐ気がないので、それで十分だ。肩と足を温めてから、全種目少しずつ泳ぐ。どれも調子はまあまあ。ベストこそ出るもののそこまでのタイムは期待出来なさそうだ。
飛び込み練習が解禁されたので、列に並ぶ。1本飛んで、ゴーグルのゴムの長さ調整をしてから2本目。ゴーグルはなんの問題もなくなって、俺はアップをやめた。
「加太、調子はどうだ?」
「イマイチですね。」
「何だそれ。でも今日は白野に勝つんだろ。」
「当たり前じゃないですか。」
顧問とそれだけ会話をして、観客席に戻る。試合まではあと2時間ほど。俺は試合を見ながら隣のピー也と話していた。
「カラオケは最終日でいいよな。」
「いいだろ。楓連れていくのは?」
「アウトだ。目の前に幼馴染を見ると俺は何をするか分からん。」
「ハハッ!ならやめとくわ。」
試合前1時間を切ったので俺はイヤホンを耳に突っ込み、音楽を聴き始める。聞いているのは昨日新しく作ったプレイリスト。夏にピッタリのサウンドがだいたい10曲で組んでいる。俺は集中力を高めていく。
試合前30分。試合用の水着を履き始める。更衣室は使わずにスタンド裏でするのが水泳部の当たり前だ。なぜなら、試合用の水着を履く時に使うザックという布があるため、別に更衣室まで移動する必要がないから。キツめのサイズを自分で選んでいるので履くのには時間がかかる。慣れれば10秒で履けるらしいが。
試合前15分。招集のアナウンスがあって、俺は召集所に向かう。召集所では、同じレースに出るメンバーが思い思いにストレッチしていて、誰も何も話さない。それぞれのレーン別に別れた椅子に座ってさらに集中力を高めていく。
試合前3分。前のレースが始まって、俺はジャージを脱ぐ。メッシュキャップを被り、ゴーグルをつける。その上からシリコンキャップを被り、準備完了。最後に肩を軽く伸ばして、自分のレーンの前に行った。
試合前1分。プールと審判に一礼をしてから、いつものルーティーン。肩甲骨を剥がして首をコキッと音を鳴らす。最後に親指で人差し指の関節を鳴らして、金木研の真似。これでスイッチオン。中学時代から何ら変わらぬルーティーン。周りの音が消えていく。
ホイッスルが鳴ってスタート台に上がる。ドーム中が静寂に包まれる。ピッという音に反応して飛び込む。若干反応には遅れたが、まずは得意なバタフライ…のはずなのに先頭から置いていかれるのが見える。しょうがない後半勝負だな。背泳ぎは本当に苦手。とりあえず泳ぎきって平泳ぎの息継ぎの時に見えた先頭は15メートルほど先。ここで焦っても遅くなるだけだから。しっかり一つ一つの動作を丁寧にして着実に距離を詰めていく。平泳ぎのターンの時に見れば10mほどまで差が詰まっていた。最後は得意なクロール。地獄のような練習を耐え抜いた体力をフルに使って先頭に追いつくように全力で泳ぐ。1人、2人と抜いていき、ラスト1人になった時にゴールした。タッチの差で2位だった。
白野には勝てたが、前半に課題があったレースだった。スタンドに戻ってからは応援。無声応援とは言われているが、自然と声が出ていて、試合が終わった時には声が枯れていた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】
S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。
物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
おっぱい揉む?と聞かれたので揉んでみたらよくわからない関係になりました
星宮 嶺
青春
週間、24hジャンル別ランキング最高1位!
ボカロカップ9位ありがとうございました!
高校2年生の太郎の青春が、突然加速する!
片想いの美咲、仲の良い女友達の花子、そして謎めいた生徒会長・東雲。
3人の魅力的な女の子たちに囲まれ、太郎の心は翻弄される!
「おっぱい揉む?」という衝撃的な誘いから始まる、
ドキドキの学園生活。
果たして太郎は、運命の相手を見つけ出せるのか?
笑いあり?涙あり?胸キュン必至?の青春ラブコメ、開幕!
【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件
木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか?
■場所 関西のとある地方都市
■登場人物
●御堂雅樹
本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。
●御堂樹里
本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。
●田中真理
雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる