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転校生2
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しおりを挟む息を大きく吐いて気持ちを落ち吐かせるが手の震えは止まらない。
「もしもし、お久しぶりです。お父さん」
この電話をかけるのに二日かかった。
本当ならば話したくもないが由衣のパーティーの事を聞かなければならなかった。
声を聞いただけで心臓がギュッと掴まれるような痛みに襲われる。
「今週末、及川グループのご子息、由衣さんの誕生日パーティーに招かれまして。行ってもよろしいか聞いておこうかと」
電話向こうで馬鹿にしたように鼻で笑われる。実際、馬鹿にしているのだろう。
「え?行ってもいいんですか?……分かりました。間宮の名前は出さないので安心してください。では」
電話を切ると一気に疲れが襲ってくる。
たった数分話しただけでこれだけ疲れるのはある意味凄い。
まさか行ってこいと言われるとは思っていなかった。裕也を表に出す事を嫌がっていたのにどんな心境の変化なんだろうか。
「はぁ……憂鬱だ…。パーティーに来ていける服買わないとな…」
パーティーに着ていけるような服が何がいいか裕也には分からない。
そこで少し考えた後、克也について来て貰おうと思い付く。
克也ならよくパーティーには行っているだろうし、友達もいない裕也にとって聞けるのは克也しかいない。
メールで由衣に行ける事になったと送り、そのまま克也に電話をかけた。
「須藤さん?ちょっと助けて欲しいんですが…」
『お前から電話は初めてだな。どうした?』
「パーティーに着ていける服がなくて…分からないので買い物ついて来てくれませんか?」
『……デートだな。いつがいい』
「デートって……、いつでも行けるので合わせます」
『明後日の放課後でいいか?』
「はい。ありがとうございます」
そう言うと電話が切れた。
克也の後ろでバタバタしていて話し声も聞こえていたし忙しい中で電話に出てくれたのだろう。
助けて貰ってばかりで申し訳ない。
ちゃんとお礼を送るべきだろう。
克也と出会ってから本当に裕也の生活は変わった。
高校生になって半年間殆ど学校の敷地内から出ていなかったのに今週末は裕也が苦手なお偉いさんが大量にいるパーティーに出ることになった。
自分にとっていい変化なのか、微妙な所だ。
人と関わりたくないと思っている裕也にとって多くの人と関わらなければならない克也といるのは結構しんどい選択だった。
(それでも一緒にいたいんだよな……重症だ。怖い)
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