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再会
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しおりを挟む「どーすっかなー」
家を出る時間まで後三十分もないのだが裕也はまだ変装しないでいくか迷っていた。
克也に素顔がバレた所で困ることは何もない。
裕也自身、自分の顔が整っていることはこれまでの経験上嫌でも理解しているが、いくら裕也の顔が整っていようと克也程の男がレイプするとは思えない。
変装して行って学校の人が裕也だと認識して克也と映画を見ているなんて事にひとりでも見つかれば……考えたくない……。
やっぱり素顔で行くか。
久しぶりに何もせずに外に出るから謎の緊張感がある。
今日は十月の終わりにしては温かいらしい。
お気に入りの白のハイネックのニットを着て行くことにした。
「誰かと遊ぶのなんて久しぶりだな」
中学1年の終わり、犯され始めた時以来か。
心なしかドキドキしているしやっぱり楽しみなのだろう。
休日は誰にも会わないよう引きこもりを貫いてきた裕也を連れ出すんだ。とことん克也を振り回して楽しんでやることに決める。
時間が押してしまっているので急いで部屋を出る。変装していない状態なので誰かに会わないように気をつけながら駅を目指した。
「うっわーめちゃめちゃ目立ってるよ…」
待ち合わせ場所にいる克也の周りに大きな円が出来ていた。
明らか様に囲んでいるものではなくさり気なくそこにいて克也を見ているようだ。
あそこに行く勇気は裕也にはない。
かといって克也に気づいて貰えるまで待っているのも素顔を克也に見せるのは初めてなので分かるはずもない。
どうしようか、と考えているとふと克也の顔が上がり裕也を見だと思ったら歩いて向かってきた。
もちろん克也に集まっていた視線も一緒にだ。
「何してるんだ?来たなら声をかけろ」
「……!!!なんで僕だとわかったんです!いつもと全然違うのに!」
「見た目は違っても匂いが同じだ」
「……ああ、なるほど。そんなことより早くこの場を離れましょう!」
克也へ向けられた沢山の視線から逃げ出したくて克也の手を引き早歩きで歩く。
「目立ちすぎでしょう!!!もうちょっとこう、気配を消すとか顔を隠すとか!!」
克也は意味がわからないと言う顔をする。
完全なる八つ当たりなのは分かっている。
克也にとっては目立ってしまう事は当たり前すぎて自身に向けられている視線に無関心なだけなのだが目立ちたくない裕也にとってどこにいても目立ってしまう克也の隣は最悪の場所だった。
しかしそんな事は約束した時から分かっていたことだ。
弱みにつけこまれて取り付けられた約束だが克也は裕也が本気で嫌がれば連れ出す事はしなかっただろう。
それでも約束してしまったのは、認めたくはないが克也と旧図書室以外で過ごしてみたいと思っているからだ。
「如月、お前今日は一段と可愛いな」
「なっ!!!可愛いなんて辞めてください…僕は男なのに」
「ふっ…楽しいな」
「まだなにもしてませんよ…今日は引きこもっている僕を連れ出した責任としてとことん付き合ってもらいますから!!!」
「あぁ」
「さぁ!予定通り映画に行きますよ!」
映画館につき、時間的に洋画のアクション系の映画を見ることにした。
映画館に来るのは三年ぶりで変わっていることが沢山あってキョロキョロしていると克也に手をひかれる。
「おい、ぶつかるぞ」
「すみません」
人の多いところは好きじゃないけど久しぶりに外に出ると新しいものばかりで楽しい。
連れ出してくれた克也には感謝だ。
「チケット買ってくるからここにいろよ」
「あ!お金…!」
「いらない。デートだからな」
「デッ…!!」
そうか。
一応、克也とはカップルだからこれはデートなのか。
デート…初めてだ。
チケットは須藤が買ってくれるみたいなのでその間に裕也は飲み物とポップコーンを買いに行くことにした。
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