上 下
21 / 55
再会

2

しおりを挟む


「どーすっかなー」

家を出る時間まで後三十分もないのだが裕也はまだ変装しないでいくか迷っていた。

克也に素顔がバレた所で困ることは何もない。
裕也自身、自分の顔が整っていることはこれまでの経験上嫌でも理解しているが、いくら裕也の顔が整っていようと克也程の男がレイプするとは思えない。

変装して行って学校の人が裕也だと認識して克也と映画を見ているなんて事にひとりでも見つかれば……考えたくない……。

やっぱり素顔で行くか。
久しぶりに何もせずに外に出るから謎の緊張感がある。

今日は十月の終わりにしては温かいらしい。 
お気に入りの白のハイネックのニットを着て行くことにした。

「誰かと遊ぶのなんて久しぶりだな」

中学1年の終わり、犯され始めた時以来か。
心なしかドキドキしているしやっぱり楽しみなのだろう。
休日は誰にも会わないよう引きこもりを貫いてきた裕也を連れ出すんだ。とことん克也を振り回して楽しんでやることに決める。

時間が押してしまっているので急いで部屋を出る。変装していない状態なので誰かに会わないように気をつけながら駅を目指した。

「うっわーめちゃめちゃ目立ってるよ…」

待ち合わせ場所にいる克也の周りに大きな円が出来ていた。
明らか様に囲んでいるものではなくさり気なくそこにいて克也を見ているようだ。

あそこに行く勇気は裕也にはない。
かといって克也に気づいて貰えるまで待っているのも素顔を克也に見せるのは初めてなので分かるはずもない。

どうしようか、と考えているとふと克也の顔が上がり裕也を見だと思ったら歩いて向かってきた。
もちろん克也に集まっていた視線も一緒にだ。

「何してるんだ?来たなら声をかけろ」  
「……!!!なんで僕だとわかったんです!いつもと全然違うのに!」
「見た目は違っても匂いが同じだ」
「……ああ、なるほど。そんなことより早くこの場を離れましょう!」

克也へ向けられた沢山の視線から逃げ出したくて克也の手を引き早歩きで歩く。


「目立ちすぎでしょう!!!もうちょっとこう、気配を消すとか顔を隠すとか!!」

克也は意味がわからないと言う顔をする。
完全なる八つ当たりなのは分かっている。

克也にとっては目立ってしまう事は当たり前すぎて自身に向けられている視線に無関心なだけなのだが目立ちたくない裕也にとってどこにいても目立ってしまう克也の隣は最悪の場所だった。


しかしそんな事は約束した時から分かっていたことだ。
弱みにつけこまれて取り付けられた約束だが克也は裕也が本気で嫌がれば連れ出す事はしなかっただろう。

それでも約束してしまったのは、認めたくはないが克也と旧図書室以外で過ごしてみたいと思っているからだ。

「如月、お前今日は一段と可愛いな」
「なっ!!!可愛いなんて辞めてください…僕は男なのに」
「ふっ…楽しいな」
「まだなにもしてませんよ…今日は引きこもっている僕を連れ出した責任としてとことん付き合ってもらいますから!!!」
「あぁ」
「さぁ!予定通り映画に行きますよ!」

映画館につき、時間的に洋画のアクション系の映画を見ることにした。
映画館に来るのは三年ぶりで変わっていることが沢山あってキョロキョロしていると克也に手をひかれる。

「おい、ぶつかるぞ」
「すみません」

人の多いところは好きじゃないけど久しぶりに外に出ると新しいものばかりで楽しい。
連れ出してくれた克也には感謝だ。

「チケット買ってくるからここにいろよ」
「あ!お金…!」
「いらない。デートだからな」
「デッ…!!」

そうか。
一応、克也とはカップルだからこれはデートなのか。
デート…初めてだ。

チケットは須藤が買ってくれるみたいなのでその間に裕也は飲み物とポップコーンを買いに行くことにした。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

執着もの短編集

円みやび
BL
色んな執着ものBLの短編集です。 大体1話、10,000文字くらいだと思います。 書きたいと思ったものをバッーと書いてます。 リクエストで増やす場合もあります。 ・運命じゃない君が運命だった 運命の番に振られたΩ×なんとしても逃がさないα ・悪魔に魂を売った日 ネグレクトされてる少年×美しいヤクザ ・眠っている間に お馬鹿な流され×幼馴染

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

頑張って番を見つけるから友達でいさせてね

貴志葵
BL
大学生の優斗は二十歳を迎えてもまだαでもβでもΩでもない「未分化」のままだった。 しかし、ある日突然Ωと診断されてしまう。 ショックを受けつつも、Ωが平穏な生活を送るにはαと番うのが良いという情報を頼りに、優斗は番を探すことにする。 ──番、と聞いて真っ先に思い浮かんだのは親友でαの霧矢だが、彼はΩが苦手で、好みのタイプは美人な女性α。うん、俺と真逆のタイプですね。 合コンや街コンなど色々試してみるが、男のΩには悲しいくらいに需要が無かった。しかも、長い間未分化だった優斗はΩ特有の儚げな可憐さもない……。 Ωになってしまった優斗を何かと気にかけてくれる霧矢と今まで通り『普通の友達』で居る為にも「早くαを探さなきゃ」と優斗は焦っていた。 【塩対応だけど受にはお砂糖多めのイケメンα大学生×ロマンチストで純情なそこそこ顔のΩ大学生】 ※攻は過去に複数の女性と関係を持っています ※受が攻以外の男性と軽い性的接触をするシーンがあります(本番無し・合意)

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

風俗店で働いていたら運命の番が来ちゃいました!

白井由紀
BL
【BL作品】(20時毎日投稿) 絶対に自分のものにしたい社長α×1度も行為をしたことない風俗店のΩ アルファ専用風俗店で働くオメガの優。 働いているが1度も客と夜の行為をしたことが無い。そのため店長や従業員から使えない認定されていた。日々の従業員からのいじめで仕事を辞めようとしていた最中、客として来てしまった運命の番に溺愛されるが、身分差が大きいのと自分はアルファに不釣り合いだと番ことを諦めてしまう。 それでも、アルファは番たいらしい なぜ、ここまでアルファは番たいのか…… ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです ※長編になるか短編になるかは未定です

処理中です...