運命の番から逃げたいです 【αとΩの攻防戦】

円みやび

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変だ。あいつは一体どうしたんだ!!
あのキスをした日からとりあえず甘い。
前から触れられることは多かったが今は隙さえあればベタベタ触りまくってくる。

連絡先も交換させられ毎日メッセージが届く。急に態度が変わってどうすればいいか分からず焦っておたおたしてしまって本も読めない。

旧図書室のドアの前に立ち深呼吸する。
慣れないことばかりされるせいで気持ちがついていかない。
ドアを開けるとこちらを見ながら座っている克也と目があいドキっと心臓が動く。

「遅い」
「これでもバレないよう慎重に急いで来ているんです」
克也は返事をせず黙って膝を叩いた。
そこに早く座れと急かしているのだ。

ここで反抗しても意味がないことがもう嫌になる程わかっているので大人しく乗ると裕也の手を取り克也の首の後ろに回される。

「顔が近くて嫌なんですが」
「それがいいんだろ」
右手で裕也の頭を撫でながら左手は腰や背中などを触っているが触り方が妙にエロくて声が出かけてしまう。

裕也自身、自分が元々敏感なのは知っていた。でも克也に触られるとそういう目的じゃないときでさえ身体が中から熱くなってしまう。

だから昼休みにベタベタ触ってくるこの時間は気が抜けず裕也は理性との戦いになる。
少し気を緩めてしまえば克也にもっと触ってくれと強請りそうになる。


「如月、明日も会いたい」
「明日は学校がありません」
「知っている。だから俺の部屋に来るかお前の部屋に行くかここで会うかだ。選べ」

こんな命令口調にもいつのまにか慣らされてしまっていることに裕也は気づかない。
「……僕の予定とか…」
「土日は殆ど部屋から出ずひとりで過ごしているだけだろ。問題あるのか?」

「………なんで知ってるんですか…。ここにしてください。読みたい本もありますし」
「13時だ」
「はぁ…分かりました…」

土日はひとりになれる大切な時間だから前だったら絶対に断っていたのに克也ならまぁいいかと思ってしまう自分がいる。

その自分の変化に驚き怖くなる。
いつか気づかないうちに克也を信用してしまうのではないかと思いながらも今までよりゆっくり会える事に喜んでいる。

克也は怖いやつだ。
こんなに警戒しているのに裕也の心に入り込んでくる。


今日も昼休みは旧図書室で克也と過ごしている。
先週の土曜日は裕也が本を読んでいるのをいつものように膝に乗せて見ているだけだった。

克也とふたりで会い初めてもう一ヶ月になるがよく周りにバレないよな、どうやってあの注目の中バレずにここに来ているのか疑問が残るところだ。


「今週の土曜日はどこか出掛けるぞ」
「……えーと、それは断れるんですよね?」
「断ってもいい」

まさか克也の提案を断れるなんて!
嬉しくなって克也に笑顔を向けた。

「え!本当ですか!ならおひとりで行ってきてください!」
「その代わり、週明けお前の教室に会いに行く」
「はぁっ!?それ断らせる気ありませんよね!!」

「いや別に俺はどっちでもいい」
「卑怯ですよ!!!」
「それでも俺はお前に会いたいからな。仕方ない」
「…なっ!!真顔でそんな恥ずかしいこと言うのはやめてください!」


触れてくるだけじゃなくこういう恋人っぽい甘い言葉を言われることも増えた。
そんな言葉をかけられるのは慣れなくてテンパってしまうから辞めてほしい。

こうして誰かと過ごして話したりするのは久しぶりだ。
克也の暇つぶし相手にされているだけだと知っていても何故だが嬉しい。

ひとりで過ごすのも飽きてきたし残り五ヶ月もないから克也の暇つぶしに少しくらいは付き合っててもいいか、と思うくらいには気を許してしまっている。

ひとりで過ごすのは好きだけど一人ぼっちはつらい。

「それでどこに行くんですか」
「どこがいい?」
「決まってないんですか…!」
「どこか、と言ったろ」

決めてから誘えよ!!お生憎、俺は三年間は誰とも遊んでねーんだよ!!

「……映画とか?」
「いいな、14時に門の前でいいか…」
「門の前なんて無理です!!駅に待ち合わせにしましょう!」
「わかった。楽しみだ」

駅も十分危険だが門の前なんて待ち合わせしたら確実に学校の奴らに見られるに決まっている。
変装をといて行ったら須藤といるのは僕だとバレないだろうけど…須藤には変装していることバレてしまう。
学校の奴らにバレて目立ってしまうよりは須藤ひとりにバレたほうがましかもしれない。





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