20 / 55
再会
1
しおりを挟む変だ。あいつは一体どうしたんだ!!
あのキスをした日からとりあえず甘い。
前から触れられることは多かったが今は隙さえあればベタベタ触りまくってくる。
連絡先も交換させられ毎日メッセージが届く。急に態度が変わってどうすればいいか分からず焦っておたおたしてしまって本も読めない。
旧図書室のドアの前に立ち深呼吸する。
慣れないことばかりされるせいで気持ちがついていかない。
ドアを開けるとこちらを見ながら座っている克也と目があいドキっと心臓が動く。
「遅い」
「これでもバレないよう慎重に急いで来ているんです」
克也は返事をせず黙って膝を叩いた。
そこに早く座れと急かしているのだ。
ここで反抗しても意味がないことがもう嫌になる程わかっているので大人しく乗ると裕也の手を取り克也の首の後ろに回される。
「顔が近くて嫌なんですが」
「それがいいんだろ」
右手で裕也の頭を撫でながら左手は腰や背中などを触っているが触り方が妙にエロくて声が出かけてしまう。
裕也自身、自分が元々敏感なのは知っていた。でも克也に触られるとそういう目的じゃないときでさえ身体が中から熱くなってしまう。
だから昼休みにベタベタ触ってくるこの時間は気が抜けず裕也は理性との戦いになる。
少し気を緩めてしまえば克也にもっと触ってくれと強請りそうになる。
「如月、明日も会いたい」
「明日は学校がありません」
「知っている。だから俺の部屋に来るかお前の部屋に行くかここで会うかだ。選べ」
こんな命令口調にもいつのまにか慣らされてしまっていることに裕也は気づかない。
「……僕の予定とか…」
「土日は殆ど部屋から出ずひとりで過ごしているだけだろ。問題あるのか?」
「………なんで知ってるんですか…。ここにしてください。読みたい本もありますし」
「13時だ」
「はぁ…分かりました…」
土日はひとりになれる大切な時間だから前だったら絶対に断っていたのに克也ならまぁいいかと思ってしまう自分がいる。
その自分の変化に驚き怖くなる。
いつか気づかないうちに克也を信用してしまうのではないかと思いながらも今までよりゆっくり会える事に喜んでいる。
克也は怖いやつだ。
こんなに警戒しているのに裕也の心に入り込んでくる。
今日も昼休みは旧図書室で克也と過ごしている。
先週の土曜日は裕也が本を読んでいるのをいつものように膝に乗せて見ているだけだった。
克也とふたりで会い初めてもう一ヶ月になるがよく周りにバレないよな、どうやってあの注目の中バレずにここに来ているのか疑問が残るところだ。
「今週の土曜日はどこか出掛けるぞ」
「……えーと、それは断れるんですよね?」
「断ってもいい」
まさか克也の提案を断れるなんて!
嬉しくなって克也に笑顔を向けた。
「え!本当ですか!ならおひとりで行ってきてください!」
「その代わり、週明けお前の教室に会いに行く」
「はぁっ!?それ断らせる気ありませんよね!!」
「いや別に俺はどっちでもいい」
「卑怯ですよ!!!」
「それでも俺はお前に会いたいからな。仕方ない」
「…なっ!!真顔でそんな恥ずかしいこと言うのはやめてください!」
触れてくるだけじゃなくこういう恋人っぽい甘い言葉を言われることも増えた。
そんな言葉をかけられるのは慣れなくてテンパってしまうから辞めてほしい。
こうして誰かと過ごして話したりするのは久しぶりだ。
克也の暇つぶし相手にされているだけだと知っていても何故だが嬉しい。
ひとりで過ごすのも飽きてきたし残り五ヶ月もないから克也の暇つぶしに少しくらいは付き合っててもいいか、と思うくらいには気を許してしまっている。
ひとりで過ごすのは好きだけど一人ぼっちはつらい。
「それでどこに行くんですか」
「どこがいい?」
「決まってないんですか…!」
「どこか、と言ったろ」
決めてから誘えよ!!お生憎、俺は三年間は誰とも遊んでねーんだよ!!
「……映画とか?」
「いいな、14時に門の前でいいか…」
「門の前なんて無理です!!駅に待ち合わせにしましょう!」
「わかった。楽しみだ」
駅も十分危険だが門の前なんて待ち合わせしたら確実に学校の奴らに見られるに決まっている。
変装をといて行ったら須藤といるのは僕だとバレないだろうけど…須藤には変装していることバレてしまう。
学校の奴らにバレて目立ってしまうよりは須藤ひとりにバレたほうがましかもしれない。
22
お気に入りに追加
1,807
あなたにおすすめの小説
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。


白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる