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恋人ごっこ
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しおりを挟む何発も殴られたαは両手をダランと下げていて意識がなくなっている。
「ちょ!!!須藤さん!それぐらいで大丈夫です!!!」
「こいつまだ息してるし、足りないだろ。」
今までに感じたことのないほどαのオーラをまとっている。
ゆうやのために怒ってくれているのが伝わってくる。
助けられた裕也でも怖いくらいだ。
「いや、それ以上やったら死んじゃいますって……!!」
「死ねばいいんだよ、こんなやつ」
こんな冷たい目をする克也は見たことがない。
「いたっ!!」
「どうした!?どこか怪我したのか?」
須藤の目が冷たかったものから一気に変わって心配と焦っているのが見てとれる。
「ふっ、肋骨をちょっと…」
素直に弱みを言ってしまった自分にびっくりする。
信用してない奴に弱みを見せるなんて絶対にしちゃいけないことだ、いつもなら何もないフリをして立ち去るのに。
心から僕のことを心配しているような顔をするから思わず本当の事を言ってしまった。
克也が真顔でじっーと裕也の顔を見ていたと思えば膝と脇の下に手を入れられ持ち上げられる。
「ちょ!なにしてるんだよ!あり得ないから!いたいっ!」
克也にお姫様抱っこされ、恥ずかしさから暴れてしまい肋骨に激痛が走る。
「ジッとしておけ。病院に行くぞ」
「病院には行くけど理由は階段から落ちたことにします。騒ぎにしたくありません」
ここはそれなりに名の知られた進学校だ。
その中で未遂とはいえレイプがあったと知られれば学校中だけでなく学校外まで広まり注目される。
克也は眉間を寄せ少し考えている。
「分かった。でも学校側には伝える。あいつらをそのままにしておく訳にはいかない」
「それも駄目です。俺だとバレれば家に連絡が行きます。心配をかけたくない」
「ならレイプしようとしたαをそのままにしておけと?」
「そうです、あいつらの事などどうでもいいんです。でも僕が目立つことは避けたい。あいつらはきっと僕がΩだと言いふらしているでしょう、あいつらが停学なんかになったら僕となにかあったと言っているようなものです」
「もう一度やられるなんてヘマはやらかしません。今あったことは忘れてください」
「………」
克也は腕の中にいる裕也を一瞥して何も言わず門に向かって歩き出す。
待って待って、この人いつまでお姫様抱っこしてるんだよ?
こんなとこ誰かに見られたらおわりだ。
「おろしてくれませんか?」
「駄目だ」
「ひとりで行けますっ!!!」
「言うことを聞かないなら俺もお前の言うことは聞かない。どうする?」
うっ……そんなの…大人しくしてるしかないじゃん!!!!
「………誰かに見られて明日騒ぎになったら上手く誤魔化してくださいね…」
「多分な」
信用ならねーー!!でも助けてくれた上に病院まで連れるらしいしやっぱり克也は優しいのか?いや、人の弱みにつけこんで脅してくるような奴だ。
本当は何を考えているか分からない。
門の前に出てタクシーを呼ぶのだと思っていたらベンツが一台停まっていた。
そのベンツから降りてきた人に思わず見とれてしまう。
克也はイケメンって感じだがその人は美人って言葉がピッタリだった。
その人と一瞬目が合うと悲しそうな顔をしたと思ったらすぐに真顔に戻ってしまった。
「克也様、お疲れ様です」
「架純、急に呼び出して悪かったな」
いつの間に呼び出していたんだ。全然気づかなかった。
そう言って克也は裕也をお姫様抱っこしたまま車に乗るので須藤の膝の上に横抱きにされる形になってしまう。
「ひとりで座れます!降ろしてください!」
「さっきも言ったろ?言うことを聞かないなら……明日が楽しみだな?」
それを言われたら逆らえないじゃないか。
「紹介する、俺の専属の松下架純だ。そして付き合っている如月裕也」
「如月様、よろしくお願い致します」
架純が後ろを向いて丁寧にお辞儀してくれる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そう言ったがよろしくする時なんてあるのだろうか?
付き合っていると言っても昼休みの時間しか会わないのに。
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