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接触
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しおりを挟む容赦なく襲ってくる吐き気と頭痛に耐え、なんとか授業中に自分の部屋にたどり着いた。
Eクラスを除けば優秀な高校なのでサボっている生徒もおらず誰にも会わずにすんだ。
普段、抑制剤の副作用はほぼないからやはり飲みすぎたらしい。
頭痛薬や吐き気を止める薬を飲みたいが副作用だから効くか分からないし治るどころか悪化するような気もするので辞めた。
いっそのこと吐いてしまった方が楽になるかと思いトイレに向かって口に手をつっこみ吐こうと試みるが胃液しか出てこない。
中学生時代、犯されるたび精液を飲まされていた為、終わった後吐きたくて何度も繰り返していた行為だから慣れているから大体何かしら出てくるのに…。
思い返すと、昨日の昼から何も食べていない。
「……何も出ない訳だ。もう寝るしかない」
頭痛と吐き気を代償に抑制剤が効いているのか今はとりあえず発情は収まっているが薬が切れたら本格的に発情期の始まりになるだろう。
今までなら、抑制剤さえ飲んでいれば少し身体がだるいくらいで学校に行けていたのだがこれからは須藤と出会ってしまうとどれくらい抑制剤が効いてくれるか分からない。
危険を犯すつもりはないので今回は部屋に籠もる事にする。
とは言っても、抑制剤は部屋にいても飲むつもりだから一週間ダラダラするだけになりそうだ。
変装をとき、部屋着に着替えて起きたときにすぐ飲めるようベットサイドに水と抑制剤を置いておく。
吐き気がひどく相変わらず食欲はないがさすがに何か胃に入れておかないとヤバそうだと思い買いだめてあるウィダーインゼリー流し込んだ。
身体がベタベタするのでシャワーを浴びたいが体調が悪すぎる為断念しベットに入るとやっと張り詰めていた気持ちを楽にすることができた。
「大変な2日間だった…」
寝ようと目をつぶるが須藤の事を考えてしまいなかなか眠れない。
須藤は自分の為と言っていたが裕也を助けてくれた。
ヒートになってしまっている裕也にαなのに襲いかかったりしなかったし頼めば旧図書室から出ていってくれた。
ニヤニヤしていたけれど。
まぁ、生徒だけじゃなく教師からも圧倒的な信頼を得ている須藤だ。
いくらヒートのΩがいたとしても犯したりはしなさそうだ。
近くにきたのも自分の運命の番を確認しにきただけとか?
今日の須藤の雰囲気だと関わりたくないと言えば聞いてくれるかもしれない。
そもそもこれ以上裕也に関わるつもりがない可能性も高そうだ。
そうだといい。
それなら僕は発情期前にさえ須藤に会わなければ心配せずに高校生活を送ることが出来る。
発情期が終わって、もしまた会うことがあれば話しをして裕也にはできる限り関わらないようにお願いしよう。
どうにかなる可能性が見えたところで意識が遠くなって行った。
(須藤side)
「如月裕也…か。少しは楽めそうな奴だな」
如月に関わる事を考えるだけでニヤニヤがとまらない。一週間後が楽しみだ。
難しくもない勉強に俺自身の中身なんて関係なく讃えて持ち上げ媚びてくる奴ら。
自分の外面は完璧ってのもあるんだろうがニコニコして少し話を聞くだけで信用されるんだから楽な世界だ。
今まで何人ものΩが発情誘発剤を自分に打ち克也を誘ってきたが克也がそれに乗ったことは一度もない。
Ωが目の前で発情していてもまとわりつく匂いも全てが汚いモノのようにしか感じられなかった。
だから裕也に会っても大丈夫だろうと思っていた。
が、あの強烈な匂い。
部屋から出た後に持っていた抑制剤を打ったからよかったもののあのまま部屋の中にいたら獣のように裕也に襲いかかっていただろう。
まさか卒業まで残り半年で運命の番なんてモノに出会うなんて思いもしなかったが運命だからと大切にする気もないし番なんてもっての他だ。
でもあの目。俺に離れろと理性も殆ど残っていないのに血が出るほど噛み切り睨んでくるあの意志の強さ。いい。あんな奴を組み敷くことが出来たらどんなに楽しいだろうか。
好きになられるのは面倒くさいし、番になる気はないが卒業までの半年間、いい暇つぶしにはなりそうだ。
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