執着もの短編集

円みやび

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悪魔に魂を売った日

前編

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「やっと帰ってきたなぁ、悠介くん」
自分の名前を知っていることに対して驚きはしなかった。
そんなことより美しい男の隣にいる太った男の声が思った以上に高くてそっちの方が気になった。
そんな悠介の様子を見てつまらなさそうにしていた美しい男の眉がピクリと上がる。

「余裕そうだけどこの状況が分からないほど馬鹿なのか、それとも顔に出ないだけなのか」
美しい男は声まで美しいらしい。
天は二物を与えずなんてよく言うけど多分この男は五物くらいは与えられている。

美しい男だけがソファーに座り太った男は横に立っている。
「お前たち双子はこれから金持ちのおっさん達に犯され続けるんだ。死ぬまでな」
「嫌だ!どうして俺がそんなことやらないといけないんだ!!!」
太った男が楽しそうに言う言葉に嫌だ嫌だと泣き喚く双子の弟に笑ってしまいそうになる。

圭介は思った以上に馬鹿だったらしい。
この状況でそんなことを言ったところでじゃあやらなくていいよ、なんてなるはずがないのに。
「うるせぇ。拒否権なんてある訳ねぇだろ。恨むなら二千万も借金した親父を恨むんだな」
恨む?むしろこればっかりは感謝したいね。

父親がヤクザに二千万も借金するような馬鹿で本当に良かった。
こんな両親の姿を見るのに後十年はかかると思っていた。
ラッキーすぎる。
けど足りないなぁ。
ちょっと殴られて土下座するくらいじゃ全然足りない。

「いい事思いついた。誰かがこいつの性器を舐めてイかせることが出来たら二千万チャラにしてあげるよ」
「冬夜さん!本気ですか?」
太った男は驚いたように冬夜と呼ばれた美しい男を見る。
「楽しそうでしょ?安藤、イッちゃ駄目だよ?」
楽しそう、なんて言うくせにその顔はニコリともしない。

冬夜の提案は地獄に垂らされた一本の糸のようで両親の目に希望が映ったのがわかった。
けれど自分たちが太った男の汚い性器を咥えることは出来ないらしくお前がやれ、と三人の視線が悠介に集まる。

唯一助かるかもしれないそれを出来ないと思うその三人の余裕さに驚く。
「誰がやるの?早くしないとなしにしちゃうけど」
「こいつがやります」
圭介が指した指の先には俺がいてその役目を悠介に押し付けようと両親は必死に頷く。

「君がやるの?」
これから死ぬまで男たちに犯され続けるくらいなら今ここでこのキモいものを咥えることなんて容易いことだ。
けれどこのままチャラになるなんてあり得ない。

両親がこれくらいで許されるくらいなら死ぬまで犯されてた方がいい。
「やります」
その俺の言葉にこれで助かるのだと身体の力を抜く両親と泣き喚いていた顔から一転して余裕そうな顔をしだす圭介に思わず苦笑いする。

俺がやりますと答えたことが意外だったのか、冬夜は何かを探るようにじっと悠介を見る。
その視線に囚われたように身体が動かなくなっていたが少し離れた所にいた圭介に背中を押されたことで少しだけ足が進んだ。

未だにじっと見てくる冬夜を真っ直ぐに見返す。
「この人をイかせても借金チャラにしなくていいので一つだけお願いを聞いてもらえませんか」
「お願い?」
頷くと冬夜は少し悩むそぶりを見せた後、楽しそうに笑った。

「いいよ。何がいいの?」
「この二人を死んだ方がマシだって思うくらいの目に合わせて貰えませんか」
悠介の言葉に冬夜はより一層楽しそうに笑みを深める。
「はぁっ!ふざけるな!何言ってんだ!」
「うるせぇっ!!!」
口元にガムテープを貼られていて喋れない両親は何かを言おうとウッーと唸り、その代わりに口の開く圭介が喚く。





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