執着もの短編集

円みやび

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眠っている間に

中編

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【中編】


あれから要にバレちゃいけないって思うほどどう接していいかわからなくなった。
要を避けまくってあまり会えていないのに夢は相変わらずほぼ毎日だし、要に会えなくて寂しいし。

寂しさを紛らわせようと合コンに行っていい感じになった女の子を抱こうとしたのにイけないだけじゃなくてとうとう勃たなくなった。
お酒飲み過ぎたって誤魔化したけど何度繰り返してもどんな女の子にも勃たない。
それなのに要の事を考えただけで硬くなってしまう。
こんな状態で要の近くになんていれる訳がない。

「はぁ、」
大きなため息が出る。
「どうしたんだ?」
「高人ぉ、俺もう二度と要と会えないんだ。」
「はぁ?何言ってんだ?」
高人は馬鹿にしたように笑うけど本当に笑い事じゃないんだ。
だって小さい頃からずっと一緒の親友に会えないんだ。

「俺….、要が好きなんだ…」
凄く思い切って言った。
俺が一人で抱え込むにはもう限界だったから。
「ん?やっと自覚したの?前から分かってたことじゃん」
「はぁっ!?」
なんて事ないようにとんでもない発言をされてまた大きな声を出して教授に怒られる。

「な、なんで…」
前からって要から離れる前からって事?
高人が気づくくらいなら百戦錬磨の要だって気づいているんじゃ……。
どうしよう。終わりだ。
気持ち悪って言われてもう会ってくれなくなるんだ。

ショックで涙が出てくる。
いい年した男が泣くなって思われるかもしれないけど我慢できなかった。
「おいおい。泣くなよ!俺、殺されちゃうよ!」
「ころ?でもっ、要に気持ち悪いって、もう会えないって、」
実際に言われた訳ではないが気持ちがバレているのならそうなるのは目に見えている。

終わりだ。本当に終わってしまった。
「何、バレたらそう言われると思って避けてる訳?でも要に言われた訳じゃないだろ?」
「うん、だって親友だと思ってた男が自分を好きだなんてキモいと思うだろ?」
「じゃあさぁ、告っちゃえば?」
考えもしなかった事を言われて涙も引っ込む。
バレないように離れているのに告白なんかしたら意味ない。

「無理決まってるだろ!」
「だってさ、どうせ告白しなくてもバレたくなくて近寄れないんだろ?それなら言っちゃって近くにいれるかもしれない可能性に賭けた方がよくない?」
「た、たしかに…」
それは一理あるかもしれない。

夢をみて要を意識したように告白されて要も翔太を意識するかもしれない。
そうしたら一緒にいられる!
でももし無理だったら?
気持ち悪い言われるのなんて耐えられない。

「大丈夫だって。要は翔太のこと好きだと思うよ」
「本当に?」
ニッコリ笑って頷いた高人を見て何故だか分からない意味不明な自信が湧いてきた。
「じゃあ告白する」

そうと決まればすぐに行動しないと!!
携帯を開き、一番上にある要を押す。
会いたくなるから見ていなかったけどそこには翔太を心配するメッセージが何通もきていて嬉しくなる。

「今日会える?」
よし、と気合いを入れて送信するとすぐに既読になり会えると返信があった。
その下にじゃあ家に来て、とあって珍しいなと思う。
要が翔太の家の合鍵を持っているくらいよく来るのだが翔太が要の家に行くのは一人暮らしを始めてから三度目だ。

「高人、ありがと」
「どーいたしまして」
高人はいい奴だな。
男がすきだって急に言い出した俺をすんなり受け入れてくれるのだから。

告白って何て言えば良いのだろう?
テンプレ通り、好きです。付き合ってください?
そんな恥ずかしいこと要を前にして言えるだろうか。

今から緊張して心臓があり得ないくらいバクバクする。
「頑張れ」
丁度授業が終わったので高人の言葉に頷いて要の家に向かう。
翔太はまだ授業が一個残っているが要は今日は授業がないので家にいるはずだ。
あんなに避けていたのに会えると決まったら嬉しくて時間が迫っている訳でもないのに早く会いたくて駆け足になる。



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