上 下
467 / 495
エクストラチャプター:プリンス・レオポルド・テリブル・24アワー

バロン・ポイント①

しおりを挟む
ポイント男爵はゴディバ公爵門閥貴族カミドス伯爵配下の男である。
元々はカミドス伯爵最強の騎士であり
ゴディバ公爵内に蔓延していた家格至上主義に真っ向から対立していた
カミドス伯爵に仕えていた、 ゴディバ公爵門閥内の決闘に置いて数々の輝かしい功績と
何度もカミドス伯爵の危機を救い、 正に騎士の中の騎士である。
ゴディバ公爵領の男児は彼を尊敬し、 ゴディバ公爵領の女児は彼に恋をした。

この彼の功績により
鳴りを潜め伯爵でも門閥貴族になれる等
ゴディバ公爵内に蔓延していた家格至上主義は鳴りを潜めていた。
つい最近迄は。



再誕歴7524年セフテンバー11日。

ベネルクス王国カミドス伯爵領、 カミドス伯爵邸にて。
一人の男が馬車でやって来た。

「懐かしいな、 ここは」

ポイント男爵である、 しっかりとした身形で髭を綺麗に整えている。
いわばステレオタイプの貴族の恰好をしている。
元々平民に近しい騎士であり、 ポイント男爵家に婿入りの形で入ったのだ。
形から入るのも止む無しだ。

「・・・・・?」

門が何故か開かない、 不審に思ったポイント男爵は警備に声をかけた。

「如何した? 何故門が空かない?」
「・・・・・ここから歩いて下さい」
「何? 何故だ?」
「・・・・・」

嫌そうな顔をする警備。

「おい、 何だその顔は? 私が誰だか知っているのか?
ベネルクスの王子の義父であるポイント男爵だぞ?」
「伯爵からの命令です」
「カミドス様がそんな事を命じる訳はない、 早く開けろ」

後ろから馬車が来る。

「おい、 詰まってるぞ、 あ、 降りて来た、 ピーか」

後ろの馬車から降りて来たのはピー男爵。
彼はポイントの同僚で男爵位だったがポイントとは仲が良かった。

「やぁ、 ピー、 実はコイツが門をっ!?」

窓から顔を出していたポイントを引きずり下ろすピー。

「ぶへっ!! な、 何をするんだピー!!」
「邪魔だ!!!」

ポイントの顔面を蹴り飛ばすピー。

「馬車を退かせ!!」
「はい」

警備達はポイントの馬車を退かしてピーの馬車を通したのだった。

「お、 おい!! 何で私は駄目でピーは良いんだ!!」
「はい、 ポイント男爵は馬車に何か持ち込んでいる可能性があるとして
馬車で向かう事は禁止されています」
「何だと!? 私が誰だかわかっているのか!?」
「伯爵からの指示です」
「カミドス様がそんな事を命じる訳はない!!」
「でしたら伯爵に直談判してみては?」
「・・・そうさせて貰おう!! この私をないがしろにした事を後悔するが良い!!」

そう言って、 通用口から中に入るポイントだった。



「・・・少し寂しくなったか?」

以前来た時よりも人が少なくなった気がする。

「ん? あぁ、 ガボレ!! 久しぶりじゃないか!!」

カミドスの使用人で庭師のカボレと会うポイント。
彼とは騎士時代から気心が知れた仲である。

「・・・・・」

カボレはポイントを見た瞬間に何処かに行ってしまった。

「・・・何だ? 私の事忘れたのか? そんな訳はないと思うんだが・・・」

首を傾げながら邸に向かうポイント。
邸のドアの前には護衛の騎士が立っていた。

「・・・プレとアージは?」

プレとアージは実力の高い騎士であり、 本邸の門番を任されている男である。

「うわ、 マジで来たよ」
「どの面下げて来たんだ」

二人の若い騎士は露骨にポイントを見下していた。

「おい、 何だその態度は、 私は」
「男爵のポイントだろ? 俺達の爵位は子爵だ、 男爵如きが黙ってろ」
「ふん、 お前達は若いから知らんだろうがな
今の時代は爵位で決まるもんじゃない、 ゴディバ公爵領は爵位重視だったが
私の娘がレオポルド殿下と結婚した暁には爵位重視政策は消え去るだろう」
「爵位云々一番言っているのはお前じゃねぇの?」
「陛下になんとかして貰おうとか超ださいな」

ゲラゲラ笑う二人の騎士。

「私を侮辱しているのか?」
「「侮辱しているのはお前が先だ」」

二人の騎士は軽蔑と憎悪の瞳でポイントを睨みつけた。

「・・・・・何の話だ」
「カミドスに聞けば?」
「カミドス様を呼び捨てだと!?」
「アイツ準子爵に格下げされたからな
伯爵の癖に上に喧嘩売ったせいで俺達までこんな雑用させられて・・・」
「何と!? どういう事だ!?」
「「カミドスに聞け!!」」

二人の騎士は叫んだ。
ポイントはドアを開けた。

「な、 なんと・・・」

以前にカミドスの邸に来た際には様々な調度品があった。
派手では無いがそれでも代々受け継がれた品々があり歴史を感じさせた。
きちんと掃除が行き届いた美しい邸だった。
だが今では塵はつもり、 調度品の数々は無くなっていた。
所か床のタイルまで剥がされ、 柱の何本かも無くなっていた。
極めつけに風を感じたと思ったら窓すら無くなっていた。

「こ、 これは一体・・・カ、 カミドス様!!」

現れたのはカミドス伯爵、 否、 準子爵
やつれており、 服も着替えていないのかボロボロだった。
美しい髪の毛も今やくすんでいる。

「これは一体どういう事ですか!?」
「っ!!」

カミドスは全力でポイントを殴りつけた。

「お前のせいだ!! この糞野郎!!」
「!?」

嘗て『騎士の中の騎士』『真の勇者』『我が最大の友』とポイントを称えた舌で
ポイントを罵倒するカミドスだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~

草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★ 男性向けHOTランキングトップ10入り感謝! 王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。 だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。 周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。 そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。 しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。 そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。 しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。 あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。 自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界隠密冒険記

リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。 人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。 ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。 黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。 その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。 冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。 現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。 改稿を始めました。 以前より読みやすくなっているはずです。 第一部完結しました。第二部完結しました。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

親友に彼女を寝取られて死のうとしてたら、異世界の森に飛ばされました。~集団転移からはぐれたけど、最高のエルフ嫁が出来たので平気です~

くろの
ファンタジー
毎日更新! 葛西鷗外(かさい おうがい)20歳。 職業 : 引きこもりニート。 親友に彼女を寝取られ、絶賛死に場所探し中の彼は突然深い森の中で目覚める。 異常な状況過ぎて、なんだ夢かと意気揚々とサバイバルを満喫する主人公。 しかもそこは魔法のある異世界で、更に大興奮で魔法を使いまくる。 だが、段々と本当に異世界に来てしまった事を自覚し青ざめる。 そんな時、突然全裸エルフの美少女と出会い―― 果たして死にたがりの彼は救われるのか。森に転移してしまったのは彼だけなのか。 サバイバル、魔法無双、復讐、甘々のヒロインと、要素だけはてんこ盛りの作品です。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

処理中です...