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チャプター15:ドクターズ・オウクワード

バキューム

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「奴は恐らく真空を作り出せる」

ジョウゲンの言葉に首を傾げる一同。

「何だよ真空って」

ポイニクスは聞き慣れない言葉に当然聞き返す。

「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態・・・
って言っても分かりにくいか、 分かり易く言うと空気が無い状態だ」
「なるほど、 空気を失くしたからフロギストン※1 が無くなって私の炎が消えたって事か」


※1:燃焼に必要な物質とされた物。
しかし現在では否定された学説である。


「フロギストンは間違いとか聞いた事があるぞ?
まぁそれはさておき俺はダターイが空気を操れるって言うから
ダターイの参考になるかと思って色々調べてたんだ
人間は息を吸うが空気が無い、 若しくは薄いと途端に苦しくなる
我々はあの建物内部に突入して恐ろしく苦しくなった
恐らくは真空の手前の空気が薄い状態にする事も出来るだろう
と言うか空気を薄くしていた方が良いのだろうな、 真空は作り出すのは難しいらしいから」
「そうなの?」
「ダターイにやらせてみたが駄目だった」
「なるほど・・・うん? じゃあさっきの破裂は何だ?」
「あれは真空だ、 空気が薄いと物は膨らむ、 空気が無ければ破裂する位に膨らむ
と言う事だ」
「ふーむ・・・・・」

考えるポイニクス。

「と言う事は何か? 近付いたら破裂、 若しくは窒息死する、 と?」

ブルー・ドラゴンが尋ねる。

「窒息まで行かなくても呼吸困難になればあっさりと殺される
チャンダブリーも呼吸が苦しくなった所をやられた」

ジョウゲンが苦々しく口にする。

「・・・ジョウゲンさん、 逃げましょう、 これ以上の被害は不味い」

エルメンドラが口を出す。

「ヴァカを言うんじゃない小娘!! ここで逃げ帰るなんて愚の骨頂※2!!」


※2:程度がこれ以上ないこと。
最高、 善悪いずれにも用いたが、 今では好ましくないことについていうのが普通。


「だけどジョウゲンさん、 損切り※3 良くするじゃない」


※3:含み損が生じている投資商品を見切り売りして損失額を確定する事・
これ以上の傷を拡げない為に行われる。


ラオの言葉に反論するエルメンドラ。

「・・・現状維持だな、 ルクセンブルグさん、 アンタ等行くだろ?」
「当然じゃない」
「しかし話に聞くと近付くと死ぬんじゃないのか? 如何しろって言うんだ?」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、 危険を冒さなければ宝は得られない」
「こけつというかならくにつっこんでいるようなもんだよすっぽん
えんきょりでぽいにくすにたくさんこうげきしてもらって
うぃるぱわーをつかわせてしょうかさせよう」
「いや、 それは無為に終わるだろう」
「なんで?」
「先程、 ダターイが真空でやられた、 そして真空を作り出すのは難しい
にも拘らずあっさりと真空でダターイが死んだ、 つまり・・・」
「敵さんは真空を簡単に作れる、 と?」

ジョウゲンの言葉にポイニクスが返す。

「その通り、 そしてあっさり使ったという事は一回こっきりの技じゃない
そして真空がその扱いならば空気を薄くするのは左程難しくないだろう」
「つまり、 炎を燃やして消させても敵さんのウィルパワーの削りにはならない、 と」
「その通りだブルー・ドラゴン」
「やっかいな・・・」
「つーか、 エメラルド・タブレットあるんだから燃やすんじゃねぇよ!!」
「そーだそーだ!!」
「ほら見ろ!! 常識無いのかお前は!!」

ジョウゲンとラオと一緒になって抗議するすっぽん

「お前はどっちの味方だよ・・・しかし悠長になれないよ
タルパの群れが何時やって来るか分からない」
「確かに・・・あれは一体何なんだ?」
「分からないけども急がねばならない」

作戦会議は尚も続いた。




一方その頃VHO本部の無呼吸アプニャ
全力で休息を取りながらも想定と違う決闘者達の行動に困惑していた。

(ヴァリャーグとバルカンの連中はいきなり襲って来ても違和感が無い
だがさっきのは・・・ベネルクスの連中だったか? 奴等が急に襲うとは妙だな・・・
先のバルカンの傷跡と言い何か有ったのか・・・?)

無呼吸アプニャは全力で横になっていた。

「だ、 大丈夫ですよね? また襲ってきたら・・・」

ブラムがおどおどと尋ねる。

「・・・・・心配するな、 連中もヴァカじゃない
正体不明の相手にそう簡単にツッコむか」
「そ、 そうですよね、 はは・・・」
「それよりもブラム、 アンタはどっか行ってて、 休憩の邪魔」
「し、 失礼しました・・・何か食べ物でも」
「要らん!!」
「失礼しました!!」

ブラムはそそくさと立ち去った。

「ったく・・・しかし一体何が起こってるんだ?
もしかしてモーントの残党でもいるのか? だから気が立っているのか・・・?」

無呼吸アプニャは考えながら微睡に墜ちて行った。
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