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チャプター9:キラー・クイーン

メガロマニア

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「何者だ? 貴様は?」

ベネルクス95世は変容したアーベントロートに尋ねた。

「俺はモーント・ズンディカーズの重篤患者エルンスト・クランケ
誇大妄想メガロマニア、 本名は捨てた」

ごっ、 と鈍い音を発して誇大妄想メガロマニアは地に伏した。
ワームウッドが飛び掛かって誇大妄想メガロマニアを殴り飛ばしたのだ。
哀れ誇大妄想メガロマニアの顔面はまるで柘榴の様に粉々になった。

「残念、 そこじゃない」

嘲りを含んだ声で誇大妄想メガロマニアがまるでばねのおもちゃの様にのたうって
ワームウッドを刎ね飛ばした。
ぐちゃぐちゃになった頭部を修復しながら誇大妄想メガロマニアは立ち上がった。

「っ!?」
「ワームウッド卿!?」
「くっ、 近衛!! 何とかして止め」
「鎮まれ、 お前達」

慌てる臣下を横目にベネルクス95世は悠々と述べた。

誇大妄想メガロマニア、 か
己が有名で全能で何かの力に満ちているという思い込んでいる奴だろう?」
「そういう病気らしいな、 とは言え俺とてそこまでヴァカじゃないさ
慎ましい性格だよ俺は」
「一国の王に話す態度では無いぞ? 充分尊大だ」
「アンタはこういう台詞を聞いた事が無いか?
『子供の可能性は無限大、 何にでも成れる』と」
「良い言葉だな、 一見良い言葉なのが素敵だ」
「一見じゃなくても良い言葉だと思うが」
「『子供の可能性は無限大、 何にでも成れる』
即ち、 成功者に成れた筈だが成れなかった者は
【無限の可能性】が有ったのに成らなかった、 即ち自分の選択
自己責任になる、 良い風に言っているが
実態は『子供の可能性は無限大、 何にでも成れる
だからお前が落伍者になったのもお前の責任だ』と言っているに等しい」
「辛口だなぁ、 アンタは子供の頃に言われた記憶は無いのか?」
「私は親には『お前は王族だ、 未来永劫』と言う感じの事を言われた記憶がある」
「それはそれで辛いな、 さて俺は物凄い、 しかしながら
俺自身はその凄さを御し切れん、 さっきの話に準えるのならば
『子供の可能性は無限大、 何にでも成れるが
何を如何すれば良いか分からない』という状態だ
超絶凄い俺でも指針が無ければ動けない」

誇大妄想メガロマニアの身体がぐにゃぐにゃと蠢く。

「ほぅ・・・」

蠢きが収まったそこにはチーズの姿が有った。

「変身能力か」
「そのとー、 んん、 その通り」

チーズの声に変わる誇大妄想メガロマニア

「俺は、 いや俺様か? 俺様は見た事のある奴の姿をコピー出来る
オリジナル性は無いが少し喋った相手ならば技量もコピー出来る
即ちドラゴヴァニア五連星を瞬殺した化け物に成った、 って事だ」
「チーズとは会った事が有る、 奴本人と比べて見劣りはするな」
「まぁ、 奴の優生侵攻ドミナント・ドミネーションとか
見た事の無い技はコピーできないよ、 だがしかし」

ぐにゃりと蠢き、 KATANAを取り出す誇大妄想メガロマニア

「お前達ならばこれで充分だろう」
「・・・・・」

呆れたように溜息を吐くベネルクス95世。

「で? 君は私達を殺して如何する?」
「お前に成り代わる」
「私に、 か、 極限のヴァカだな」
「何?」
「お前は考えた事が無いのか?」

ベネルクス95世はツカツカと誇大妄想メガロマニアの元に近付く。

「何の真似だ?」
「チーズは究極の下衆だ、 奴は強い以外に取り得が無い
弱かったら真っ先に排斥される、 いや強さこそがチーズで
強くなければ奴なんて存在しないも同じだ」
「だから?」
「強さしかない下衆が何故私に従うと思う?」

ずっ、 と滑らかに誇大妄想メガロマニアの元に流れる様に移動し
KATANAを圧し折るベネルクス95世。

「なっ!?」
「私がチーズよりも強いからだよ、 ディスタンス」
「!?」

吹き飛ばされる誇大妄想メガロマニア

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!??」

謁見室のドアに激突する誇大妄想メガロマニア

「ディスタンスは防御技だろう!? 何で吹っ飛ばされる!?」
「私のディスタンスは攻撃にも転用できるようにしてある」
「・・・・・」

起き上がると同時に飛び掛かる誇大妄想メガロマニア

「ディスタンス」

先程とは威力が桁外れに上がったディスタンス。
本来は防御技だが、 ベネルクス95世は押し出す様に展開する為
シールドバッシュ※1 の様に扱える。


※1:盾を利用した攻撃方法の一種で手に持った盾を相手に
叩きつけるもしくは突き当てる等して攻撃を行う方法。


木端微塵になった誇大妄想メガロマニア

「他愛無い・・・」

軽く溜息を吐いたベネルクス95世。
しかし後ろから木端微塵になった誇大妄想メガロマニアの腕が起き上がり
ベネルクス95世に殴りかかった。

「!?」

殴った感触はある。
だが音はしないしベネルクス95世に触れても居ない。
彼女との間の虚空を殴っている、 ディスタンス?
いやこの感触は・・・全ての疑問を棚上げして
誇大妄想メガロマニアは早急に全身を再生した。
殴っている腕を切り離して離れた。

「・・・・・」

切り離した腕は形容しがたい状態になって消滅した。

「なんだ・・・今のは・・・何かの技か?」
「いや、 技と言うが業?」
「・・・・・まぁ良い、 見たからもう使える」

ぐにゃり、 と誇大妄想メガロマニアは変容した。

「自分自身に殺されるってどんな気分だ?」

にやり、 とベネルクス95世メガロマニアは笑った。
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