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彼は如何するべきだったのか?

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「・・・大昔にそんな話を聞いた事が有る」

ポツリと籾殻が言った。

「昔のアメリカで好き勝手にやり過ぎて
保安官含めた住民達に蜂の巣にされた男の話」
「あぁ、 その話は俺も知っている
ソイツの嫁だったが愛人だったが
『そこまでやる必要無いじゃない!!』って言って
『追い込んだのはお前達だ』って返されたんだっけか・・・」

何かで知った話だ。
何かの漫画で復活したポル=ポトが出て来てポル=ポトの事を調べて
調べている内に見つけたサイトで見つけた事件。
悪人が私刑リンチに有った話。
何処かで聞いた話。

「・・・・・最初に裁かれていれば
いや金持ちなんだから悪い事しなければ小学も地獄に行かずに済んだだろうに」

罪人が刑務所に入るのは不自由だろう。
しかしながら罪人は罪人の場所に行かねばならない。
罪人は刑務所に入る事で世間から隔離される。
もしも世間の中で罪人が居たのならば彼等はきっと殺されるだろう
小学の様に、 大昔に蜂の巣にされた男の様に

「何れにせよ、 俺には如何する事も出来ない
ヘタな事言って街一つの人間達の恨みを買いたくない」
「・・・・・俺は如何すればいいんだろう?」
「正直に警察に話した方が良い、 罪に問われれば塀の中に行って
問われなければ逃げた方が良い、 アンタも殺されるかもしれない」
「・・・・・」

籾殻はふらふらと去っていった。
籾殻がその後どうなったのか、 穴口は調べる気にもならなかった。



その後、 穴口は無事事務所に帰り
夏休高校や周辺のアーケードでは『警察の依頼で探していた小学が
死体で見つかったから仕事終わった』と何も知らない体の探偵としてアピールして
後の恨みを躱す事にしたのだった。

そしてアーケードの肉屋で新しく始めたコロッケとメンチカツを食べ歩きながら
早々にその場を立ち去ったのだった。

そして穴口は二度と夏休高校の周辺に近付く事は無かった。

小学の事は事件は連日『警察官僚子息の犯罪揉み消し事件』として
ワイドショーやネットニュースに上がった。
刺された小学の父親は一命を取り留めたが小学の家は何者かに放火された。
その後、 一連の責任を取って小学の父親は逮捕された。

小学に襲われたクラスメイトの少女もネット上にアップされた。
彼女は美人でアーケードの看板娘の様な少女だったらしい。



親友二人と共に歩く姿はまさに青春と言うべき素晴らしい物だった。





「・・・・・」

やるせない気分になりながら窓の外を見る穴口。
探偵の仕事なんて物は大体はこんな物だ、 殺人事件を解決して
喝采を浴びる、 なんて経験はまず無い。

コンコンと事務所がノックされる。
また仕事の依頼だろうか。

「どうぞ」

穴口は入室を促した。
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