【短期連載】穴口探偵の事件簿：消えた不良のボンボン

在庫処分

穴口は自動車を運転しない。
金には困って無いのだがガソリンや車検の値段があまりにも勿体無い。
幸運で金持ちになったが基本的にケチ性なのだ。

故に歩きか自転車で行動する。
車検に比べれば自転車保険の方が安い。
流石に二駅の距離を歩こうとは思わないので自転車で向かった。

途中でアーケード商店街に向かった。
夏休高校へのアポイントメントの時間からはまだ時間が有るのだ。

「・・・・・?」

穴口は自転車を降りて手で押しながら首を傾げた。

「30％OFF、　50％OFF・・・」

近年のアーケード商店街は閑散としている事が多いが
この商店街は空店舗も有るがそこまで多くない。
繁盛とは言えないが生活は成り立っていると思われる。
そしてこの商店街の殆どの店では割引セールを行っていた。

「閉店セール・・・いや、　そうでも無いか」

それなりに活気があるようだ、　そもそも住民達に陰鬱な雰囲気は無い。
寧ろ喜んでいる様な・・・

「何かの祭りか?」

穴口が見て回る。
自転車屋では『ドライブレコーダー在庫処分!!』と看板が有った。

「自転車のドライブレコーダー?」

そんな物があるのか、　穴口はまだ時間に余裕がある為、　自転車屋に入った。
自転車屋は昔ながらの店と言う風貌だったが窓枠が新しくなっていた。

「・・・誰だい?」

やや歳食った店主が穴口に尋ねる。
店の中も昔ながらだが店主も昔ながらの頑固者だろうか?

「ドライブレコーダーの安売りをしているって書いてあったから来たけども」
「あぁ、　それだよ」

店主が指差した先にはワゴンに山になっているドライブレコーダーが有った。
値札は7000円と書かれていたがどんどん安くなっていき、　今では・・・

「1500円か・・・」
「500円で良いよ」

いきなりの値下げに流石に怪しむ。

「何でそんなに安いの?」
「邪魔だからさっさと捌きたい
ネットの・・・なんたらにも出してるんだが中々売れなくて困っている」
「はぁ・・・ちょっと失礼」

自分のスマホで商品を見る穴口。
正規の値段は5000円弱、　去年発売された物でそれなりに良い物らしい。
ハイエンドでは無いが良い物だ。

「じゃあ下さい」
「毎度アリ、　うん?　1個?」
「1個で充分でしょ」
「前後左右を録画するのに・・・いや上下も含めて6つ買わないと駄目だろ」
「どんだけ治安悪いんですかココ」
「・・・あ、　そ、　じゃあそっちの電気屋でこれのビデオと電池買って来な」
「ビデオ?」
「今じゃあなんたらカードって言うんだっけ?」

恐らくSDカードの事だろう、　少し腑に落ちないが良しとして
電気屋でSDカードと電池を購入したのだった。