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第11章 バカと天才は死んでも治らない

第280話 破かれた偽り

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『呆気ノナイモノダ。アレダケ煩ワシカッタ奴ノ最期ト言ウノハ』

 落ちていくタクマ達を確認したZは、オーブが飛んでいった先の方に向き直った。距離は長いようだが、今のZにとって、あそこまで移動するのは簡単なことだった。
 残りの雑魚五匹、罪源と共に捻り潰せば邪魔者はいなくなる。もはや、今のこの力を持ってすれば、かのαだって敵ではない。今の私は無敵、新世界に君臨する邪龍となれる。Zは遂にタクマ達の息の根を止めた悦びに、つい大きな笑いが溢れた。
 しかしその時、崖の奥から太陽のような光柱が立ち上った。その光は凄まじく、一瞬にしてゾンビ達を灰に変え、Zの体にも大ダメージを与えた。

『ナ、何ダコノ光ハ!……マサカ!』
「俺、参上してやるぜぇ!」

 その声と共に、崖から黄金の龍が現れた。その龍の上には、タクマ、おタツ、ナノ、そしてリュウヤの姿があった。しかも、リュウヤからは黄金の龍と同じような力を感じた。
 いや違う。リュウヤこそ、あの黄金の龍だったのだ。

「リュウヤ、これは一体……?」
「フフッ、分かんねえだろ?俺も分かんねえ。けど不思議と、この力には覚えがある」
「覚え?もしかして、クロフル監獄にあった壁画!」

 おタツが驚きながら呟いた瞬間、突然リュウヤは何かに乗っ取られたようにビクリと痙攣した。と思うと、リュウヤとは思えない堅苦しい口調で彼は話し始めた。

『我は龍達の祖、光龍ゴルディーノ。言うなれば、この少年の前世と言った所だ』
「ってーと、このドラゴンのおっちゃんはリューくんで、リューくんはおっちゃんってコト?あかん、訳分からんくなってきた。頭痛い」
「じゃあもしかして、リュウヤがどれだけ怪我しても無事だったのって……」

 まさかとタクマが口を押さえると、リュウヤは戻ってきてケラケラ笑いながら言った。

「今ようやっと分かった。全部このゴルディーノってのが俺を守ってくれてたワケだ。ホント、アニメみてーだよな」
「それをここで言うでありんすか、お前様」
『ググゥ、コンナ話、聞イテナイゾ!コレデモ喰ラエ!』

 Zは復活したリュウヤ達の乗るドラゴンに向けて黒いエネルギー弾を作り乱射した。しかしゴルディーノは、プロパイロットの乗る戦闘機のように旋回しながら攻撃を避け、降りるポイントを探る。
 だが、どれだけ旋回しても乗員が振り落とされることはなく、むしろ5人はジェットコースターに乗る子供のように楽しんでいた。

「すごい、すごいですリュウヤさん!こんな力があるなんて!」
「あれ?そういえばフランさん、身体は……」
「ああ、その子はゾンビだけど他とは違うから大丈夫だって。オッサンが言ってたぜ」

 前世とはいえ、もうここまで馴染んでいる。タクマはリュウヤのそんな社交性を羨ましがりながらも、ふふっと笑みを溢した。
 すると、リュウヤも何か言いたげにふうっと息を吐き、あのさと話を始めた。

「実は俺、ずっと我慢してたんだ。ギスギスしたの嫌いでさ、とにかく俺が空気読めない能天気野郎のフリして、和ませなきゃって、勝手に思ってたんだ」
「そうだったでありんすか、お前様……」
「けど、分かったんだ。我慢してたら俺が壊れるって。だから俺、もう我慢すんのやめる。それでもダチでいてくれるだろ、タクマ?皆?」

 その質問に、首を横に振る者はいなかった。むしろその逆、縦にだけ振った。

「今更何言うとるんや!リューくんの人が変わっても、リューくんはリューくん!タツ姐もタっくんもウチも、それにフラりんだって!皆変わらずお友達やで!」
「そっか。俺は俺、当たり前だったな。アッハッハ!」

 まだめげずに攻撃されているが、タクマ達はゴルディーノの上でそんな談笑をしていた。もう、Zに対する嫌悪感はどこかに吹き飛んでしまった。おまけに、リュウヤが自分で自分を縛っていた鎖も、気付けば完全に消え去っていた。

「後さ……」
「言いたいなら言ってくださいませ、お前様」
「俺、この戦いが終わったら、久々に父さんと母さんに電話かけるんだ」
「え?」
「「「あ」」」

 その時、旋回しまくっていたゴルディーノの尻にエネルギー弾が当たってしまった。しかも、その衝撃でゴルディーノは住宅街へと衝突し、一瞬で砕け散ってしまった。

「バカバカバカ!そう言うのは死亡フラグだって、お前様言ってたでありんしょうが!」
「やっべ~、ついつい言っちまった~」
『空中遊戯ハ楽シカッタデスカ?皆様?』
「はいはいそういうのは後回し。とにかくリュウヤ、後でデコピンな」
「ウチとフラりんの分も、な?」

 一気に圧をかけられるが、リュウヤはそれでもゲラゲラと笑っていた。

「いいぜ!どんな痛みも、今なら耐えられる気がするぜ!皆、コイツを貸してやらぁ!」

 そう言うと、リュウヤのガントレットが黄金色に輝き出し、7つの宝玉がタクマ達の武器に宿った。タクマには火、風。ナノには土、樹。おタツには雷、水と一応均等に分けられた。そして一つ分離した氷の宝玉は、フランが偶然手に取った鉄パイプに宿った。
 そして、リュウヤには特別にゴルディーノの力が宿った黄金の宝玉がガントレットに宿った。

「皆様、私一つお兄様に物申したいです!」
「ノーなんて言わないよ、何でも言いな」
『フラン、復活サセテヤッタタト言ウノニ、何故ソウマデシテ足掻クノダ!」

 Zの恩着せがましい態度に、タクマ達は少々呆れ返っていた。しかしフランはZの声による風圧などをものともせず、大きな声で叫ぶように言った。
 それは今まで伝えようと暖めてきたような温もりと、爆風のような熱い気持ちが混ざり合っていた。

「確かに私の為に頑張ってくれたのは嬉しいですわ!感謝してる!けど、国の皆や他の人を犠牲にしてまで手に入れた命なんて、私は欲しくなんてなかった!」
『グ……』
「よう言ったでフラりん!」
「さあ、無理せずウチらと共に参るでありんすよ」
「よっしゃ!テメェら、光速で行くぜ行くぜ行くぜ~!」
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