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第11章 バカと天才は死んでも治らない
第264話 兄と妹はアニメで見るほど仲良くない
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【エンドポリス シェルター】
「久しぶりに淹れたお紅茶ですので味の保証はできませんが、どうぞ」
「おお、気が利くじゃあねぇか!戴くぜ!」
アリーナはお盆からテーブルに移されるよりも早くティーカップを奪い取った。すると、メアに後頭部を無言で1発しばかれた。そして、出された紅茶を皿と一緒に手に取ると、メアは慣れた動きで紅茶の香りを愉しみ、優雅に一口飲んだ。
流石はメア、紅茶の作法が素晴らしい。けど、俺には全く分からないから、悪いけど自分で淹れた時みたいに飲ませてもらおう。
「んっ、これは美味でござるな」
「び、微妙、でしたか?」
「ああいえ、ウチら大和で使う言葉でありんして、えーっと……」
「すごく美味しい!って意味やで」
それを聞いて、少女はホッと胸を撫で下ろした。
確かに、彼女は久々と言っているが、茶葉の風味が生きていて、すごく美味しく感じる。まるで高級喫茶店で出される、目が飛び出るくらい高い紅茶のように、しっかりじっくりと抽出されているのが、タクマ子供舌でもよく分かった。
その傍、オニキスはカップ並々になるまで角砂糖を投入していた。
「それよりもトキ娘、Zについてだが、その前にお前の事を教えてもらおうか。さっきからその縫い跡が気になって仕方がねぇ」
「あっ。そう言えば、さっきの腕の所だけじゃなくて、他の所にも縫い傷みたいなのがありますね」
本当だ。さっきの首と腕しか見ていなかったから気付かなかったが、よく見れば指や足首など、関節を中心に縫い跡が残っている。
「申し遅れました。私はフランシスカ・アリエス。見て分かる通り、私はもう死んでおります」
「し、死んでる?じゃあつまりお嬢さんは、生ける屍という事でござるか?」
「はい。お兄様に復活させていただきましたの」
「お兄……様?」
タクマは繰り返して呟いた。
──お兄様。ゾンビ。復活。銀髪。
まさか、まさか……
「おいトキ娘!まさかテメェ」
「はい。実は私、Zの妹なのです」
──────Dr.Z、ゼロ・アリエス。
IQ400超えの天才科学者だが、誰にもその才能を認められず、性格が歪んでしまった。
各々の自己紹介を交えつつ、フランはまず、その事を話してくれた。
「まさか、彼奴に妹がおったとはのぅ」
「全く想像つかないでありんす。アレと、フランさん?うーん……」
天使と悪魔が出てくるように、Zとフランの顔が両サイドに現れる。しかし、狂気的な顔と白雪のような美しい顔は、どうしても似ても似つかなかった。
「それでタクマさん、皆さんはお兄様と、何かご関係がおありなのですか?」
「あるも何も、コイツらにとって、テメェのクソ兄貴は仇だ」
「ちょっとオニキスさん、何を……」
「いえ、いいんです。お兄様は、多くの人から恨まれて当然のことをしてきましたから」
フランは、カップの紅茶を覗き込みながら、泣きそうな声で呟いた。まるで、Zの重ねた罪を悲しむように。
するとその時、ブォン、と奇妙な音が響き、目の前に青みがかったZが現れた。
「お、お兄様!?」
「Dr.Z!やはり貴殿は此処に!」
『何だ皆サン、既に来ていらしたのですカ。コレから冷やかしにでもいこうと思っていましたガ、手間が省けまシタ』
「んだとテメェ!ナル、ちょっと下がってな!《ウェーブ・クライシス》!」
アリーナは、紅茶の水分を技の源にして、Zに斬りかかった。しかし、斬撃はZの体をすり抜け、奥の壁を破壊するだけに終わってしまった。
続けてメアもナイフの用意をするが、タクマはそれを止めた。
「タクマ、何をしておる!」
「この様子、奴はホログラムだ」
「ほろぐらむ?何ですかそれ?」
「とにかく、此処におるんならここでぶっ飛ばすべきやろ!」
『無駄デス。私の本体ハ、新世界ノ本拠地、エントポリス城なのですカラ』
Zはいつにも増してニヤニヤとしながら、無意味に攻撃しようとするメア達を馬鹿にする。見ての通り、ホログラムのほの字すら知らない彼女達にとっては、奴がそこにいるようにしか見えないだろう。
正直腹が立つ。けど、無駄に暴れて音を立てれば、それこそゾンビに居場所を教えるようなものになる。
「貴方、一体こんな“ういるす”なんか撒いて、何をするつもりでありんすか!」
『決まっているでショウ。私を認めなかった連中ヲ根絶やしにシ、私ダケノ理想郷ヲ築くのでス!』
「ハン、笑わせる!表に出ねぇでこんな青い奴で出てくる卑怯者が、理想郷とか言ってんじゃねぇ!」
「せや!こんな可愛い妹を置き去りにして、アンタそれでも家族なんか!」
『オット、言葉には気をつけてくだサイ。ココには、人質が居るのデスかラ』
罵詈雑言を投げられる中、Zは余裕の表情で大きな機械を持ってきた。なんとそこには、リュウヤが拘束されていた。
「っ!お前様!お前様、しっかり!」
「おタツ殿」
リュウヤの変わり果てた姿に目を丸くしたおタツは、ホログラムである事を知っている上でか、青白いリュウヤに飛び込もうとする。
しかし、吾郎に手を引かれ、吾郎は静かに首を横に振った。
「リュウヤ!お前、リュウヤに何をした!」
『1人で行動してイタみたいなのでネ、丁度私の僕にシテやろうかと思っていたのでスヨ』
「お兄様、なんでこんな事を……」
『フラン、分かるでショウ?死んだお前ヲ認めてくれる人間ハ、私以外に居ないのデス』
「だからって、世界を壊していい理由になりません!」
ノエルは絶望するフランの代わりに怒る。しかし……
『黙レ!』
突然、Zは怒鳴り、周囲に電撃を放った。その影響で、ホログラムにノイズが発生する。
そして、ぽかんと黙っていると、Zはリュウヤの首に赤い薬を打ち込んだ。すると、リュウヤは苦しそうに枯れた声を上げながら、機械から抜け出そうともがき苦しんだ。しかし、機械はリュウヤの四肢を飲み込んでおり、虚しく吼えることしかできなかった。
「お、お主!何を打ったのじゃ!」
『人間ヲ、不死身の怪物ニ作り替エル薬でス。彼、君達に隠していたようでスガ、腹に深い傷を負っていたみたいデスね。エンドポリスの位置でショウカ、じきに私ノ為に働ク奴隷となりマすヨ』
「貴様ァァァァァァ!!」
タクマは怒りを爆発させ、さっき放たれた電撃をコピーし、剣に宿した。そして、電力を最大まで高め、ホログラムを斬った。
すると、ホログラムはショートでバグを起こしたのか、今にも消えそうなほどにノイズが強くなった。
『コレは油断しタ。でハ皆様、我が妹ニ案内してもライ、断崖の城ニいらしなサイ』
「待ちやがれZ!テメェは必ず、俺がぶっ潰すからな!」
『えぇ、えぇ。待っておりまままままままま──』
ピチュン。甲高い音を最後に、リュウヤとZは消えてしまった。
そして、崩れた壁が現れると、一同はフランの方に顔を向けた。断崖の城、彼女がその場所を教えてくれると信じて。
「フラりん、大丈夫か?」
「嫌なら、大丈夫でありんすよ」
「……ううん、私は平気ですわ。皆さん、覚悟はよろしいですか?」
フランの顔つきは、さっきとは明らかに変わっていた。大人しそうだった顔は、今では覚悟を決めた、強い顔になっている。
彼女自身、実兄ゼロことDr.Zを止めたいのだろう。
「当たり前田のクラッカー。とっくに腹は括れてるぜ」
「あ、アタシだって出来てらぁ!奴には借りがあるからな!」
「うむ。拙者からも、よろしく頼むでござる」
タクマ達は、フランの問いに覚悟の意を添えて頷いた。そして最後に、皆はオニキスの方を向いた。
「……ああ分かったよ!やるよ!テメェらと協力すりゃあいいんだろ!」
「よっ、ツンデレ!最高じゃぞ!」
「うるせぇタヌキ娘。べ、別にこれはその、アレだ。オレのケジメを付ける為に、テメェらを利用するだけだ。か、勘違いしてんじゃねぇぞ!」
典型的なデレだな。誰もがそう思った。しかし、こうしてオニキスが少しづつ素直になっているのを見ていると、何だか微笑ましく思える。
「それでは皆さん、私についてきてください」
そう言い、一行はフランと共に行動をすることにした。
「久しぶりに淹れたお紅茶ですので味の保証はできませんが、どうぞ」
「おお、気が利くじゃあねぇか!戴くぜ!」
アリーナはお盆からテーブルに移されるよりも早くティーカップを奪い取った。すると、メアに後頭部を無言で1発しばかれた。そして、出された紅茶を皿と一緒に手に取ると、メアは慣れた動きで紅茶の香りを愉しみ、優雅に一口飲んだ。
流石はメア、紅茶の作法が素晴らしい。けど、俺には全く分からないから、悪いけど自分で淹れた時みたいに飲ませてもらおう。
「んっ、これは美味でござるな」
「び、微妙、でしたか?」
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「すごく美味しい!って意味やで」
それを聞いて、少女はホッと胸を撫で下ろした。
確かに、彼女は久々と言っているが、茶葉の風味が生きていて、すごく美味しく感じる。まるで高級喫茶店で出される、目が飛び出るくらい高い紅茶のように、しっかりじっくりと抽出されているのが、タクマ子供舌でもよく分かった。
その傍、オニキスはカップ並々になるまで角砂糖を投入していた。
「それよりもトキ娘、Zについてだが、その前にお前の事を教えてもらおうか。さっきからその縫い跡が気になって仕方がねぇ」
「あっ。そう言えば、さっきの腕の所だけじゃなくて、他の所にも縫い傷みたいなのがありますね」
本当だ。さっきの首と腕しか見ていなかったから気付かなかったが、よく見れば指や足首など、関節を中心に縫い跡が残っている。
「申し遅れました。私はフランシスカ・アリエス。見て分かる通り、私はもう死んでおります」
「し、死んでる?じゃあつまりお嬢さんは、生ける屍という事でござるか?」
「はい。お兄様に復活させていただきましたの」
「お兄……様?」
タクマは繰り返して呟いた。
──お兄様。ゾンビ。復活。銀髪。
まさか、まさか……
「おいトキ娘!まさかテメェ」
「はい。実は私、Zの妹なのです」
──────Dr.Z、ゼロ・アリエス。
IQ400超えの天才科学者だが、誰にもその才能を認められず、性格が歪んでしまった。
各々の自己紹介を交えつつ、フランはまず、その事を話してくれた。
「まさか、彼奴に妹がおったとはのぅ」
「全く想像つかないでありんす。アレと、フランさん?うーん……」
天使と悪魔が出てくるように、Zとフランの顔が両サイドに現れる。しかし、狂気的な顔と白雪のような美しい顔は、どうしても似ても似つかなかった。
「それでタクマさん、皆さんはお兄様と、何かご関係がおありなのですか?」
「あるも何も、コイツらにとって、テメェのクソ兄貴は仇だ」
「ちょっとオニキスさん、何を……」
「いえ、いいんです。お兄様は、多くの人から恨まれて当然のことをしてきましたから」
フランは、カップの紅茶を覗き込みながら、泣きそうな声で呟いた。まるで、Zの重ねた罪を悲しむように。
するとその時、ブォン、と奇妙な音が響き、目の前に青みがかったZが現れた。
「お、お兄様!?」
「Dr.Z!やはり貴殿は此処に!」
『何だ皆サン、既に来ていらしたのですカ。コレから冷やかしにでもいこうと思っていましたガ、手間が省けまシタ』
「んだとテメェ!ナル、ちょっと下がってな!《ウェーブ・クライシス》!」
アリーナは、紅茶の水分を技の源にして、Zに斬りかかった。しかし、斬撃はZの体をすり抜け、奥の壁を破壊するだけに終わってしまった。
続けてメアもナイフの用意をするが、タクマはそれを止めた。
「タクマ、何をしておる!」
「この様子、奴はホログラムだ」
「ほろぐらむ?何ですかそれ?」
「とにかく、此処におるんならここでぶっ飛ばすべきやろ!」
『無駄デス。私の本体ハ、新世界ノ本拠地、エントポリス城なのですカラ』
Zはいつにも増してニヤニヤとしながら、無意味に攻撃しようとするメア達を馬鹿にする。見ての通り、ホログラムのほの字すら知らない彼女達にとっては、奴がそこにいるようにしか見えないだろう。
正直腹が立つ。けど、無駄に暴れて音を立てれば、それこそゾンビに居場所を教えるようなものになる。
「貴方、一体こんな“ういるす”なんか撒いて、何をするつもりでありんすか!」
『決まっているでショウ。私を認めなかった連中ヲ根絶やしにシ、私ダケノ理想郷ヲ築くのでス!』
「ハン、笑わせる!表に出ねぇでこんな青い奴で出てくる卑怯者が、理想郷とか言ってんじゃねぇ!」
「せや!こんな可愛い妹を置き去りにして、アンタそれでも家族なんか!」
『オット、言葉には気をつけてくだサイ。ココには、人質が居るのデスかラ』
罵詈雑言を投げられる中、Zは余裕の表情で大きな機械を持ってきた。なんとそこには、リュウヤが拘束されていた。
「っ!お前様!お前様、しっかり!」
「おタツ殿」
リュウヤの変わり果てた姿に目を丸くしたおタツは、ホログラムである事を知っている上でか、青白いリュウヤに飛び込もうとする。
しかし、吾郎に手を引かれ、吾郎は静かに首を横に振った。
「リュウヤ!お前、リュウヤに何をした!」
『1人で行動してイタみたいなのでネ、丁度私の僕にシテやろうかと思っていたのでスヨ』
「お兄様、なんでこんな事を……」
『フラン、分かるでショウ?死んだお前ヲ認めてくれる人間ハ、私以外に居ないのデス』
「だからって、世界を壊していい理由になりません!」
ノエルは絶望するフランの代わりに怒る。しかし……
『黙レ!』
突然、Zは怒鳴り、周囲に電撃を放った。その影響で、ホログラムにノイズが発生する。
そして、ぽかんと黙っていると、Zはリュウヤの首に赤い薬を打ち込んだ。すると、リュウヤは苦しそうに枯れた声を上げながら、機械から抜け出そうともがき苦しんだ。しかし、機械はリュウヤの四肢を飲み込んでおり、虚しく吼えることしかできなかった。
「お、お主!何を打ったのじゃ!」
『人間ヲ、不死身の怪物ニ作り替エル薬でス。彼、君達に隠していたようでスガ、腹に深い傷を負っていたみたいデスね。エンドポリスの位置でショウカ、じきに私ノ為に働ク奴隷となりマすヨ』
「貴様ァァァァァァ!!」
タクマは怒りを爆発させ、さっき放たれた電撃をコピーし、剣に宿した。そして、電力を最大まで高め、ホログラムを斬った。
すると、ホログラムはショートでバグを起こしたのか、今にも消えそうなほどにノイズが強くなった。
『コレは油断しタ。でハ皆様、我が妹ニ案内してもライ、断崖の城ニいらしなサイ』
「待ちやがれZ!テメェは必ず、俺がぶっ潰すからな!」
『えぇ、えぇ。待っておりまままままままま──』
ピチュン。甲高い音を最後に、リュウヤとZは消えてしまった。
そして、崩れた壁が現れると、一同はフランの方に顔を向けた。断崖の城、彼女がその場所を教えてくれると信じて。
「フラりん、大丈夫か?」
「嫌なら、大丈夫でありんすよ」
「……ううん、私は平気ですわ。皆さん、覚悟はよろしいですか?」
フランの顔つきは、さっきとは明らかに変わっていた。大人しそうだった顔は、今では覚悟を決めた、強い顔になっている。
彼女自身、実兄ゼロことDr.Zを止めたいのだろう。
「当たり前田のクラッカー。とっくに腹は括れてるぜ」
「あ、アタシだって出来てらぁ!奴には借りがあるからな!」
「うむ。拙者からも、よろしく頼むでござる」
タクマ達は、フランの問いに覚悟の意を添えて頷いた。そして最後に、皆はオニキスの方を向いた。
「……ああ分かったよ!やるよ!テメェらと協力すりゃあいいんだろ!」
「よっ、ツンデレ!最高じゃぞ!」
「うるせぇタヌキ娘。べ、別にこれはその、アレだ。オレのケジメを付ける為に、テメェらを利用するだけだ。か、勘違いしてんじゃねぇぞ!」
典型的なデレだな。誰もがそう思った。しかし、こうしてオニキスが少しづつ素直になっているのを見ていると、何だか微笑ましく思える。
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