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第9章 怠惰魔城に巣食いし怪人
第241話 凶星襲来
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「もー、吾郎爺も黙ってないでなんか言ってよ!」
「まーまータクマさん。リュウヤさんの方も終わったみたいだし、迎えに行きましょう」
「うむうむ。これにて一件落着、ビナー殿と共にぱぁてぇ の続きをするでござる」
「ウチ、もっと食いたい!せやなぁ、今度はお魚食いたいなぁ!」
さっきまで罪源と戦っていたという緊張感はどこへやら、他3人は一瞬でスイッチが切り替わり、パーティーエンジョイモードになっていた。タクマはそんな3人のメンタルの強さを見習いたいと思いつつ、ノエルの肩を借りてリュウヤの迎えに向かった。
ドレスもスーツも、今じゃビリビリに破けて酷いものになっているが、変わらずノエルからは、女の子よりも女の子らしい、いい香りがする。
なんて思っていたその時、屋根の上からドタドタと忙しない音が聞こえてきた。見上げると、そこには煙になったアケイドを追うリュウヤ達の姿があった。
「待てい!どこ行くつもりだてゃんでい!」
「アタシから逃げれると思うなよ、イタチ野郎!」
ぼおっと眺めていると、リュウヤが煙に捕まり、そのまま一緒に空中散歩を始めた。と思うと、スロウドだった煙と合わさった瞬間に振り落とし、オレンジのオーブに姿を変え、近くにビナーを吐き出した。
「リュウヤお前、大丈夫か?」
「お前こそ、さっき悲鳴聞こえたけど?」
「うむうむ。妾の耳にも、ゴキッて音と一緒に聞こえてきたのじゃ」
「まさか、また無茶をしたんでありんすな?」
再開を喜ぶ余裕もなく、屋根から降りてきたメアは早速タクマをからかいに来た。おまけに、おタツからも謎の圧力をかけられる。彼女の言う通り、無茶をしたものだから何も言い返せない。
と、こうしちゃいられない。タクマはノエルに頼み、オーブの近くへと移動した。奴──αが奪いにやってくる気がしたから。
しかし、どこを見てもαは見当たらない。まだオニキスと交戦中なのだろうか。アイツの状況も気になる所だが……
「あ、おっさんじゃん!ほらおっさん、さっさと起きる!寝ぼけてんじゃあないよ!おい!」
オーブ獲得の余韻に浸っているのを横目に、アリーナはビナーの頬を鬼のようにペチペチと叩いた。よほど心配していたのか、心配料のお返しと言わんばかりに叩く。
すると、アリーナの強制叩き起こしが効き、ビナーが目を覚ました。
『あれ、俺様は一体……』
「おっちゃん、無事だったんやな!ホンマ心配したで!」
『おかげさまで。後一歩遅けりゃ、俺様も纏めてお陀仏になる所だったぜ』
「とにかく、無事に亡命もできそうだし、一件落着かな?とは言っても、その本人は寝ちゃってるけど」
タクマは言いながら、吾郎がおんぶしているキャシーを見る。勝った事を知って喜んでいるように、寝顔が笑っている。これからどうなるのか分からないけど、きっと彼女なら、いがみ合いのない、良い和解の道を切り開いて、カプリの国をもっとより良いものにする為に導いていく。顔を見るだけで、不思議とそんな気がしてくる。
流石に疲れているだろうし、彼女は起こさないでおこう。
とその時、突然地面が大きく揺れ出した。重力を感じるものではなく、純粋な揺れだけがある、大地震だ。まるでどこかの地下で大爆発が起こったように、グラグラと揺れる。
「な、なんじゃ!何が起きておる!」
『こんな時に運の悪い、悪魔が来たみたいだ』
突然の事態の中、αはしれっと顔を表して、オニキスを連れてきた。傷一つないように見えるが、相当に体力を消耗している。
その事に気付いたタクマは、オニキスの名を叫び、駆け寄ろうとした。しかし、ノエルに引き留められ、肩は貸せなかった。
『悪魔ってーと、まさか言い値の賞金首の……』
「けどおやっさん、オニキスはもう改心してるし、証言も全部嘘だったしで違うだろ?」
「お前様、あの奇天烈な体、アナザーでありんす!」
上空を見て、おタツは叫ぶ。それもその筈。なんと空から、高笑いをしながら降りてくる人影が現れた。しかもそれは、手配書に書かれた通りの、国滅ぼしのアナザーだった。
αと同じくらい、未知数の力を誇る、最凶の存在。そんなのが来るなんて、勝ち目なんかないじゃないか。
「あ……ああ……」
「ナノ、そうだナノは。おタツさん、ナノを頼める?」
そうだ。アナザーはナノの父親代わりだったレンブを殺し、ナルガ帝国を滅ぼした。言わば彼女のトラウマでもあり、仇だ。どれだけ恨んでいようと、本物の恐怖を目の前にしたら、動けなくなる。それが心理と言うものなのだろう。
『この世界も腐っているようだ。奴隷を売買しているだけでなく、自らの手で奴隷を生み出している。ナルガ帝国同様、正義の鉄槌を下す必要がある』
アナザーは正義の味方のような熱い口調で言う。それとは対照的に、αは感情の読み取れないいつもの声で、アナザーと対峙していた。
『鉄槌を下す、か。それは今、この時にやらなければならない事なのかい?』
『無論、1日でも早く世直しをする。正義とは、いつ如何なる時もそうでなくてはならない!』
『悪いが、今国滅ぼしをやられると、私が困る。後にしてもらおうか』
『邪魔をするか。なればお前も、私の鉄槌を受けてもらおう!』
その刹那、アナザーは目にも留まらぬ速さでαに襲いかかった。しかし、αにはその攻撃が見えていたのか、アナザーの脚を掴んで、勢いをそのままに城の壁へと放り投げた。
すると、間髪もいれずに壁からアナザーが飛び出し、今度はαを殴った。やはり最凶の悪魔、力が強すぎて、庭に大きなクレーターが生まれる。
「嘘、だろ……俺でさえ苦戦した相手を、こんな一瞬で……」
「こんなの、勝てっこないですよ……」
『なかなかの強さではないか。よし、君となら本気でやっても良さそうだ』
両者の強さに絶望している中、αはアナザーを殴り飛ばし、空中で追い討ちをかける。それからは、空中戦が始まり、魔法と魔法、武器と武器がぶつかり合う様子が空に広がった。
太陽のように膨れ上がった炎の気弾が現れては消え、ミラーボールのような光が現れては消え、まるで花火のように、鮮やかな色と音とが混じり合った。
最早、あの花火の中で、総統と悪魔が戦っているなんて言っても、信じるものはいないだろう。
そして、2分ほど空で戦った後、αが敗れ、地面に墜落していった。
「ωのオッサン!大丈夫か!」
「ダメだ、オッサンの体を見てみろ。あんなじゃ、もう……」
リュウヤは血まみれになったαの鎧を見て、彼ももう戦えないと悟る。
『まずいな、甘く見た』
『α、噂では強いと聞いていたが、この程度だったか。甲斐被っていたようで、私は悲しいよ!』
再び怒鳴るように言うと、アナザーは右手を天に掲げ、その上でパチリと指を鳴らした。
『さようなら、カプリブルグの皆々様。《終末の刻》』
「な、なんだこの揺れ……まさかまた!」
「いや違う。この熱気、上だ!」
オニキスの声のままに、一行は皆空を見上げる。するとそこには、カプリの国を滅ぼそうとする隕石が、真っ赤に燃え上がりながら接近していた。
アルマゲドンとまでは行かないが、危険である事に変わりはない。
『やむを得ない。君達、このゲートを通って逃げたまえ。安心しろ、タクマ君がいつも使っているアレと同じで、船へと繋がっている』
『けど鎧の旦那、アンタも逃げねぇと……』
『私の事は構うな。また今度、必ず会えるからね』
「──分かったぜ、αのオッサン。皆、行くぞ!」
タクマ達はαの言葉に甘え、彼が作り出したワープゲートから逃げた。彼の言う通り、その先はアリーナの船へと繋がっていた。
恐怖で体が震えて、動くこともままならなかったが、リュウヤの後押しのおかげで全員の避難が済んだ。
すると、段々とゲートが縮み、カプリブルグへの道が完全に閉ざされてしまった。
「まーまータクマさん。リュウヤさんの方も終わったみたいだし、迎えに行きましょう」
「うむうむ。これにて一件落着、ビナー殿と共にぱぁてぇ の続きをするでござる」
「ウチ、もっと食いたい!せやなぁ、今度はお魚食いたいなぁ!」
さっきまで罪源と戦っていたという緊張感はどこへやら、他3人は一瞬でスイッチが切り替わり、パーティーエンジョイモードになっていた。タクマはそんな3人のメンタルの強さを見習いたいと思いつつ、ノエルの肩を借りてリュウヤの迎えに向かった。
ドレスもスーツも、今じゃビリビリに破けて酷いものになっているが、変わらずノエルからは、女の子よりも女の子らしい、いい香りがする。
なんて思っていたその時、屋根の上からドタドタと忙しない音が聞こえてきた。見上げると、そこには煙になったアケイドを追うリュウヤ達の姿があった。
「待てい!どこ行くつもりだてゃんでい!」
「アタシから逃げれると思うなよ、イタチ野郎!」
ぼおっと眺めていると、リュウヤが煙に捕まり、そのまま一緒に空中散歩を始めた。と思うと、スロウドだった煙と合わさった瞬間に振り落とし、オレンジのオーブに姿を変え、近くにビナーを吐き出した。
「リュウヤお前、大丈夫か?」
「お前こそ、さっき悲鳴聞こえたけど?」
「うむうむ。妾の耳にも、ゴキッて音と一緒に聞こえてきたのじゃ」
「まさか、また無茶をしたんでありんすな?」
再開を喜ぶ余裕もなく、屋根から降りてきたメアは早速タクマをからかいに来た。おまけに、おタツからも謎の圧力をかけられる。彼女の言う通り、無茶をしたものだから何も言い返せない。
と、こうしちゃいられない。タクマはノエルに頼み、オーブの近くへと移動した。奴──αが奪いにやってくる気がしたから。
しかし、どこを見てもαは見当たらない。まだオニキスと交戦中なのだろうか。アイツの状況も気になる所だが……
「あ、おっさんじゃん!ほらおっさん、さっさと起きる!寝ぼけてんじゃあないよ!おい!」
オーブ獲得の余韻に浸っているのを横目に、アリーナはビナーの頬を鬼のようにペチペチと叩いた。よほど心配していたのか、心配料のお返しと言わんばかりに叩く。
すると、アリーナの強制叩き起こしが効き、ビナーが目を覚ました。
『あれ、俺様は一体……』
「おっちゃん、無事だったんやな!ホンマ心配したで!」
『おかげさまで。後一歩遅けりゃ、俺様も纏めてお陀仏になる所だったぜ』
「とにかく、無事に亡命もできそうだし、一件落着かな?とは言っても、その本人は寝ちゃってるけど」
タクマは言いながら、吾郎がおんぶしているキャシーを見る。勝った事を知って喜んでいるように、寝顔が笑っている。これからどうなるのか分からないけど、きっと彼女なら、いがみ合いのない、良い和解の道を切り開いて、カプリの国をもっとより良いものにする為に導いていく。顔を見るだけで、不思議とそんな気がしてくる。
流石に疲れているだろうし、彼女は起こさないでおこう。
とその時、突然地面が大きく揺れ出した。重力を感じるものではなく、純粋な揺れだけがある、大地震だ。まるでどこかの地下で大爆発が起こったように、グラグラと揺れる。
「な、なんじゃ!何が起きておる!」
『こんな時に運の悪い、悪魔が来たみたいだ』
突然の事態の中、αはしれっと顔を表して、オニキスを連れてきた。傷一つないように見えるが、相当に体力を消耗している。
その事に気付いたタクマは、オニキスの名を叫び、駆け寄ろうとした。しかし、ノエルに引き留められ、肩は貸せなかった。
『悪魔ってーと、まさか言い値の賞金首の……』
「けどおやっさん、オニキスはもう改心してるし、証言も全部嘘だったしで違うだろ?」
「お前様、あの奇天烈な体、アナザーでありんす!」
上空を見て、おタツは叫ぶ。それもその筈。なんと空から、高笑いをしながら降りてくる人影が現れた。しかもそれは、手配書に書かれた通りの、国滅ぼしのアナザーだった。
αと同じくらい、未知数の力を誇る、最凶の存在。そんなのが来るなんて、勝ち目なんかないじゃないか。
「あ……ああ……」
「ナノ、そうだナノは。おタツさん、ナノを頼める?」
そうだ。アナザーはナノの父親代わりだったレンブを殺し、ナルガ帝国を滅ぼした。言わば彼女のトラウマでもあり、仇だ。どれだけ恨んでいようと、本物の恐怖を目の前にしたら、動けなくなる。それが心理と言うものなのだろう。
『この世界も腐っているようだ。奴隷を売買しているだけでなく、自らの手で奴隷を生み出している。ナルガ帝国同様、正義の鉄槌を下す必要がある』
アナザーは正義の味方のような熱い口調で言う。それとは対照的に、αは感情の読み取れないいつもの声で、アナザーと対峙していた。
『鉄槌を下す、か。それは今、この時にやらなければならない事なのかい?』
『無論、1日でも早く世直しをする。正義とは、いつ如何なる時もそうでなくてはならない!』
『悪いが、今国滅ぼしをやられると、私が困る。後にしてもらおうか』
『邪魔をするか。なればお前も、私の鉄槌を受けてもらおう!』
その刹那、アナザーは目にも留まらぬ速さでαに襲いかかった。しかし、αにはその攻撃が見えていたのか、アナザーの脚を掴んで、勢いをそのままに城の壁へと放り投げた。
すると、間髪もいれずに壁からアナザーが飛び出し、今度はαを殴った。やはり最凶の悪魔、力が強すぎて、庭に大きなクレーターが生まれる。
「嘘、だろ……俺でさえ苦戦した相手を、こんな一瞬で……」
「こんなの、勝てっこないですよ……」
『なかなかの強さではないか。よし、君となら本気でやっても良さそうだ』
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太陽のように膨れ上がった炎の気弾が現れては消え、ミラーボールのような光が現れては消え、まるで花火のように、鮮やかな色と音とが混じり合った。
最早、あの花火の中で、総統と悪魔が戦っているなんて言っても、信じるものはいないだろう。
そして、2分ほど空で戦った後、αが敗れ、地面に墜落していった。
「ωのオッサン!大丈夫か!」
「ダメだ、オッサンの体を見てみろ。あんなじゃ、もう……」
リュウヤは血まみれになったαの鎧を見て、彼ももう戦えないと悟る。
『まずいな、甘く見た』
『α、噂では強いと聞いていたが、この程度だったか。甲斐被っていたようで、私は悲しいよ!』
再び怒鳴るように言うと、アナザーは右手を天に掲げ、その上でパチリと指を鳴らした。
『さようなら、カプリブルグの皆々様。《終末の刻》』
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「いや違う。この熱気、上だ!」
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『やむを得ない。君達、このゲートを通って逃げたまえ。安心しろ、タクマ君がいつも使っているアレと同じで、船へと繋がっている』
『けど鎧の旦那、アンタも逃げねぇと……』
『私の事は構うな。また今度、必ず会えるからね』
「──分かったぜ、αのオッサン。皆、行くぞ!」
タクマ達はαの言葉に甘え、彼が作り出したワープゲートから逃げた。彼の言う通り、その先はアリーナの船へと繋がっていた。
恐怖で体が震えて、動くこともままならなかったが、リュウヤの後押しのおかげで全員の避難が済んだ。
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