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第9章 怠惰魔城に巣食いし怪人

第220話 突撃!お城の舞踏会!

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 ──翌日 カプリ城
「招待状を」
「人数も確認いたしました。どうぞお楽しみください」

 秋風の吹く夜のこと。ついに舞踏会が始まる。
 何組の貴族が呼ばれたのかは分からないが、列はここから10メートル先にもまだまだ続いている。
 その頃には、人数不十分で追い返されたり、変装して潜入しようとするも追い出される人など、沢山の人が居た。そしてついに、タクマの順番が来た。

「招待状を」
「これでござるか?丁度8人分あるでござる」
「ふむ。それで君達はどう言う集まりなのだね?」
「えーっと、此奴は妾アルゴ姫の許嫁じゃ」
「はい。こう見えて私、男の娘アイドルでして。晴れて結婚する事になりました!」

 完全に嘘を吐いているが、そうでもしないと却って怪しまれるため、とにかく2人は仲良しアピールをして付き合っている事を見せた。
 すると続いて、視線はリュウヤの方に向けられた。

「俺達は秘境の国大和から遥々やって参った、ツルギサキの者でござりまする」
「ウチはツルギサキ・タツ。リューヤの妻でありんす」
「拙者は、2人をお守りする爺、吾郎でござる。そしてこの背中に居られるのが、拙者の養子のナノと申すでござる」
「よろしくやで」
「成程な。よろしい。で、残りの2人は?」

 最後に、タクマとオニキスの方に視線が向けられた。
 やはりここは二組のノリに乗るべきだと思い、タクマは咄嗟にオニキスの黒グローブで包まれた手を握り、キスをした。

「私メルサバの姉妹国である、ニッポンポン国の貴族、タクマティーニの息子、タクマでございます」
「お……私は、オニコ……です、わ」
(テメェ、後で本当にぶっ○すからな)

 2人は仲の良さそうな2人に見せかけながら、オニキスは鬼のような形相でタクマを睨んだ。
 それを横目に、タクマは兵士と目を合わせる。

「よし、それではお楽しみください」

 兵士は横に移動し、通路を開ける。何の疑いもなく、通る事に成功したのだ。
 流石にニッポンポンとかはふざけすぎたが、これでやっとキャシー姫の救出に向かえる。
 それから、入ってすぐ。受付の男から人数分の仮面を渡された。目の周りに付けるタイプで、他の人達も付けているのが見える。

「はえ~、本格的な舞踏会だなぁ。俺こんなん初めてだぜ」
「リューくんウキウキやな。にしても、アリリンはどないするん?」
「それなら心配ご無用。アリーナ殿は、この花火の打ち上げを合図に突撃すると申したでござる」

 言うと吾郎は、懐から打ち上げ花火の筒とよく似たマグナム銃の顔を出し、ナノに見せた。
 とにかく、これで8人全員を揃える事ができる。それに、仮に何かあった場合を考え、オニキスも役立ってくれる。
 友達ほどではないが、本気で戦った仲。適当な兵士なら一瞬で倒せるだろう。まさに最強の布陣だ。

「にしても獅子仮面の怪人のぅ。まさかこの中に紛れ込んでたり、なんてあるわけ……」

 メアがつぶやいたその時、奥の方にライオンを模したマスクを付けた男が城内を見物しているのが見えた。すると、アレだ!、と何故か確信したメアは走り出してしまった。

「メアさん、待ってください!」
「ん?あ、君達!」

 ノエルの声に反応し、例の獅子仮面は振り返る。そして、タクマ一行の顔を見て大きく手を振った。
 カプリブルグに知り合いなんていたか?タクマは少し考える。そして、行き着いた答えに気付き、まさかと口を押さえた。

「ハルトマンさん、来てたでありんすか?」
「あぁ。城から怪しい気配を感じたのでね、人数が足りなくて嘆いてた貴族の方と協力して入れてもらったんだ」
「て事は、やっぱライオン仮面の怪人探しとかですか?」

 タクマは訊く。すると、ハルトマンはゆっくりと頷いたが、詳しく話をしようとした時、運悪くチャイムが鳴らされた。
 客人が次々と宴会広間に向かっているため、そろそろ集合の時間らしい。

「ではハルトマン殿、ご武運を」
「おっちゃん、バイバイやでー!」
「おう。お互い目的果たしてまた会おう」

 こうして、タクマ一行は大きな扉の奥に入り、ハルトマンと別れたのであった。

 ──────────────
【姫の部屋】
 一方その頃、開会式の真っ只中、例のキャシー姫は部屋の中で舞踏会の準備をしていた。

「やっぱり嫌ですわ。こんなの、酷い」

 姫は王女に渡されたメモを見ながら、マニキュアを塗る。これから、ほぼ詐欺や奴隷的な物に近い酷い事をする。そう考えただけでも、嫌になる。
 姫をダシに貴族と友好関係を築きつつ、彼らの悪事をでっち上げ、金を奪い、尽きた瞬間身体を売らせて奴隷にする。それがサージ王女の狙いだ。これで幾度も人を騙し、罪もない人間を奴隷にさせてしまった。
 しかし、だからといって断れば、今度は自分の身が危うい。そのため、キャシー姫は唯一心の許せる相手──リオ──に手紙を送ったのだ。そして、その送った人物というのが……

「始まったぜ?お姫サマ?」
「そうみたいね、ビナーさん」

 男は部屋の窓から侵入し、獣のように縁の上に座り込む。顔は例の通りライオンの仮面を被っている。だが、ハルトマンの被っていたものとは違い、顔全体を覆うライオンのマスクだった。

「安心しな。手はしゃんと打ってある。この玉っころでな」

 言うと男は、オレンジ色のオーブを月明かりに照らし、部屋の一角を照らす。すると、その奥に封印されている罪源の影が映し出された。
 その影は、車輪のような姿をしていた。
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