195 / 295
第8章 復讐の死神
第194話 禁じられし名
しおりを挟む
鋭い視線でギルドから見送られた後、タクマは誰も見ていなさそうな路地の壁に手を当て、何度も息を吐いた。
心臓がバクバク動いて、視線の圧で息ができなくなりかけ、ストレスで死にそうになる。すると、偶然こちらの様子を見に来たデンジと再会した。しかも、まだ気分が優れない状態だったために心配された。
「おい大丈夫か?タクマ少年」
「は、はい。ちょっと、好きになれない状態だったもので上がっちゃいました」
「そうか、やっぱりか。手間をかけさせてすまなかった」
「やっぱり?じゃあまさか、そっちも?」
やっぱりと言う言葉を聞いて、タクマは訊き返す。するとデンジは、何を言うわけでもなくゆっくりと頷いた。謁見するまでもなく門前払いされたと付け加えて。
やはり“オニキス”が禁句である事は確かなようだ。しかし一体、何故オニキスが禁句なのだろうか。今となっては有名な賞金首、危険人物だというのに何故そうまでして語らせないのか。
タクマは考えた。するとその時、ギルドから出てきた青年がこちらに声をかけてきた。
「おーい、ちょっといいですか?」
「おや?知り合いかい?」
「いえ、知りません」
声をかけてきた男は、兵士のようなキリッとした服を着ていたが、戦いをするようには見えなかった。戦闘向きの服にしても、武器を持っていないのが決定的だった。別に筋肉がスゴいわけでもないため、デンジのような情報科の人間だろう。
すると男は、辺りを警戒した後に二人へ近付き、こちらへと案内を始めた。
「この先に私の家があります。ここでは危険ですから、そこで茶を飲みながらお話を」
「は、はぁ。ご馳走になります」
タクマとデンジは頭を下げ、男の後をついて行く。綺麗な民家のある側と別方向だ。
【男の家】
「ささ、どうぞどうぞ。ごゆっくり」
「どうも。ところで、あなたは一体?」
「申し遅れましたね。私はワトソン・ジャック、フォーデンの情報科幹部です。それで、台所を整理してるのが……」
「父のロックだ。よろしくな」
男、もといワトソンとロックは笑顔で自己紹介をした。勿論、タクマとデンジも自己紹介をして、握手を交わした。
「それで、話というのは?」
「オニキスの事です。彼が一体、どうしたって言うんです?」
「実は、奴がメルサバを襲撃して、次はフォーデンを襲うと予告したんです」
「そんな……そう、ですか」
正直に話すと、ワトソンは悲しそうに俯き、組んでいた両手を強く握りしめた。あまりにも気になり、タクマはついオニキスとの関係を訊いてしまった。
やはりワトソンはショックだったのか動かず、何も喋らない。と思っていると、台所に居たロックがトレイの紅茶を出しながら代わりに教えた。
「ワトとオニは親友で、同じくフォーデン騎士団の同期だったんだ」
「親友?」
「はい。私と彼は、父が友人同士だった事もあって、その繋がりから自然と仲の良い親友の関係になったんです」
ワトソンは声を震わせながら話す。
「誰よりも優しくて、動物にも好かれていて、喧嘩や争いを嫌っていて、昔から厚く信頼されていたんです」
「誰よりも優しい、ですか」
タクマはワトソンの言葉を聞いて、心の中で驚いた。あの最強を狩る為なら手段を選ばない狼犬のようなアイツが、優しくて信頼される人間には思えなかったからだ。
しかしワトソンの目に偽りは見えない。きっと何かあって、そこで変わったのだろう。タクマは続けて彼の話を聞いた。
「でもある日、親衛隊長のガラに両親を殺されたんです。それから彼は行方を晦まして……」
「殺された?どうして」
「反逆罪と言う名目でしたが、きっと違うでしょうね。ガラは気に入らない人間を迫害する卑しい奴でしたから、権力を使って己を正義に仕立て上げ、彼の信頼を地の底に落としたのでしょう」
そう言っていると、ロックは棚に飾られていた写真立てを取り、それを二人に見せた。
写真の中には、白く動きやすそうな服を纏い、肩を組む二人の男が写っていた。一人は変わらずワトソンと分かるが、もう一人は分からなかった。髪が短く、人の良さそうなイケメンに見える。
しかしよく見てみると、雰囲気がどことなくオニキスに似ていた。シャキッとした青眼に、安心を覚える顔。何から何までオニキスとは違うが、何故だか同じ人であると確信できる。
「家族を何より愛して大事にしていたから、殺されたショックで自殺したんじゃないかと思っていたけど、生きていたのか……」
「ところでその、ガラって人はどうなったんです?流石に、権力にしても嘘だったら──」
しかし、タクマが質問を最後まで言う前に、ロックが首を横に振った。
「オニの信頼が逆転し、彼は一躍英雄になってしまった。まあその後、妻と子供を残して死んだが、きっとオニは知らないだろうな」
「成程な。つまりは、信頼していた奴が実は反逆者で、裏切られたから二度と口にするな。と言うワケだな?」
「そう、なります」
ワトソンは呟き、悲しそうに写真を見つめる。彼がそんな事するはずない、と小さく言って。
そうしていると、ロックはデンジに手配書を持っているか訊き、手配書に目を通した。
「ロックさん、どうかしたんですか?」
「ああいや、ずっと前アコンダリアでコレと同じような奴を見た気がしてね」
「父さん、それは本当かい?」
「でも、酷く暴れていたし、アレはオニじゃなかったよ」
心臓がバクバク動いて、視線の圧で息ができなくなりかけ、ストレスで死にそうになる。すると、偶然こちらの様子を見に来たデンジと再会した。しかも、まだ気分が優れない状態だったために心配された。
「おい大丈夫か?タクマ少年」
「は、はい。ちょっと、好きになれない状態だったもので上がっちゃいました」
「そうか、やっぱりか。手間をかけさせてすまなかった」
「やっぱり?じゃあまさか、そっちも?」
やっぱりと言う言葉を聞いて、タクマは訊き返す。するとデンジは、何を言うわけでもなくゆっくりと頷いた。謁見するまでもなく門前払いされたと付け加えて。
やはり“オニキス”が禁句である事は確かなようだ。しかし一体、何故オニキスが禁句なのだろうか。今となっては有名な賞金首、危険人物だというのに何故そうまでして語らせないのか。
タクマは考えた。するとその時、ギルドから出てきた青年がこちらに声をかけてきた。
「おーい、ちょっといいですか?」
「おや?知り合いかい?」
「いえ、知りません」
声をかけてきた男は、兵士のようなキリッとした服を着ていたが、戦いをするようには見えなかった。戦闘向きの服にしても、武器を持っていないのが決定的だった。別に筋肉がスゴいわけでもないため、デンジのような情報科の人間だろう。
すると男は、辺りを警戒した後に二人へ近付き、こちらへと案内を始めた。
「この先に私の家があります。ここでは危険ですから、そこで茶を飲みながらお話を」
「は、はぁ。ご馳走になります」
タクマとデンジは頭を下げ、男の後をついて行く。綺麗な民家のある側と別方向だ。
【男の家】
「ささ、どうぞどうぞ。ごゆっくり」
「どうも。ところで、あなたは一体?」
「申し遅れましたね。私はワトソン・ジャック、フォーデンの情報科幹部です。それで、台所を整理してるのが……」
「父のロックだ。よろしくな」
男、もといワトソンとロックは笑顔で自己紹介をした。勿論、タクマとデンジも自己紹介をして、握手を交わした。
「それで、話というのは?」
「オニキスの事です。彼が一体、どうしたって言うんです?」
「実は、奴がメルサバを襲撃して、次はフォーデンを襲うと予告したんです」
「そんな……そう、ですか」
正直に話すと、ワトソンは悲しそうに俯き、組んでいた両手を強く握りしめた。あまりにも気になり、タクマはついオニキスとの関係を訊いてしまった。
やはりワトソンはショックだったのか動かず、何も喋らない。と思っていると、台所に居たロックがトレイの紅茶を出しながら代わりに教えた。
「ワトとオニは親友で、同じくフォーデン騎士団の同期だったんだ」
「親友?」
「はい。私と彼は、父が友人同士だった事もあって、その繋がりから自然と仲の良い親友の関係になったんです」
ワトソンは声を震わせながら話す。
「誰よりも優しくて、動物にも好かれていて、喧嘩や争いを嫌っていて、昔から厚く信頼されていたんです」
「誰よりも優しい、ですか」
タクマはワトソンの言葉を聞いて、心の中で驚いた。あの最強を狩る為なら手段を選ばない狼犬のようなアイツが、優しくて信頼される人間には思えなかったからだ。
しかしワトソンの目に偽りは見えない。きっと何かあって、そこで変わったのだろう。タクマは続けて彼の話を聞いた。
「でもある日、親衛隊長のガラに両親を殺されたんです。それから彼は行方を晦まして……」
「殺された?どうして」
「反逆罪と言う名目でしたが、きっと違うでしょうね。ガラは気に入らない人間を迫害する卑しい奴でしたから、権力を使って己を正義に仕立て上げ、彼の信頼を地の底に落としたのでしょう」
そう言っていると、ロックは棚に飾られていた写真立てを取り、それを二人に見せた。
写真の中には、白く動きやすそうな服を纏い、肩を組む二人の男が写っていた。一人は変わらずワトソンと分かるが、もう一人は分からなかった。髪が短く、人の良さそうなイケメンに見える。
しかしよく見てみると、雰囲気がどことなくオニキスに似ていた。シャキッとした青眼に、安心を覚える顔。何から何までオニキスとは違うが、何故だか同じ人であると確信できる。
「家族を何より愛して大事にしていたから、殺されたショックで自殺したんじゃないかと思っていたけど、生きていたのか……」
「ところでその、ガラって人はどうなったんです?流石に、権力にしても嘘だったら──」
しかし、タクマが質問を最後まで言う前に、ロックが首を横に振った。
「オニの信頼が逆転し、彼は一躍英雄になってしまった。まあその後、妻と子供を残して死んだが、きっとオニは知らないだろうな」
「成程な。つまりは、信頼していた奴が実は反逆者で、裏切られたから二度と口にするな。と言うワケだな?」
「そう、なります」
ワトソンは呟き、悲しそうに写真を見つめる。彼がそんな事するはずない、と小さく言って。
そうしていると、ロックはデンジに手配書を持っているか訊き、手配書に目を通した。
「ロックさん、どうかしたんですか?」
「ああいや、ずっと前アコンダリアでコレと同じような奴を見た気がしてね」
「父さん、それは本当かい?」
「でも、酷く暴れていたし、アレはオニじゃなかったよ」
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる