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第7章 アイム ア キャプテン!

第184話 影

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「吾郎爺!何があったんだ?」
「天照の動きを読まれたでござる……」
 
 吾郎は悔しそうに顔を下げ、静かに吐血した。そして、「不覚」と自分を咎めるように呟いた。
 すると、ずっと上空を飛んでいたプラドが降り立ち、吾郎を笑った。

『愚か、愚かだ、実に愚か!少しは気付きもしなかったのか?貴様らがもう既に我と戦っていたと言う事に!』
「何訳の分からん事を!ウチらがアンタと会ったんは今日が初めてやで!」
「いや、妾達は確かに、プラドと剣を交えた」

 メアは戦慄が走った表情で固まる。
 ──言われてみればそうだ。タクマの影、アイツらは自分の事をプラドの影、そう呼んでいた。つまり、奴は影から俺達の戦闘データを集めて、必殺技の対処法を編み出していたと言う訳だ。
 リュウヤもその事に気付きも、くぅっと悔しそうに目を瞑った。
 攻撃を見切られる。それつまり、全ての必殺技が効かないのと同じ。しかしリュウヤは俯いたまま「いや違う」と、心の中の弱い自分に反論した。

「爺ちゃんはよく言ってた。無いなら作ればいい、己が満足できるものを」
「リュー、くん?」
『話は終わりだ!さぁ、もっと楽しませてみるが良い!』

 話の最中、プラドは四人の間に闇に染まったナイフを放った。触ればとんでも無い事になりそうな、いかにも危険なオーラを放つナイフは、案の定地面を腐食させる。
 皮膚がボロボロ程度では済まされないだろう。そう思いつつ、リュウヤは近くにいたナノの腕を引いてその場から離れた。
 すると、リュウヤに目を付けたプラドがこちら側に向けて魔法を溜め始めた。

『死ね!《ギガ・ドゥンケル》!』
「させへんで!〈だるま落とし〉!」

 ナノはだるま落としの勢いで闇魔法を打ち返そうと試みる。しかし、相手の攻撃はギガシリーズ、ナノ一人の力では負けてしまう。
 とその時、リュウヤがハンマーに向かってストレートな飛び蹴りを加えた。するとハンマーは、リュウヤの助力により、強力な闇魔法を撃ち返した。
 そしてリュウヤは、近くに落ちていた岩の板を持って飛び上がり、闇魔法の上でサーフィンをするように乗った。

「へっへーん、いい波乗ってんねぇ!〈剣崎流・輪切り〉!」

 帰ってきた闇魔法に当たって一時的に怯んだ隙に、リュウヤはプラドの首に回転斬りを与えた。
 しかし、プラドは鋭い羽根で刀を防ぎ、リュウヤを斬りつけた。その切れ味は凄まじく、刀が斬られてしまう。

「リュウヤ!おい、しっかりするのじゃ!」
「許さぬ!行けっ、〈雲雀の一太刀〉!」
『言っただろう?貴様らの動きは既に見切ったと。つまり、貴様らは手も足も出ない。潔く諦め、我が復活の糧となるが良い』
「じぃじ!」

 リュウヤの仇を取ろうと動いた吾郎の攻撃は軽々と避けられ、プラドに踏みつけられる。そして、吾郎の頭上で海面の水が集まり、大きなギロチンへと変化した。
 更に、ギロチンはゆっくりと吾郎の首へと降りていく。

「このっ!吾郎爺を離すのじゃ!」
『ここから一歩も動くな。貴様らはどうすることもできずに、ここで老ぼれの死に行く様を見ていれば良いのだ!』
「リュウヤ殿、拙者の事は良い。早く拙者諸共斬るでござる!」
「そんな、でもそうしたらじぃじは……」

 ナノは叫ぼうとする。だが、吾郎の険しくも覚悟を決めていた顔を見て、黙り込んでしまう。
 でも、だからって諦めたくない。しかし、じゃあどうやって助ければいいのだろうか。分からない。
 メアも、ナノと同じ気持ちだった。しかしその時、リュウヤが笑い出した。

「ハハハ、一歩も動いちゃダメ、なんだよな?鳥ちゃん?」
「リュ、リューくん?」
『あぁ。動かないのであれば、貴様ら三人だけ、助けてやろう』
「んじゃあ、これからやる事は一歩も動かないから許してくれるよな?」

 言うとリュウヤは、折れた刃も一緒に、刀を鞘にしまった。プラドは彼の行動を降参と捉えたのか、大笑いしながらギロチンの速度を早めた。
 すると、リュウヤは黄色の宝玉をガントレットに嵌め、雷の力を纏った折れ刃を飛ばした。そして、折れ刃がギロチンに刺さった時、ギロチンの動きが変化し、プラドの右翼を切り落とした。

『ぐわぁぁ!な、何故だ!何が起きたのだ!』
「今だっ!〈見様見真似・輪切り〉!」
「な?約束通り、一歩も動かずに助けてやったろ?」

 悔しそうに睨みつけるプラドに対し、リュウヤは笑顔で言う。そしてリュウヤは続けて「さて問題、メアちゃんとナノナノはどこでしょう!」と唐突な問題を出した。
 言われてみれば、女子二人が消えている。まさかと思い振り返ると、二人は振り返るのを待っていたかのように動き出した。
 メアは左翼の羽根にナイフを投げ、ナノが釘のように上からナイフを叩きつけた。それにより、プラドの武器でもあったナイフの羽根が抜け落ちる。更に、メアのナイフが再生を止めるツボに刺さったのか、新たな羽根が生えてこない。

「妾達がオロオロしてばっかだと思ったら大間違いじゃ!」
『……フッ、まさかとは思っていたが、貴様らは我が他と同じようにこれだけだと思っているな?』
「これだけ?何だいアンタ、鳥ちゃん以外にも変身できるのか?」
『これはほんの“お遊び”に過ぎぬ。我こそは罪源の壱、どの罪源よりも高貴なる存在!』

 プラドか言うと、メアが刺したナイフが吸収されてしまった。そして、新たに羽根が生え変わる。しかもその羽根は、メアの投げた黒薔薇模様のナイフと同じものだった。
 同時に、片方の羽根が骨だけ蘇り、ずんぐりむっくりしていた体は人間のような姿に変化した。
 そして、変わった正体を見たリュウヤ達は、驚きのあまり武器を落としてしまった。

「そんな、こんな話があるでござるか……!?」
「嘘やろ、皇帝がプラド!?」

 そう、目の前に現れたのは、ゴルド帝国の皇帝だったのだ。
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