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第7章 アイム ア キャプテン!

第172話 悪魔ヒーロー、再び

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「アナザー!どうしてここに!」

 唐突に姿を表したアナザー。姿はヴァルガンナ跡で見た時と同じく、近未来のロボットのような黒い鎧を纏っており、身体のラインには青白い光が通っている。
 まさしく、ダークヒーローという名が似合うその姿は、カッコいいという男のロマンと共に、最強の敵という恐怖心が全身を伝った。

「こ、こやつが、アナザー?」
「お前!ウチらの事、忘れたとは言わせんぞ!」

 ナノは仇であるアナザーに怒鳴りつける。しかしアナザーは、知っているとも知らないとも言わず、黙ってその場で浮遊しているだけだった。
 その態度に腹を立てたナノは、ハンマーを構え、アナザーに殴りかかった。

「ナノ!ダメじゃ、戻ってこい!」

 しかし、ナノのハンマーは簡単に受け止められてしまう。そして、アナザーはそのままナノの首に手をかけ、持ち上げた。

「くっ……がぁっ……」
「やめろーッ!!」

 あの時は映像みたいなものだったから無理だった。でも、今ならやれる。今助けないと、殺される。
 タクマはアナザーの恐怖を振り切り、攻撃を仕掛けた。しかし、アナザーはナノと共にタクマの後ろへテレポートし、背中を蹴りつけた。

「ぐはぁっ!」
「タクマ!貴様よくも!」

 そこに続けて、メアはナイフを3発投げ、その間に短剣を構えて懐に入り込んだ。
 ナイフは指と指の間に挟まれてしまったが、何とか短剣は首に突きつけられた。

「さぁ、ナノを解放するのじゃ」
「メ……ア……うっ!」

 アナザーは、短剣を突き付けらてもなお、ナノを離さなかった。やはり言って分かってくれる相手ではないようだ。そう判断したメアは、タクマに目で合図を送った。
 そして、合図をキャッチしたタクマは、アナザーの背中に小さなロウがある事に気付いた。

「今だ!〈閃の剣〉!」

 ガキン! 金属のような音が鳴り響き、アナザーの腹部はタクマの剣により貫かれた。しかし、中には人が居ないのか、ロボットですらないからなのか、血液や火花は一滴も飛び散らなかった。
 だが、タクマの一撃が効いているのは確かで、アナザーは力を失くしてナノを解放し、腹部を押さえながら後退りをした。

「ナノナノ!おい、しっかりするのじゃ!」
「……ケホッ!メア、メア?タっ、くん?」
「ナノ!ダメじゃないか勝手に飛びかかっちゃ!敵討ちしたい気持ちも分かるけど、ナノが死んだら恩人さんは悲しむ!」
「ご、ごめん。ウチ……」
「やめておけ。ナノだって、それくらい分かっておる」

 メアはナノの背中をさすり、安心させた。その間も、アナザーは回路を斬られたロボットのように奇怪な動きをする。
 そして、壁に寄り掛かった所で、ドカン!と小規模の爆発を引き起こし、黒い煙となって消えてしまった。

【監獄一層 B】
 ドカン!リュウヤ達が奴を倒してひと段落していたその時、北側で大きな音がした。

「おろ?この音はもしや」
「もしかして、タクマさん達がやったんじゃないですか?」
「マジでノエちゃん!?うっし、なら行ってみっか!」

 リュウヤはタクマがいる事を知って張り切り、北側の廊下に出た。
 するとそこには、石板に書かれていたものの続きとなる壁画が隠されていた。それが、アナザーの爆発により現れたのである。更に、話の途中途中に、不自然な窪みが空いていた。

「この絵って、龍ですかね?」

 ノエルは壁に描かれた金と紫の龍を指差して言う。大昔の壁画にしては、描き方もダヴィンチやゴッホと並ぶ有名な画家が描いたように、独創的でかつ何を伝えたいのかが手に取るように分かる。

「ねぇお前様、この石板、ここにハマりそうでありんすよ」
「うわマジじゃん!よし、嵌めてみるか!」

 リュウヤは面白半分でおタツから石板を受け取り、文字の書かれている所に嵌めた。するとその時、石板は壊れる前のように壁と一体化し、文字がピカリと光った。
『しかしある日、邪竜の生み出した暗黒の使徒達が、光明の使徒に戦を申し込み、無惨なやり方で、光明の使徒を殺めた』
 その下には、真っ赤な血を流した金色の人型と、それに剣を突き立てる紫色の人型が居た。そして、その上で光竜と邪竜が飛んでいる。

「光竜と邪竜……確か、大和にもそのような言い伝えがあったような気がするでござる」
「本当ですか、吾郎爺?」
「うむ。拙者の方は獄の蛇と極の蛙として伝えられていたでござったが、使徒同士の争いなど、同じような内容でござる」
「嘘、ウチは生きてきた中でそんな話聞いたことなかったでありんす」
「やはりこの話、もう誰も知っているものは居ないのでござるな」

 吾郎は話に乗ってくれる人が居なかったのか、目に見えるくらいガックリと肩を落とす。
 するとその時、もう一方の石板も嵌められた。タクマ達も、石板を嵌めたのである。

 ✳︎

「な、何やこれ……ウチ怖い……」
「ナノナノ、嫌なら妾のスカートの中に入っておれ」
「昔々の大昔、光竜と邪竜が世界が出来上がったと同時に生まれた。そして、人類が生まれ始めた頃、竜は世界に心を与えた。光竜は人を思いやる心を、邪竜は邪なる罪の心を……?何だこりゃ」

 タクマはそこに浮かび上がった文字を読むが、全く意味が分からなかった。ただ分かるのは、そこに描かれている竜の姿が、不思議なことに初めて見た気がしない事だった。デジャヴというものなのか、不思議である。
 すると、ゴゴゴ!と大きな音を鳴らしながら、壁画が地面に吸い込まれていった。そして、下へと続く階段が現れた。

「ど、どないなった?」
「もう怖い絵は無くなったよ。出られる?」

 タクマは声をかけてみる。しかし、ナノはスカートの中に閉じこもったまま、出てこなかった。アナザーとの再会に、積もる所があったのだろう。
 タクマは察し、リュウヤも下層へと降りていった。

 ✳︎

「お?上の階と比べたら、思ったより綺麗だな」
「不思議でござる。上は何十年も使い古された痕跡があるのに、この階層だけはやけに……」

 そこに広がっていたのは、監獄跡とは思えないほど、綺麗な部屋だった。形からして、この空間も一層と同じく回の字構造だが、壁や床など、どこを取っても新しかった。まるで、作られてすぐの時代にタイムスリップしたような気分だ。
 
「けどこの感覚、何か気持ち悪いです」
「そうでありんすか?確かに不気味なまでに綺麗でありんすが……」
「はい。なんだろう、マボロシを見せられてるような、それに近い感じがするんです」
「マボロシねぇ。言われてみりゃ、何か夢なんか現実なんか区別できない変な感じがすんなぁ」

 リュウヤはクァ~っとあくびをしながら体を伸ばした。いつにも増して、今回は気楽にも程がある。
 そう思っていた時、奥から何者かが近付いてくる気配を感じた。
 ザッ、ザッ。草履のような音が聞こえて来る。

「な、何ですかこの音!」
「皆、離れるでござる!」
「おいおい吾郎君。そんなに警戒しなくても良いではないか」
「な、何者でありんす!」

 警戒したリュウヤ達は、武器を手に取った。すると、奥から人影が現れた。
 一人は着物姿で、顔には狐の面を被っている。

「そんな、師範!?」

 ✳︎

 その頃、タクマ達の方にも、謎の男が現れていた。恰幅の良い優しい顔の男。そして、その姿を見たナノは夢でも見ているような目で、彼を見つめた。

「嘘……レンブおじさん、どうして!」
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