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第6章 恋する乙女に花束を

第152話 正義の力と5つの技

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『フハハハハ!真っ直ぐにしか進めない羽虫共め!ワタクシがこうしてくれる!《メガ・フレア》!』
「そんなの効きません!《ウォーター》!」
「《フレア・アロー》!ブラストモード!」

 戦闘が始まったと同時に、ラスターはタクマ達に向けて炎を吐いた。その事を予測していたタクマ達は、瞬時に別れ、ラスターの周りを三角形になるように囲った。
 そして正面側から、リオとノエルは顔の面を破壊する為に攻撃した。しかし、メガ系炎魔法と通常の水魔法の威力は全く違い、ノエルが水を使って相殺しようとするも、全く効果はなかった。
 その間、リオは飛び上がり、上空から炎の破裂する矢を撃って槍脚を攻撃した。

「ハーハッハッハ!前側以外は剣があるとは言え無防備!これでも喰らえ!《サンダー・ラッシュ》!」
「やったったるで~!〈だるま落とし〉!」

 ナノとフラッシュは、頭部の数倍は大きな腹部を支える剣脚を狙い、雷の槍と巨大ハンマーで破壊を狙った。そして、剣脚の付け根部分に付けられていたピンク色の装飾が割れ、中から血のような何かが流れ、剣脚を黒く染め上げた。
 それと同じ頃、タクマとメアも、その大きな腹部へと乗り込むため、剣脚を攻撃していた。

「《メガ・フレアソード》!どりゃあ!」
「こっちも行くぞ!〈ナイフ・スコール〉!」

 メアは、降り注ぐスコールのようにナイフを降り注がせ、タクマは炎を纏った剣でピンク色の装飾品に〈閃の剣〉を放った。
 すると、そこから、フラッシュとナノが壊した側と同じように、赤黒く染まった。

『その程度でワタクシを倒せると思うたか!フハハハハ!』
「な、何をする気ですか!?」
「ノエルちゃん、ここは一旦退くわよ!」

 危険を察知したリオは、すぐにノエルと共にラスターの足元を駆け抜け、比較的壁として使えるフラッシュの所へ走った。
 するとその時、ラスターはその巨体からは想像もつかないような速度で動き出し、殺人トラックのようにタクマ達を襲った。そして、そこら辺に落ちている瓦礫を集め、赤黒い糸で固めたものを、タクマ達に投げつけた。

「危ない!〈フラッシュ・パン……」

 フラッシュは、姫であるリオを守る為、カッコつけて飛び上がり、赤黒い塊を破壊しようと拳を握りしめた。
 しかし、フラッシュは無様に蜘蛛の糸に引っかかり、瓦礫玉と一緒に民家に激突してしまった。

『さて、これで羽虫は一匹死んだ。次は誰を喰らうてやろう』
「おっさん!タっくん、助けに行くで!」
「駄目だ!あの糸、オニキスの……」
『会議は終わったか?ではコイツを喰らえ!』

 すると、ラスターは飛び上がり、尻から大量の蜘蛛の糸を吐き出し、そしてそれを使って瓦礫と一緒に固めた弾を発射した。
 タクマ達はそれを避けつつ、ラスターのロウを探しながら動きを観察した。
 しかし、6本足の動きは複雑で、全く動きが掴めない。

「早い……きゃぁっ!」
「リオ!くっ、はぅっ!」
「どっせー……嫌ぁぁ!!」
「皆!ぐっあぁっ!」
「タクマさん!皆さん!」

 だが、避けているばかりではどうすることもできず、タクマ達はノエルを除いて瓦礫弾の餌食となってしまった。
 そして、タクマがその弾に触れた時、脳裏にまたモノクロな記憶が再生された。
 顔が真っ黒に塗りつぶされているせいで誰なのかは分からないが、国家転覆を狙った男達が、顔を塗りつぶされた男に殴られている。そして、武器に触れた時、それらは塵のような微粒子となって消えてしまった。

『フハハハハ!死ぬが良い!』
「ハーハッハッハ!そうはさせないぞ!」
『な、何者だ!』

 誰もが絶望していたその時、どこからともなく声が聞こえてきた。
 すると、フラッシュを潰していた岩が動き出し、生みの親であるラスターの元へと帰っていった。

「ムキムキフラッシュ、ただいま復活!とう!」

 復活したフラッシュは、すぐさまラスターに突撃した。

「タクマさん!皆さん!助けに来ました!」
「ノエル……来ちゃ駄目じゃ……」
「いや、フラッシュさんが引きつけてる間、ノエルの漢の馬鹿力なら何とか……」
「何言ってるの、ノエルちゃんは女の子なのよ?」

 リオは心配した表情で言った。するとその時、ノエルは男らしく「フンっ!」と声を上げ、タクマ達を拘束していた蜘蛛の糸を引きちぎった。

「へ?ノエちん……?」
「嘘……どうして……?」
「説明は後でする!フラッシュが相手してるうちに、弱点を探すのじゃ!」

 そう言うとメアは、短剣を構えてラスターの腹部の裏へと走っていった。
 タクマも後を追う最中、フラッシュはラスターの鎌と格闘を開始していた。

『フハハハハ!馬鹿め、ワタクシの鋭い鎌に、人間ごときが叶うはずなかろう!』
「それはどうかな!食らえ!〈フラッシュ・パンチ〉!」

 フラッシュは、拳に光の力を込め、ジワジワと暗闇に染まる鎌に正義の一撃を打ち込んだ。そして、ラスターの鎌は、パキリと音を立てて割れた。

『なっ、ワタクシの腕が!?』
「ハーハッハッハ!まだまだ行くぞ!やーっ!」

 更に、フラッシュは槍脚をよじ登り、ラスターの頭部へと登ろうと試みた。
 勿論ラスターは、フラッシュを振り落とそうと脚を振って落とそうとする。
 その間、タクマ達はラスターの腹部裏に回り、そこの弱点を探した。

「うわ、何やこの模様!口みたいで気持ち悪い!」
「あの付け根、やっぱり弱点は裏にあったんや!」
「よーし、私達で壊してやりましょう!」
「《フレア・ボムナイフ》!行くわ」

 弱点だろう場所を発見したタクマ達は、槍脚の付け根にあるピンク色の玉らしきものを狙って攻撃を開始した。
 タクマは〈閃の剣〉で一つ、ノエルはナノの踏み台となり、ナノは〈だるま落とし〉で二つ破壊し、メアとリオは爆発する投げナイフを使い、片方の三つを破壊した。

『ぐっ!何だこれは!』
「ハーハッハッハ!私にばかり執着している間、皆がやってくれたのだ!ハーハッハッハ!」
「そう言う事じゃ!さぁ、往生するのじゃ!」
『……本当に、馬鹿な羽虫だ』

 ラスターが呟いたその時、ラスターの脚が全てもげ落ち、付け根から真っ白な腕が生えてきた。
 まさにショッキングな姿。その姿を見たタクマは、あまりの気持ち悪さとグロさに大声をあげて叫んでしまった。
 更に、もげ落ちた槍脚は赤黒い糸となり、地面を染め上げた。

「世話の焼ける!ナノ、頼むで!」
「はいはい!どろん!」

 気持ち悪さで動けなくなってしまった三人を担ぎ、メアはチーターに変身したナノに乗ってその場から離れた。
 するとラスターは、クククと笑い出し、魔力を溜め始めた。

『奥の手を喰らえ!《メガ・フレア》!』

 ラスターは、口から炎の弾を放った。しかしそれは、メア達の横をすり抜けて飛んでいく。
 外したな。そう油断した時、その炎は赤黒い糸に引火し、大爆発を引き起こした。
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