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第5章 白熱!アコンダリアトーナメント

第98話 観戦!喧嘩の基本はグーと蹴り

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 あれから第11回戦、第12回戦とバトルは続いていった。
 第11回戦、風使いのシオン対鎌使いのダンタ。この戦いは、シオンの風魔法による逆転勝利として終わった。次に12回戦、ボスティ対ブネ。ボスティによる卑怯な一撃で勝利。そして13回戦目はベレトの父親ベリト対占い師のタロトナ。ベリトの一撃で撃沈。
 その間、リュウヤと吾郎、おタツの3人は、クラブジラの身を取り出していた。
 
「うーん……」
「どうしたのじゃ?」
「いや、もしかしたらバルバッドみたいな魔王の回し者みたいなのが紛れ込んでるかもしれないからさ。」
「けど、見た感じ普通の人間が普通の戦いをしてるだけですね」

 3人は勝利した事に喜び、包帯を巻いた息子に手を振るベリトと、目を回して倒れているタロトナの事をじっくりと見て呟く。
 確かにこの3度の戦い、特に何ともなかった。正々堂々と武器を振り、魔法や特異体質も用いて戦っていた。変に強すぎる魔力も、恐ろしい気も感じない。
 けど引っかかる。あのチェイスが黒服と話していた事が。招かれざる選手にマンティコア。そうこうしているうちに、第14回戦が始まった。

『まずは西コーナー!この日に掛けて10数年!拳の想いは剣をも凌駕する!それこのまさしくこの女戦士!マール選手だぁぁぁ!』

 そう呼ばれて現れた青髪の女は「ほわちゃー!」と脚を極限まで天に上げ、気合十分だと言う事を観客にアピールする。彼女も普通の格闘家に見える。

『対するは東コーナー!同じく女戦士!娯楽の為に賞金を獲得する!そしてカジノで使いたい!欲望に従順な選手!ラウム選手だぁぁぁ!!』

 東コーナーから現れたのも、普通の格闘家。髪は赤く、魔力的な物も感じない。
 そして、両者は互いに顔を見合わせ、指の骨を鳴らした。今までは殆ど武器と魔法の腕自慢大会だったが、今回だけは魔法なしの面白そうな戦いになりそうだ。
 
「おらぁぁぁぁぁ!」
「ほぉぉぉぉぉ……」
「「わちゃぁぁぁ!!」」

 ゴングが力強く鳴ったと同時に、両者とも地面を蹴り、拳を打ち込んだ。しかし、その拳は相手の拳と衝突し、威力が相殺されてしまった。
 その相討ちに戸惑っている隙を突き、今度はラウムが回し蹴りを繰り出した。だが、それもマールには効かず、左手で塞がれてしまう。更に、その脚を掴み、ラウムを振り回し、近くの柱に投げ飛ばした。
 すると、ラウムはその柱を利用してマールの立つ場所へ戻り、勢いのある拳を放った。しかしマールはその拳を掴み、そのまま後ろに叩きつけた。ついに一本、攻撃が入ったのだ。その瞬間、辺りに「おぉぉぉ!!」と歓声が上がる。

「見たかタクマ!すげぇ攻防戦だぞ!こんな面白れぇ戦いがあるか!?えぇ!?」
「あぶ……スゴイッス……」

 エキサイトしすぎているブレイクは、わざとではないが、タクマの首を締めるようにして戦いを見る。
 その様子を見て、メアとノエル、メイジュの3人は呆れる。
 そうしている間も戦いは続き、今度はボクシングのような殴り合いになっていた。
 マールのジャブやアッパーを避け、隙を突いて反撃のパンチを入れる。そして、そのままパンチを入れさせた状態で、ラウムはマールの腕を掴み、そこに膝蹴りを入れた。
 辺りに「ゴキリ」と痛々しい音が響き渡り、それを聞いたノエルは気絶する。
 あれだけウェンディーヌをボコボコにしておいて、こう言う時の物は苦手とは。なかなか可愛い。

「やっぱり普通の戦いじゃな。変な感じが全然しない」
「このまま平和に終わって欲しいんだけど、オニキスがなぁ……」
「まさか彼も出場しているとは思わなかったよ。」

 ブレイクの拘束を解き、異変が無いか調べるタクマは言う。
 今もまだ、骨を折られてもなおマールは戦い続けている。だが、やはり骨を折られた事が響いたのか、マールは押されていた。しかし、片手が使えなくても脚が使える。その為、マールは脚で押し返した。

『これは凄い接戦だぁ!一体どっちに勝利の女神が微笑むのか!皆様、ご刮目を!』

 とその時、マールとラウムは拳と拳の押し合いを始めた。
 その様子を見て、またブレイクは大はしゃぎする。すると、両者は後ろに引き、強い一撃を与え合った。

「どっちだ?どっちが勝ったんだ!?」
「兄さん、いい加減大人しくして」

 メイジュは静かにブレイクを椅子に座らせる。
 そしてその時、マールは「うわぁぁぁぁぁ」と叫びながら倒れた。そして、『決まりました!第14回戦目の勝者はラウム選手です!』と実況が入った。
 しかし、何かおかしい。叫び声にしては、そこまで痛そうには聞こえなかった。もし骨折した部分を殴られたら、普通はあんな叫び方はしない。

「まさか……」
「うわぁっ!次妾の番ではないか!タクマ、ノエルを頼んだぞ!」
「えっ?うわおま、人を物みたいに投げ……むぶっ!」

 メアはお世話をしていた気絶中のノエルを投げるようにしてタクマに託し、急いで去っていく。やれやれ。



 それから10分後、準備が整いましたと実況が入った。ラスト二回、メア対フローラとオニキス対カイム。
 時刻は太陽が落ちているから、多分日本時間で推定7時くらいだろう。夜の闘技場を照らす電気魔法式照明が光る。

『それでは西コーナー!アルゴの国からご機嫌よう!ただの王女様と思ったら大間違い!短剣と投げナイフで敵を穿つ!そんな感じのお嬢様!アルゴ王の実の娘!メア選手だぁぁぁ!!』
「おっ。メアちゃんの出番かいな」
「間に合ったようで良かったでござるな」

 一仕事終えたリュウヤ達は、片手にカニ寿司を持って現れた。一体何貫分の寿司が出来るくらいの量が取れたのだろうか……
 そんな事を考えていると、ブレイクはこっそりとカニ寿司を食べた。
 
「うっ……」
「兄さん!勝手に食べちゃダメでしょ!」
「いやいいですって。コレ味見してもらう為に持ってきたから」
「うんまぁぁぁい!!一体何をどうしたらこんな美味いモン作れるんだよ!」

 そうこうしている間に、東コーナーから女王様とお呼び!と言ってそうな人の仮面を被った怪しい女性が入ってきた。

『続いて東コーナー!全てが謎に包まれた謎の怪傑!レイピアに剣、投げナイフに弓矢に槍!多分何でもできる女選手!フローラ選手だぁぁぁ!!』

 メアの前に現れた少女は、仮面の奥に見える綺麗な黄色い目でメアを見つめる。
 メアはその目に既視感を覚えるが、それが何だったのか思い出せないでいた。デジャヴだろう。

「あー、何処かでお会いしたかの?」
「知らない。けど、そうだとしても、オーブは絶対に渡さないわ」

 そう言うと、フローラは炎を鉄の鎌のような形に変え、それを構えた。
 オーブを狙うライバルのようだ。メアも負けまいと短剣を背中から抜き取り、構える。

「理由は聞かぬが、妾も負ける訳にはいかないのじゃ」
「そう。なら、容赦しないわ。メアちゃん」
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