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第4章 ヴェルハラへ行くもの達
第80話 最期の晩餐
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あれから数時間後、タクマ達は食堂デッキへ、師匠となったリュウヤの様子を見に向かった。
「リュウヤ殿、大丈夫でござろうか……」
「彼奴なら、意外としぶといし、大丈夫じゃろ」
「ですが、あんな大勢を一人で相手するの、結構大変でありんすよ?」
そんな話をしていると、厨房へ続く扉から、やつれてボロボロになったリュウヤが現れた。
その姿を見たタクマは、ウェイターの間を潜り抜け、リュウヤの肩を担ぐ。
「リュウヤ!何があった!」
「大丈夫……じゃ、なさそうですね」
遅れて他の四人も駆けつける。
タクマが声を掛けると、リュウヤは小さな声で何かを話す。
その微かに聞こえる声に、タクマは耳を近付けた。
「お……終わった……」
「この様子だと、たった数時間で全部伝授させたでありんすな」
やつれたリュウヤを見て、おタツはクスクスと笑う。
そして、出てきたリュウヤを追うように、シェフ達が山盛りのパスタを持って現れた。
「師匠!最後に味見をお願いします!」
「え……無理……」
「どうしてです!最高傑作ですよ!」
「いや……ね?たらふく味見したから……」
リュウヤは山盛りのパスタから逃げるように、タクマの後ろに身を隠す。
どうしても食べてもらいたいシェフ達は、タクマの周りを回ってリュウヤを追う。
「逃げないでくださいよ師匠!」
「頼むタクマ、代わりに味見して……」
そう言い残し、リュウヤは赤いカーペットへと横になる。その腹は既にパンパンで、動けそうにもなかった。
タクマは、リュウヤの頼みを聞き、近くの椅子に座る。
「俺で良ければ食べさせてくださいッ!」
「た、タクマ!?本気でやるのか!?」
フォークを持ってスタンバイするタクマに、メアは驚きながらも訊く。
「親友の頼みを断る奴があるか?」
「タクマさん……」
タクマの覚悟を決めた目を見て、ノエルも「わかりました」と、フォークを持って椅子に座った。
更に、吾郎もおタツも「リュウさんが倒れたなら」「タクマ殿への頼みは拙者の頼み」と、椅子に座る。
「き、君達は一体……」
「妾達はただの旅人、お主らの師匠の友じゃ!早うその山盛りのパヌストを食わせるのじゃッ!」
メアも他の四人の覚悟に心を打たれ、その四人と同じようにフォークを持って座った。
そんな五人を見たシェフ達は、リュウヤの代わりなら何でもいいかと言う了解で、山盛りのパスタをテーブルに置く。
「それでは、師匠直伝の和風パヌストでございます」
「よーし、行くぜ行くぜ行くぜッ!!」
タクマは素早く手を合わせ、トングでパスタを自分の皿に盛る。メア達もタクマの後を追うように、皿にパスタを盛る。
そしてそこから、勢いよく口に運んだ。
「ん?」「むっ」「のじゃっ」「ありっ」「これは……」
全員一口目を口に入れた瞬間、身体が硬直する。
それを見たシェフ達は「お口に合いませんでしたか……?」と不安そうに訊く。
「美味いッ!!」
タクマは飲み込んですぐ、そう叫ぶ。
福岡県産の明太子が散りばめられたソースが舌を刺激する。だがそれは、ただ人を苦しめるような地獄のような辛さではなく、「辛いけどもっと食べたい」と思わせるような刺激。それを例えるなら、本当は怖いけど、怖いもの見たさでホラー映画を見て、怖かったけど2も見たいと思うような感覚。
そしてその辛さを、抜群の味を持つしめじ、油っこくもクセになるベーコン、茹でたての麺が中和していく。
「こんなに辛いのにクセになるパヌストなんて、食べた事ありません!」
「これこそまさに、剣崎秘伝の大技でありんすな」
「本当ですか!やったぞ皆!」
タクマ達の絶賛の声を聞き、シェフ達は声を上げ、飛び跳ねながら喜ぶ。
そして、気絶してしまっていたリュウヤを持ち上げ、バンザーイ!バンザーイ!と掛け声を上げて胴上げをした。
「リュ、リュウヤ殿ォォォォォ!!」
「オ……オタス……ケ……」
「だが大変な事に、フォークが止まらない!」
メア達は助けたかったが、それは病みつきパスタが許さなかった。
リュウヤは大事だが、それでもまだ辛味を舌が欲しがっている。仕方なかった。
「すみませぬお前様、ウチは完全に……取り込まれているでありんす」
おタツは悪いと思いながらも、ずっとパスタを口に運ぶ。
おタツはもうダメだ。そう確信したリュウヤは、白目を剥きかけた目でタクマに助けを求めた。
だが、タクマも自らが伝授させたパスタの魔力に負けて、食べながら目を背ける。
「ナムア……ミダ……ブ……ツ」
リュウヤは自らとんでもない化け物料理を生み出した事を喜びながらも後悔し、シェフ達に身を委ねる。
バンザーイ!の掛け声と共に、身体が宙を舞う。その度に、味見をさせられた獄辛パスタが出てきそうになる。
そうしていると、窓際の方で食事をしていた貴族の者らしき人物が、窓の外に指を差した。
「あむあ?(なんだ?)」
タクマは盛りに盛ったパスタを思いっきり吸い込み、急いで窓の方へと向かった。
まさかイカが帰ってきた?確かにあの時やった事は正当防衛とはいえ酷すぎた。怒るのも無理はない。
「俺、ちょっと外行って見てくる!」
「あぁ待つのじゃ!むぐむぐ……妾も連れて行け!」
「むぐむぐ……私も!」
メアとノエルは、残りの和風パスタを吸い込み、飛び出すように展望デッキへ出て行ったタクマを追いに行った。
「ウチも嫌な予感がするでありんす。お前様、行くでありんすよ」
「あぁ、師匠!」
おタツも、気絶したリュウヤを胴上げしているシェフ達から連れ出し、外へ出て行く。
そして吾郎は、大皿に盛られた山盛りパスタを全て飲み込み、「おタツ殿ォ!お待ちくだされェ!」と、タクマ達の荷物と刀を持って出て行った。
【展望デッキ】
「兄さん、双眼鏡貸して」
「何に使うんだ?」
「いいから早く!」
メイジュは展望デッキから見える怪しいものを見るため、ブレイクから双眼鏡を借りる。
ブレイクが何で双眼鏡を?と疑問に思っていた時、タクマ達がやってきた。
「ブレイクさん!そっちの方は大丈夫ですか?」
タクマは食堂デッキから飛び出してすぐ、目に入ったブレイクに訊く。
「何なんださっきから、双眼鏡とか大丈夫とか……」
「メイジュ!ちぃとその双眼鏡を貸すのじゃ!」
「え?あ、ちょっと」
メアはメイジュが使っていた双眼鏡を奪い取り、それで貴族らしき男が何かを見つけた方向を見た。
その横で、ノエルは代わりに何故そう訊いたかを説明し、メアに「何か見つかりましたか?」と訊く。
「見たのじゃ……見たけどこれは……」
「な、何が見えたでありんす?」
後から追いかけてきたおタツは、何かを見つけて絶句するメアに訊ねた。
するとメアは、黙って双眼鏡をおタツに渡す。
「おタツ殿、何か見えたでござるか?」
「船でありんす」
船、近付いてくる何かの正体を知ったタクマ達は、驚いて損したと胸を撫で下ろす。
だが、それに続けておタツは「こっちに近付いてきてるでありんす!」と、危機を知らせるように叫んだ。
「こっちに近付いてきてるだって!?すまない」
嫌な予感がしたブレイクは、おタツから双眼鏡を受け取り、すぐに確認する。
そしてすぐにタクマ達の服を掴み「逃げるぞ!」と走り出した。
「な、何が見えたんです!」
「悪魔だ、悪魔が乗った船がこっちに突撃してくる!」
そんな話をしながら、ブレイクはリュウヤとタクマを連れて安全そうな場所を探した。
おタツや吾郎達も、ブレイクの後について行く。
だが、そうしているうちにも船は近付いているのか、だんだん波の音が大きくなる。
そして、その突撃してくると言う船は、もう肉眼でも確認できる場所へと来ていた。
「そんな……マジで船が……」
タクマはやってきた船、そしてその先端に悪魔、ヴァルガンナを破壊したアナザーがそこに居たのを見て冷や汗を流す。
「どうするのじゃ!このままでは妾達死んでしまうぞ!」
「無念……最期くらいは沢山食べておけば……」
「いや、そう言う問題ではないでありんす!」
おタツ達は、とにかく沈没しても大丈夫そうな場所を探しながら言い合う。
だが、ブレイクは途中で足を止めてしまった。
「ダメだ」
「な、何してるんです!このままじゃ……」
ノエルは諦めるように呟いたブレイクに近付こうとする。
それをメイジュは目を瞑りながら止めた。
「いくら足掻いても、あんなのに衝突してこの大海原の中生き残るのは、隕石が落ちるよりも確率が高い」
「だからって、そんなのあんまりです!」
ノエルは密かに死を待とうとするメイジュの肩を強請る。
だが、そんな事を話していた時、船が勢いよくアイズキューラ号に衝突した。
船が大きく揺れ、タクマや船の外に出ていた客達が吹き飛んでいく。
そしてそのまま、海へと落ちる。全身が冷え冷えの海水に浸り、一瞬真っ暗な海の中が見える。
だんだん意識も薄れていく。
(メア!ノエル!リュウヤ!吾郎爺!おタツさん!ブレイクさん!メイジュさん!)
タクマは仲間たちの名前を呼ぶ。
だが、今居る場所は海の中。当然声に出るはずがなかった。
それに、聞こえたとしても、既に他の7人は気絶しているため聞こえない。
(これで冒険の旅も終わりか……ちくしょう……ちくしょう……)
タクマは誰も見えない、何も聞こえない闇の空間の中、歯を食いしばって己の最期を悔しがる。
だんだんと意識がなくなっていく。
そして、今までの走馬灯が流れ始め、完全にタクマの意識は沈んでしまった。
「リュウヤ殿、大丈夫でござろうか……」
「彼奴なら、意外としぶといし、大丈夫じゃろ」
「ですが、あんな大勢を一人で相手するの、結構大変でありんすよ?」
そんな話をしていると、厨房へ続く扉から、やつれてボロボロになったリュウヤが現れた。
その姿を見たタクマは、ウェイターの間を潜り抜け、リュウヤの肩を担ぐ。
「リュウヤ!何があった!」
「大丈夫……じゃ、なさそうですね」
遅れて他の四人も駆けつける。
タクマが声を掛けると、リュウヤは小さな声で何かを話す。
その微かに聞こえる声に、タクマは耳を近付けた。
「お……終わった……」
「この様子だと、たった数時間で全部伝授させたでありんすな」
やつれたリュウヤを見て、おタツはクスクスと笑う。
そして、出てきたリュウヤを追うように、シェフ達が山盛りのパスタを持って現れた。
「師匠!最後に味見をお願いします!」
「え……無理……」
「どうしてです!最高傑作ですよ!」
「いや……ね?たらふく味見したから……」
リュウヤは山盛りのパスタから逃げるように、タクマの後ろに身を隠す。
どうしても食べてもらいたいシェフ達は、タクマの周りを回ってリュウヤを追う。
「逃げないでくださいよ師匠!」
「頼むタクマ、代わりに味見して……」
そう言い残し、リュウヤは赤いカーペットへと横になる。その腹は既にパンパンで、動けそうにもなかった。
タクマは、リュウヤの頼みを聞き、近くの椅子に座る。
「俺で良ければ食べさせてくださいッ!」
「た、タクマ!?本気でやるのか!?」
フォークを持ってスタンバイするタクマに、メアは驚きながらも訊く。
「親友の頼みを断る奴があるか?」
「タクマさん……」
タクマの覚悟を決めた目を見て、ノエルも「わかりました」と、フォークを持って椅子に座った。
更に、吾郎もおタツも「リュウさんが倒れたなら」「タクマ殿への頼みは拙者の頼み」と、椅子に座る。
「き、君達は一体……」
「妾達はただの旅人、お主らの師匠の友じゃ!早うその山盛りのパヌストを食わせるのじゃッ!」
メアも他の四人の覚悟に心を打たれ、その四人と同じようにフォークを持って座った。
そんな五人を見たシェフ達は、リュウヤの代わりなら何でもいいかと言う了解で、山盛りのパスタをテーブルに置く。
「それでは、師匠直伝の和風パヌストでございます」
「よーし、行くぜ行くぜ行くぜッ!!」
タクマは素早く手を合わせ、トングでパスタを自分の皿に盛る。メア達もタクマの後を追うように、皿にパスタを盛る。
そしてそこから、勢いよく口に運んだ。
「ん?」「むっ」「のじゃっ」「ありっ」「これは……」
全員一口目を口に入れた瞬間、身体が硬直する。
それを見たシェフ達は「お口に合いませんでしたか……?」と不安そうに訊く。
「美味いッ!!」
タクマは飲み込んですぐ、そう叫ぶ。
福岡県産の明太子が散りばめられたソースが舌を刺激する。だがそれは、ただ人を苦しめるような地獄のような辛さではなく、「辛いけどもっと食べたい」と思わせるような刺激。それを例えるなら、本当は怖いけど、怖いもの見たさでホラー映画を見て、怖かったけど2も見たいと思うような感覚。
そしてその辛さを、抜群の味を持つしめじ、油っこくもクセになるベーコン、茹でたての麺が中和していく。
「こんなに辛いのにクセになるパヌストなんて、食べた事ありません!」
「これこそまさに、剣崎秘伝の大技でありんすな」
「本当ですか!やったぞ皆!」
タクマ達の絶賛の声を聞き、シェフ達は声を上げ、飛び跳ねながら喜ぶ。
そして、気絶してしまっていたリュウヤを持ち上げ、バンザーイ!バンザーイ!と掛け声を上げて胴上げをした。
「リュ、リュウヤ殿ォォォォォ!!」
「オ……オタス……ケ……」
「だが大変な事に、フォークが止まらない!」
メア達は助けたかったが、それは病みつきパスタが許さなかった。
リュウヤは大事だが、それでもまだ辛味を舌が欲しがっている。仕方なかった。
「すみませぬお前様、ウチは完全に……取り込まれているでありんす」
おタツは悪いと思いながらも、ずっとパスタを口に運ぶ。
おタツはもうダメだ。そう確信したリュウヤは、白目を剥きかけた目でタクマに助けを求めた。
だが、タクマも自らが伝授させたパスタの魔力に負けて、食べながら目を背ける。
「ナムア……ミダ……ブ……ツ」
リュウヤは自らとんでもない化け物料理を生み出した事を喜びながらも後悔し、シェフ達に身を委ねる。
バンザーイ!の掛け声と共に、身体が宙を舞う。その度に、味見をさせられた獄辛パスタが出てきそうになる。
そうしていると、窓際の方で食事をしていた貴族の者らしき人物が、窓の外に指を差した。
「あむあ?(なんだ?)」
タクマは盛りに盛ったパスタを思いっきり吸い込み、急いで窓の方へと向かった。
まさかイカが帰ってきた?確かにあの時やった事は正当防衛とはいえ酷すぎた。怒るのも無理はない。
「俺、ちょっと外行って見てくる!」
「あぁ待つのじゃ!むぐむぐ……妾も連れて行け!」
「むぐむぐ……私も!」
メアとノエルは、残りの和風パスタを吸い込み、飛び出すように展望デッキへ出て行ったタクマを追いに行った。
「ウチも嫌な予感がするでありんす。お前様、行くでありんすよ」
「あぁ、師匠!」
おタツも、気絶したリュウヤを胴上げしているシェフ達から連れ出し、外へ出て行く。
そして吾郎は、大皿に盛られた山盛りパスタを全て飲み込み、「おタツ殿ォ!お待ちくだされェ!」と、タクマ達の荷物と刀を持って出て行った。
【展望デッキ】
「兄さん、双眼鏡貸して」
「何に使うんだ?」
「いいから早く!」
メイジュは展望デッキから見える怪しいものを見るため、ブレイクから双眼鏡を借りる。
ブレイクが何で双眼鏡を?と疑問に思っていた時、タクマ達がやってきた。
「ブレイクさん!そっちの方は大丈夫ですか?」
タクマは食堂デッキから飛び出してすぐ、目に入ったブレイクに訊く。
「何なんださっきから、双眼鏡とか大丈夫とか……」
「メイジュ!ちぃとその双眼鏡を貸すのじゃ!」
「え?あ、ちょっと」
メアはメイジュが使っていた双眼鏡を奪い取り、それで貴族らしき男が何かを見つけた方向を見た。
その横で、ノエルは代わりに何故そう訊いたかを説明し、メアに「何か見つかりましたか?」と訊く。
「見たのじゃ……見たけどこれは……」
「な、何が見えたでありんす?」
後から追いかけてきたおタツは、何かを見つけて絶句するメアに訊ねた。
するとメアは、黙って双眼鏡をおタツに渡す。
「おタツ殿、何か見えたでござるか?」
「船でありんす」
船、近付いてくる何かの正体を知ったタクマ達は、驚いて損したと胸を撫で下ろす。
だが、それに続けておタツは「こっちに近付いてきてるでありんす!」と、危機を知らせるように叫んだ。
「こっちに近付いてきてるだって!?すまない」
嫌な予感がしたブレイクは、おタツから双眼鏡を受け取り、すぐに確認する。
そしてすぐにタクマ達の服を掴み「逃げるぞ!」と走り出した。
「な、何が見えたんです!」
「悪魔だ、悪魔が乗った船がこっちに突撃してくる!」
そんな話をしながら、ブレイクはリュウヤとタクマを連れて安全そうな場所を探した。
おタツや吾郎達も、ブレイクの後について行く。
だが、そうしているうちにも船は近付いているのか、だんだん波の音が大きくなる。
そして、その突撃してくると言う船は、もう肉眼でも確認できる場所へと来ていた。
「そんな……マジで船が……」
タクマはやってきた船、そしてその先端に悪魔、ヴァルガンナを破壊したアナザーがそこに居たのを見て冷や汗を流す。
「どうするのじゃ!このままでは妾達死んでしまうぞ!」
「無念……最期くらいは沢山食べておけば……」
「いや、そう言う問題ではないでありんす!」
おタツ達は、とにかく沈没しても大丈夫そうな場所を探しながら言い合う。
だが、ブレイクは途中で足を止めてしまった。
「ダメだ」
「な、何してるんです!このままじゃ……」
ノエルは諦めるように呟いたブレイクに近付こうとする。
それをメイジュは目を瞑りながら止めた。
「いくら足掻いても、あんなのに衝突してこの大海原の中生き残るのは、隕石が落ちるよりも確率が高い」
「だからって、そんなのあんまりです!」
ノエルは密かに死を待とうとするメイジュの肩を強請る。
だが、そんな事を話していた時、船が勢いよくアイズキューラ号に衝突した。
船が大きく揺れ、タクマや船の外に出ていた客達が吹き飛んでいく。
そしてそのまま、海へと落ちる。全身が冷え冷えの海水に浸り、一瞬真っ暗な海の中が見える。
だんだん意識も薄れていく。
(メア!ノエル!リュウヤ!吾郎爺!おタツさん!ブレイクさん!メイジュさん!)
タクマは仲間たちの名前を呼ぶ。
だが、今居る場所は海の中。当然声に出るはずがなかった。
それに、聞こえたとしても、既に他の7人は気絶しているため聞こえない。
(これで冒険の旅も終わりか……ちくしょう……ちくしょう……)
タクマは誰も見えない、何も聞こえない闇の空間の中、歯を食いしばって己の最期を悔しがる。
だんだんと意識がなくなっていく。
そして、今までの走馬灯が流れ始め、完全にタクマの意識は沈んでしまった。
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