上 下
56 / 295
第3章 食の国、大和の魔王

第55話 衝撃、黒幕襲来

しおりを挟む
「黒銀!これは一体何のつもりだ!」

ノブナガを暗殺しようとした謎の男、もとい黒銀を悲しい表情で見つめながら、ノブナガは問う。
すると黒銀は目を瞑り、深々と顔を下げた。

『申し訳ございませんノブナガ殿、大変言いにくいのですが、時間がやってまいりました』

時間?一体何の事を言っているのだろうか。
しかしなんとなく、これからとんでもない事が起きると言うのだけは感じ取れる。
けど武器はリュウヤの所に置いてきた、どうする?

タクマがそう考えていると、黒銀はまた何処からかまた投げナイフを出現させ、それを立ち尽くすノブナガに向けて投げた。

「ノブナガ様っ!!」

タクマがそれに気付いた時には遅く、黒銀の投げたナイフはもう既に、ノブナガの心臓へと目掛けて飛んでいく。
しかし、それでもまだ諦めきれなかったのか、タクマの体が勝手に動いた。
サッ!と静かに音がし、その後すぐ手のひらに謎の激痛が走る。
骨が折れた訳では無いようだが、ジワジワと体を蝕むような痛みが走る。
何が起きたのか見てみると、なんとタクマの右手に投げナイフが刺さっており、しかも貫通していたのだ。
守りきれないと察していたからか、せめてやれる事を無意識にやっていたようだ。

「いっ……」

手からぽたりぽたりと垂れ落ちる血の音が、重く感じる。だけど考えてみれば、まだ泣き叫ぶまでの痛みとはいかない。まだ我慢できる。
だが、それでもだんだん指の感覚が消えていく。
ちゃんと動いてはいるけど、それでも何故か動かしている感覚がない。まるで自分ではない誰かの手を操っているみたいで気持ちが悪い。

「タクマ!大丈夫か!?」
「何とか……」

タクマは痛みに耐えながら答え、手のひらに刺さったナイフを抜き取る。
すると、黒銀はタクマがノブナガを守った行為を見て「愚かだな」と呟いた。

『いずれ死にゆく者の為に、自らの身体を犠牲にするとは。人間とは実に愚かだな』
「何を黒銀、お主だって人間ではないか」

ノブナガは怒りで我を忘れないように、わざと黒銀の揚げ足を取る。
だがそれを聞いた瞬間、いきなり黒銀が倒れ、その後ろから骸骨兵士のような魔物が姿を現した。

『ならば、この姿で言えば良いのかな?』

黒をベースとした甲冑に、髭の代わりにタコの触手のようなものが付いた水竜の不気味な仮面、所々土で汚れた白骨。
骸骨兵士と同じ部類であるのは間違いないが、どこか今まで戦ってきた奴とは違う。
まさにRPGとかのボス、そんな感じの威圧感を感じる。
するとそこに、加勢しに駆けつけてくれたかのように、リュウヤ、ノエル、吾郎の3人が襖をバン!と大きな音が鳴るくらいの強さで開けて入ってきた。

「何ですか、これは一体……」
「やっぱり嫌な予感がすると思ったら!」
「タクマ殿、ノブナガ殿!」

リュウヤは、予め用意していた薬とタクマ達の武器を持ってタクマとノブナガの近くに行き、出来る限りの応急処置を施す。
ノエルは目の前で倒れている黒銀を抱え、そして吾郎は、その5人を守るように抜刀の構えでエンヴォスを睨みつける。

『それにしてもその男の嫉妬心は素晴らしいな、お陰で我も実体を取り戻せた』
「嫉妬心だと……?」

ノブナガは胸に刺さったままのナイフを素手で引っこ抜き、リュウヤの持っていた薬を患部に塗りながら言う。

『あぁ、彼は先代のコネだけで、君が国の長としてデカイ顔をしていたのが気に食わなかったのだよ』
『だからこそ彼は、我らがマスターであるα様と契約を交わしたのだ。代わりに魂を奪われるとも知らずにな』

そう言うと骸骨兵士は、ノエルの顔面を力強く殴った。

「がっ!!」

まるで風に飛ばされた綿のように、ノエルは飛ばされ、豪華な襖に衝突する。
そして、骸骨兵士は一緒に飛ばされた黒銀の所へ瞬間移動し、自らの肋骨を刀に変形させ、それを刺した。

「あぁぁぁぁぁ!!」
「ノブナガ様……申し訳ございま……」

やっと目を覚ましたと思いきや、黒銀の体は黒い煙のような物となり、骸骨兵士の体内に入っていく。

「黒銀さん!」

リュウヤは消えた彼の名を叫ぶ。
だが、煙が消えたそこから現れたのは、ただの汚れ一つなく、一本の黒い刀が突き刺さった畳だけだった。
そう、完全に喰われてしまったのだ。

『これで我は完全体として蘇れる、フフフ、アーハッハッハッハ!!』

骸骨兵士は高らかに笑い声を上げると、まるで気でも狂ってしまったかのように、窓側の壁へと突撃し、飛び降りてしまった。
ドゴーン!と爆弾が爆発したような轟音が鳴り響く。

「あ、あやつは何処へ……」

咄嗟に身を伏せていたノブナガは、辺りを警戒しながら立ち上がる。
そして、飛び降りて行った所を見に行って見るも、やはりそこには何も居なかった。
それにここは最上階。もし飛び降りよう物なら、一番下では見るも無残な生物だったモノが散乱している。
しかしそんな事を思った矢先、目の前に巨人の手の骨と思わしき物が現れ、この部屋がある辺りをガッチリと掴んできた。

「タクマ!これを受け取ってくれ!!」
「リュウヤ!」

リュウヤはこれから何が起こるかを予測し、タクマに持ってきていた剣を投げ渡す。
するとその直後、屋根を破壊され、まるでノエル、ノブナガ、リュウヤ、吾郎の四人とタクマを引き離すように瓦礫が落ちてきた。

「リュウヤ!リュウヤ!!」

タクマはリュウヤ達の居る方へと、壁を叩きながら声をかける。
するとリュウヤ達の方から、「こっちは大丈夫でござるよ!」と吾郎が返事をした。
だがそうこうしているうち、なんと目の前に、甲冑を脱ぎ捨て、この城の最上階まで巨大化した、さっきの骸骨兵士が現れた。

『我が名は嫉妬のエンヴォス、この世全ての妬みを司りし罪源の仮面であり、記憶の魔術師ぞ!』
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...