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第2章 不思議な僧侶と世紀末的砂けむり事件

第32話 リベンジマッチと狂気的なショー

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【キョーハイ砂漠】
 ズッ、ズッ。大きな足音が砂漠中に響く。どんどん近づいてくる。あの時のゴーレム、奴が再びウォルへの侵攻を試みようとしているのだ。

「やはり、研究に研究を重ねた最高傑作が暴れる様を見ながら嗜む酒。まさに格別、ですネ」

 近くの高台でそれを傍観するZは、αから貰ったワインを嗜みながら、ゴーレムが暴れる様を見て笑う。

「初めて会った時からそうだろうとは思ってはいたが、そこまで趣味が悪い奴だとはな」
「来てくれると信じておりましたヨ、オニキス君」

 招待されたオニキスはZの隣に立ち、そこに置いてあったワインを一気に飲んで座った。
 そして「ショーのパンフレットはまだ受け取ってないが、一体どんな内容なんだ?」と訊いた。

「クックック、このレクイエムの祭典にそんなモノはありません。観客が思い思いに歌うのですからネ」

 Zは虚な目を大きくしながらオニキスの問いに答え、グラスにワインを注いだ。
 オニキスはそれをすぐに飲み干し、グラスを置く。

「さてと、そろそろ本番の始まりですヨ」
「自分で“最高のショー”って豪語したからには、楽しませてくれよ?」

 オニキスはそう言い、主役であるゴーレムを見た。

 ✳︎

「アイツが、お前らが倒したがってた奴か」
「思った以上に大きいね、兄さん」

 メイジュは想像以上のデカさに驚きながら、ブレイクに言う。
 するとブレイクは、メイジュに「でもその分、戦い甲斐があるってモンよ!」と言ってゴーレムの足元へ突っ走って行く。

「妾達も行くぞ、あの時より強くなった事を知らしめてやるのじゃ!」
「えぇ、修行の成果を見せてやりましょう!」

 ブレイクに続いて、タクマ達も気合いを入れてゴーレムの足元に向かう。
 そんなタクマ達に応戦しようと、ゴーレムは巨大な腕で地面を殴りつける。それと同時に、その殴った場所が凍り出した。

「さては、これが砂漠寒冷化の原因だな?」
「ブレイク!ちゃんと前を見るのじゃ!」
「ん?危ねっ!!」

 ゴーレムは、別方向からやって来るブレイクに向けて、《メガ・ウォーター》を放つ。
 ブレイクはメアの忠告のお陰で、咄嗟に回避する事ができ、タクマも指を鳴らして《メガ・ウォーター》をコピーした。

「よし来た、《フリズ》!」
「よしタクマ!俺たちはこっから攻めるぞ!」

 ノエルは《フリズ》で氷の橋を作り上げ、ブレイクはタクマの手を引き、共にその橋を駆け上がる。
 がしかし、ゴーレムの目から飛び出したレーザー光線によって、手まで後一歩のところでその橋を切り落とされてしまう。

「そんな、後一歩なのに……」
「タクマ、絶対に口開けて下見るなよ?」
「え……ブレイクさん!?ちょ、待……あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ブレイクはタクマを軽々しく持ち上げ、ゴーレムの肩あたりに投げ飛ばした。一瞬下を見てみると、ブレイクが落ちていくのが見えた。
 タクマは落ちていくブレイクに心の中で「行ってくる」と言い、そのままゴーレムの肩に乗った。

【ゴーレム 肩】

 ──ブレイクさんなら大丈夫。俺は俺のやるべき事をやる!
 タクマは剣を構えながら、ゴーレムの周りを回る。
 しかしそれと同時に、タクマを狙ってゴーレムの首も回り、赤い一つ目から大量のレーザーを撃つ。

「うおっ!わっ!しつこいっ!!」

 タクマは、ブレイクとの朝練で身につけた反射神経でゴーレムのレーザーを回避し、首のロウとゴーレムの隙を探す。
 だが、何度走ってもゴーレムの首がどこまでも追いかけてくるせいで見つからない。

「これはあまり使いたくないけど、相手は機械、そして威力も高いなら……」

 タクマは、追いかけてくるゴーレムの目に向けて《コピー・メガウォーター》と唱えた。
 すると予想通り、ゴーレムの目が一時的に光を失い、首の裏へ回る事ができた。更に、そこにロウがあった。

「今のうちに、〈閃の剣〉!」

 手応えあり、でも首を完全に切った感じはしない。しかも何かスライダーのような物で滑り落ちているような気がする。
 ガコン!何かが開く音がする。タクマは何が起きたのか、目を開ける。
 するとちょうど、目の前を歩き回っていた目玉型のロボットと目が合ってしまった。

「あ……ちゃす……」

 タクマは何が起きたのか分からず、何故かそのロボットに挨拶をする。

『侵入者発見!侵入者発見!直チニ排除シマス!』
「うるせぇっ!!」
『排除シ……マ……ハイ……シ……』

 何とかすぐに、ゴーレムの中に入ってしまったと気付いたタクマは、気を取り直してロボットを真っ二つに斬った。

「にしても変なとこ入っちゃったな。ケーブルまみれで気持ち悪っ」

 タクマは再び剣を構え、ゴーレムの内部を探索した。



【キョーハイ砂漠 ゴーレムの外】

「《ウィンド》!」

 メイジュは落ちてくるブレイクの下に《ウィンド》のクッションを生み出し、ブレイクを助けた。

「ブレイクさん!タクマさんは……」
「安心しろ!奴ならゴーレムの肩に投げてきた」

 ブレイクは笑顔でグッドサインを出しながらノエルに言い、ゴーレムの右足首に〈閃の剣〉と通常攻撃を当てた。
 すると、それに反撃するかのように、足首から電気の槍らしきものが飛んできた。
 ブレイクはそれを何とか避けたが、頬に掠った事でそこから血が流れる。

「ブレイク!大丈夫か!!」
「あぁ、それより分かった事がある!」

 ブレイクは口をにやつかせながら、頬から流れ出た血を親指で拭う。そして、その分かった事をメア達に伝えた。

「コイツ、硬すぎて俺だけじゃ無理だ」
「そりゃあ、無理じゃろうな。で、策はあるのか?」
「俺が攻撃を与えた後、そこにメアの《ドゥンケル》、ノエルの《フリズ》、そしてメイジュの《フレア》で攻撃を与えてくれ!」
「成る程、剣がダメなら魔法でやれ、という事だね」
「あぁ、分かったらさっさと決行すんぞ!

 ブレイクは3人にそう伝え、今度は左足首に向けて〈閃の剣〉を放ち、その間にメイジュ達は魔力を溜めた。
 その時、足首から電気の槍が飛び出した。

「二度目は効かねぇ!今だっ!!」
「あぁ!」
「行きますっ!!」
「やったるのじゃ!」

 メイジュ達は溜めた魔力を、《ドゥンケル》、《フリズ》、《フレア》に変えて、足首の隙に打ち込んだ。
 すると、そこの装甲が小さな爆発音と共に剥がれ、そこからカラフルな電線などが現れた。

「うへぇ、気色悪い血管です……」
「ようし!次はあっちだ!」

 ブレイク達は言い、また同じように右足の装甲も剥いだ。するとその時、ノエルが急に悲鳴を上げた。

「どうしたノエル!この血管で気分悪くしたか?」
「違います、今ゴーレムの中からタスケテって……」

 ノエルは涙を流しながら言う。
 それを聞いたメイジュは、ノエルの手を掴んで攻撃のチャンスを探しながら、ゴーレムの中の生命反応を調べた。

「本当だ、心臓の辺りに10人くらいの生命反応がある!」
「なんじゃと!?」

 メイジュの発言に、周りの空気が冷たくなった。
 すると、そんな中でブレイクが「だあぁぁぁぁっ!!」と雄叫びを上げた。
 メイジュ達はそちらに振り向く。

「生命反応があろうが、まずはコイツを倒さねぇといみがない!気を取り直して武器を取れっ!!」

 ブレイクは3人を鼓舞し、改めてゴーレムへ突撃した。
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