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2 どうも前世と違っています?
6 アウローラ
しおりを挟むアウローラ・コアル・ザクリナーニネ子爵令嬢は寄宿舎から連れられて、王宮の取調室にいる。
シェルとグラナードも一緒だ。取り調べをしているのは、騎士団長と騎士二人。一人は記録をしている。
「血の交換とはなんだ?」
「男と女がすることは決まっているでしょう」
「それが何か聞いているんだ」
「殿下と結ばれたのよ。そのときの子がいるの。二歳半になるわ」
「あの夜、グラナートと同じ部屋で眠ったが」
「眠り草を飲ませたのよ。シェル様と側近に。簡単な事よ。お茶にも食事にもたくさん入れたわ。シェル様も側近もすぐに眠りに落ちて、儀式をするのにちょうど良かったのよ」
「儀式とは何だ」
「永遠を誓う約束よ。処女を捧げ、シェル様からもいただいたから、子供ができたわ」
「僕にはまだ精通はなかったはずだ」
「魔術でどうにでもなるわ」
「呪いをかけることも簡単よ。私を見たら虜になるように、魔術をかけたわ。シェル様は私を見つめたらドキドキと胸が騒ぐはずよ」
シェルはアウローラを見つめた。確かに胸が騒ぐ。愛おしい気持ちが芽生え始めたとき、隣に立つグラナートが視線を遮った。
「すまない。グラナート」
「いや、操られているだけだ」
「そうだった」
アウローラは微笑む。
「シェル様の子供を見たくはない?どうせ一族全員捕まえてきたのでしょう?その中にいるはずよ」
「二歳くらいの子はいなかったが?」
「成長が早いのよ。そういう魔法をかけたの」
アウローラは立ち上がった。
「紹介するわ。さあ、この扉を開けて」
騎士団長は頷いて、アウローラの手錠に鎖をつけた。
牢の前で、アウローラは優しく「シェル」と呼んだ。
「アウローラ」
出てきたのはシェル殿下そっくりな男性だった。とても二歳半には見えない。
「どっちが本物かわからないでしょう?」
「シェル、皆を解放して、お城を乗っ取るのよ」
簡素な服を身につけた殿下にそっくりのシェルは、魔術を使い、鍵を開けた。
「取り押さえろ」
騎士団が笛を吹いた。大勢の足音が聞こえる。
「シェル隠れて」
「はい、アウローラ」
シェルは他の住人に紛れるように身を縮めた。見る間に存在感が消える。
騎士団長は隠れるようにしたシェルの襟を掴むと、引っ張り出してきた。
「シェル逃げなさい」
騎士団長が吹き飛ばされ、シェルは走り出した。
「すぐに追え。追って捕らえよ」
「どう?私とシェル様のお子は、なかなか強いのよ。騎士団を全滅させるかもしれないわ」
アウローラは声をあげて笑う。
護衛の騎士が、騎士団長を牢から出して、鍵を厳重にかけた。
「鍵など、私たちには無駄なのよ」
アウローラは指先を弾いた。その瞬間、閉めたばかりの鍵が開いた。
「その女の目を塞げ」
騎士は上着を脱ぐと、頭から上着をかぶせた。
「くさいわ」
「指先まで動かせないように拘束が必要だ」
アウローラは取調室に連れて行かれ、分厚い布で頭から首まで覆われて、指は添え木をされ、布で厳重に巻かれた。
「こんなことをしても無駄なのよ」
アウローラは平然と言葉を発した。
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