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第五章   

5   浮かれたモモ   改

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 ラウ様から、チェリーが懐妊した事を教わった。
それに、宰相であるレユール様も結婚したと教えてもらった。

 相手は実の妹。

 ゲームの中でレユール様を選ぶと、レユール様の妹が悪役令状に変わる。確か名前はビオニエーレだと記憶している。ビオニエーレは病弱設定だけど、途中で体調が回復する。

 ビオニエーレからレユール様を奪うのは、少々手がかかる。その面倒くささに、どうしても避けてきた。

 それに、レユール様のルートは相手をビオニエーレに選んだ方が、美しいエンディングを見られる。きっと運営さんもレユール様の相手はビオニエーレがいいと思って制作したのではないかと思っている。

 コンスルタ様とメアリーと上手くいっているようだ。

 どうやら二人は一線を越えたようで、卒業を待たずに、結婚するらしい。

 メアリーのアプローチがすごく激しい。

 元々のコンスルタの相手は、私やメアリーと同じクラスのフィアだけれど、フィアとも幼い頃から接触して、男性を紹介したのだ。フィアはコンスルタと出会う前に、その男性と恋仲になった。ラウ様の本当のお相手になる伯爵令嬢のニアとも幼い頃から接触をして、私がラウ様の事を好きなことを告げて、私の従兄を紹介した。ニアは学校に入る前に、既に嫁いでいる。
 
 私は私に都合良く動くように、完璧にゲームの中のバランスを壊した。

 元々の設定では、コンスルタ様を選んだときは、メアリーが悪役令状になり、メアリーと対決することになる。

 ラウ様を選んだときも、メアリーが悪役令状になり攻略に苦労するのだが、幼い頃からメアリーと友好を深めてきたので、今回はメアリーの妨害はない。


 どうやらイベントは順調に進んでいるようだ。

 チェリーの出産の時期が、私の結婚式と被って、私の結婚式は少々遅れる。

 アスビラシオン様の護衛のラウ様は、多忙になるので、ここは我慢の時だ。

 選択で、『待てない』と答えると、ラウ様との絆にヒビが入る事は実証済みだ。

 ゲーム通りだわ。

 さて、全てのストーリーを終えたときにやっと始まる隣国の、オブリガシオン様のイベントはまだ始まっていないはずだ。

 5人全てのイベントクリアーしたとき、空に美しい虹ができる。

 その景色は、とても美しかった。

 この世界でも見てみたいと思う。

 私は前世の記憶、ゲームの記憶をノートに書き出して、一つずつチェックをしている。

 今のところゲーム通り、……都合良く動いている。

 だから、私は最後の選択の『待つわ』をちゃんと選べば、ハッピーエンドが来るはずだ。

「モモ、何を考えているんだ?」

 ラウ様がいるのに、私ったら余計な事を考えていたわ。

 私は相変わらず、ラウ様のご自宅にお邪魔をして、ラウ様のお帰りをお待ちしている。

 メアリーの結婚の準備を手伝うと両親に話してある。

「ラウ様、今日のお食事も美味しゅうございました」

「そうか」

 ラウ様の手が私の手に触れる。

「少し休んだら、家まで送ってやるからな」

「急がなくてもいいのですよ?」

 だって、一緒にいたいんですもの。

「お茶を淹れてもらおう」

 ラウ様はダイニングから、人のいない応接室に私を連れて行った。

 メイドがお茶をテーブルに置いて、部屋から出て行くと、ラウ様は、私を膝に抱き上げて下さる。

 背も高くて体格もいいラウ様の胸は厚い。私はその胸に甘えるように体を寄せて顔を埋める。

 ラウ様は抱っこが好きなのだ。

 私の髪を撫でながら、唇を寄せる。

 堅物なラウ様が、私を甘やかすときは、こうして抱き上げられる。

 実際に抱き上げられて、胸に凭れていると思うと、鼻の奥がツンとして鼻血が出そうです。

 画面で見ていたときも、とても幸せな気分になったけれど、実際にそうされると、画面で見ていた以上の破壊力があります。

 チュッと私の頬にキスをしてくれる。

 実はキス魔だったんだなと、実際のラウ様とお付き合いをするようになって、初めて知った。ゲームの中では分からなかった事が、現実の世界では起きる。

 ここはゲームの世界だけど、ちゃんとここで生きているのだと改めて思う。

「モモを早く俺の物にしたいなぁ」

「はい」

 ゲームの中にない言葉も出てくる。

「私も早くラウ様の妻になりたいです」

 ラウ様は私を包むように抱きしめてきた。

 いいわ。

 この世界。

 幸せすぎる。

 やっぱりラウ様一筋に生きてきて良かったわ。

 私は幸せを噛みしめていた。


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