幼馴染みの彼と彼

綾月百花   

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 大雪が降ってから一週間後、やっとクリスマスが来た。

 俺達の家に皆が集まるそうだ。

 朝霧さんからは、何も用意しなくてもいいと言われている。

 佐伯さんがケーキ当番らしくて、張り切っているそうだ。

 色々手配ができているようで、夕方の5時に待ち合わせをしている。

 俺と篤志と菜都美は三人で、お風呂に入って、バシャバシャして遊んで、皆が来る前にお風呂を済ませて、菜都美は可愛い犬の柄がついたロンパースを着せた。

 ツートンになっていて、フリルがスカートのように見えるが、フリルなのでハイハイも歩くのにも不便にならない。

 篤志は普段着のポロシャツを着ている。

 俺もいつもと同じシャツの上にトレーナーを着ている。

 朝霧さんが500円以下でプレゼント交換をしようというので、俺は悩んで厚手のタオルをネットで買った。

 やっと菜都美にわんこをプレゼントできる。

 夕方の5時にしたのは、菜都美が眠くなってしまうからだ。

 約束の時間に、インターフォンが鳴って、篤志がロックを開けた。


「皆が来たよ」

「菜都美、おいで」

「んぱ、あっこ」

「抱っこね」


 俺は菜都美を抱っこして、玄関の前に来た。

 篤志が、玄関を開けている。


「いらっしゃい」

「メリークリスマス」と言って、四人は家に入ってきた。

「菜都美、大きくなったな」

「菜都美は今日も可愛いな」

「パパに抱っこしてもらっているのか?」

「菜都美、いい子いい子」


 四人が菜都美に話しかけていく。

 どう反応していいのか分からずに、菜都美は自分の頭をポンポンとする。

 俺は菜都美のポンポンがすむと、菜都美の頭を撫でる。

 皆でダイニングに入っていって、机の上にご馳走を並べていく。

 ケーキは二段式の大きなケーキだった。蝋燭が一本立っている。

 今回も立食パーティーだけれど、菜都美にはテーブル付きの椅子がある。

 綺麗に並べられた料理を見て、菜都美は頭をポンポンしている。


「綺麗だな」

「きれー」


 俺は菜都美の頭を撫でる。


「お、菜都美、お話できるのか?」

「なちゅみ、いいこ」

「おお。もう会話ができるのか?」と皆が驚く。

「真が根気よく教えているみたいです」と篤志が言った。

「んぱ、まんま」

「お腹空いたか?」

「ぽんぽん」と菜都美はお腹を押さえる。

「椅子に座ろうな」

「はーい」


 俺は菜都美を椅子に座らせると、菜都美のプレートに食べられそうな物を少しずつ置いて、大好物のパンを最後に置いた。


「ましゅ」

「どうぞ」


 篤志が菜都美のコップにミルクを入れて、置いた。

 菜都美のコップはストローがついているが、倒れてもすぐには零れない。

 菜都美は好物のパンを手に持ち、かぶりついている。

 その合間に、俺はおかずを食べさせている。

 皆も食べ出した。

 飲み物は、お茶とオレンジジュースだ。


「真君、9体完売したよ」

「本当ですか?幾らで売ったんですか?」

「走る子は、1000万で。遊べる子は1500万、認知症の子は2000万。ボーナス期待していてくれ」と朝霧さんが言った。

「そんなに高く値段を付けたんですか?よく売れましたね?」

「欲しい人は少々高くても、お金を払うんでしょう」と佐伯さんが言った。

「需要はある。この子達をもう少し作ってくれるか?」と朝霧さんは言った。

「はい、このタイプなら直ぐできるので、大丈夫ですよ」

「ボックスの方はどうだ」と前島さんが聞いてきた。

「ボックスは年齢別で作っているので、年齢が上がると、プログラムが複雑になるので、ちょっと大変です。年齢層を何歳から何歳までと決めてもらえると作りやすいです。菜都美のワンワン程度なら、直ぐに作れますが、勉強を教えるタイプは、俺も参考書を見て間違いがないか確かめているので、手間がかかります」

「なるほど」

「それなら、なっちゃんのワンワンタイプの子を作ってみようか?」


 菜都美が「わうわう」とワンワンを探し出した。

 食事の時は、ワンワンは持たせていない。

 食事に集中させた方が、子供の躾にもなるからだ。


「菜都美、ワンワンもご飯を食べているから、菜都美もご飯食べような?」

「わうわう、まんま?」

「そう、ワンワンもまんま」

「はーい」


 菜都美は、またパンをモグモグしている。


「なっちゃんは、何ヶ月だ?」

「八ヶ月です」

「会話ができるのは1才半過ぎじゃないかな?」

「菜都美は、ずいぶん早くから単語を話していたので、会話はわりとスムーズに覚えていますね。まだパパは言えませんけど」

「成長が早いと思うが、安井、どうだ?」

「菜都美ちゃんはかなり早いと思いますよ。真君が一生懸命に教えているんだと思うけれど、それを差し引いても、よくお話できます」

「まずは、なっちゃんのワンワンのレベルで作ってみたらどうだろう」と朝霧さんが言った。

「それなら、簡単にできます。菜都美はぬいぐるみをずっと持っていますが、ボックスタイプでもいいでしょうか?」

「いつも持っているのか?」

「食事とお風呂の時は、躾のつもりで置くようにしていますが、目覚めから寝るまでは、ぬいぐるみを手放しません」

「それは凄いな」

「この間の大雪の時、雪が溶けるところを見せたら『すごい』と言っていました。それこそすごいと俺が思いましたが、観察することも覚えています」

「取り敢えず、ぬいぐるみタイプで作ってみて、試しにボックスも作ってみよう。なっちゃんの成長は誰が見ても早い」

「分かりました」

「朝霧さん、真がやってみたいことがあるそうなんですが、話を聞いてもらえますか」と篤志が朝霧さんに声を掛けてくれた。

「何がしたいんだ?」


 皆の視線が俺の方を向いている。

 ドキドキしながら、篤志が与えてくれたチャンスを生かすつもりで、俺はずっと抱えている思いを皆に伝える。


「俺、盲導犬を作りたいんです。大学時代から考えていたんですが、あっちゃんと27才でドクターを取る約束をしていたので、盲導犬の研究までできなかったのです。未練が残っていて、仕事はきちんとするので、盲導犬の研究をさせてもらえませんか?」

「作れる自信はあるの?」

「わんこは、同じわんこを使うので、カメラを替えます。AIの学習も難しくなると思いますが、できないとは思えないのです。俺なら作れると思います」


 俺は少し強気にプレゼンをした。


「いいだろう」

「ありがとうございます。クラウドファンディングで寄付を募ってもいいかと思っています。360度カメラを付けたいと思っているので、カメラを作っている会社に協力要請もしてみたいと思います」

「伝があるのか?」

「はい、大学の友達がカメラの会社に就職したので、社長を紹介してもらえたらと考えています。成功すれば、利益も出てくると思うので、他社にもぶつかっていこうかと考えています」

「やってみなさい」と朝霧さんは言った。

「頑張れ」と他の皆が拍手してくれた。


 俺は頑張ろうと思った。

 俺なら作れると思える。

 菜都美が頭をポンポンしているので、菜都美の頭を優しく撫でた。


「菜都美、パパ、頑張るからね」

「んぱ、きー」

「菜都美、好きだよ」


 俺は菜都美を抱きしめた。



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