59 / 67
59
しおりを挟む
大雪が降ってから一週間後、やっとクリスマスが来た。
俺達の家に皆が集まるそうだ。
朝霧さんからは、何も用意しなくてもいいと言われている。
佐伯さんがケーキ当番らしくて、張り切っているそうだ。
色々手配ができているようで、夕方の5時に待ち合わせをしている。
俺と篤志と菜都美は三人で、お風呂に入って、バシャバシャして遊んで、皆が来る前にお風呂を済ませて、菜都美は可愛い犬の柄がついたロンパースを着せた。
ツートンになっていて、フリルがスカートのように見えるが、フリルなのでハイハイも歩くのにも不便にならない。
篤志は普段着のポロシャツを着ている。
俺もいつもと同じシャツの上にトレーナーを着ている。
朝霧さんが500円以下でプレゼント交換をしようというので、俺は悩んで厚手のタオルをネットで買った。
やっと菜都美にわんこをプレゼントできる。
夕方の5時にしたのは、菜都美が眠くなってしまうからだ。
約束の時間に、インターフォンが鳴って、篤志がロックを開けた。
「皆が来たよ」
「菜都美、おいで」
「んぱ、あっこ」
「抱っこね」
俺は菜都美を抱っこして、玄関の前に来た。
篤志が、玄関を開けている。
「いらっしゃい」
「メリークリスマス」と言って、四人は家に入ってきた。
「菜都美、大きくなったな」
「菜都美は今日も可愛いな」
「パパに抱っこしてもらっているのか?」
「菜都美、いい子いい子」
四人が菜都美に話しかけていく。
どう反応していいのか分からずに、菜都美は自分の頭をポンポンとする。
俺は菜都美のポンポンがすむと、菜都美の頭を撫でる。
皆でダイニングに入っていって、机の上にご馳走を並べていく。
ケーキは二段式の大きなケーキだった。蝋燭が一本立っている。
今回も立食パーティーだけれど、菜都美にはテーブル付きの椅子がある。
綺麗に並べられた料理を見て、菜都美は頭をポンポンしている。
「綺麗だな」
「きれー」
俺は菜都美の頭を撫でる。
「お、菜都美、お話できるのか?」
「なちゅみ、いいこ」
「おお。もう会話ができるのか?」と皆が驚く。
「真が根気よく教えているみたいです」と篤志が言った。
「んぱ、まんま」
「お腹空いたか?」
「ぽんぽん」と菜都美はお腹を押さえる。
「椅子に座ろうな」
「はーい」
俺は菜都美を椅子に座らせると、菜都美のプレートに食べられそうな物を少しずつ置いて、大好物のパンを最後に置いた。
「ましゅ」
「どうぞ」
篤志が菜都美のコップにミルクを入れて、置いた。
菜都美のコップはストローがついているが、倒れてもすぐには零れない。
菜都美は好物のパンを手に持ち、かぶりついている。
その合間に、俺はおかずを食べさせている。
皆も食べ出した。
飲み物は、お茶とオレンジジュースだ。
「真君、9体完売したよ」
「本当ですか?幾らで売ったんですか?」
「走る子は、1000万で。遊べる子は1500万、認知症の子は2000万。ボーナス期待していてくれ」と朝霧さんが言った。
「そんなに高く値段を付けたんですか?よく売れましたね?」
「欲しい人は少々高くても、お金を払うんでしょう」と佐伯さんが言った。
「需要はある。この子達をもう少し作ってくれるか?」と朝霧さんは言った。
「はい、このタイプなら直ぐできるので、大丈夫ですよ」
「ボックスの方はどうだ」と前島さんが聞いてきた。
「ボックスは年齢別で作っているので、年齢が上がると、プログラムが複雑になるので、ちょっと大変です。年齢層を何歳から何歳までと決めてもらえると作りやすいです。菜都美のワンワン程度なら、直ぐに作れますが、勉強を教えるタイプは、俺も参考書を見て間違いがないか確かめているので、手間がかかります」
「なるほど」
「それなら、なっちゃんのワンワンタイプの子を作ってみようか?」
菜都美が「わうわう」とワンワンを探し出した。
食事の時は、ワンワンは持たせていない。
食事に集中させた方が、子供の躾にもなるからだ。
「菜都美、ワンワンもご飯を食べているから、菜都美もご飯食べような?」
「わうわう、まんま?」
「そう、ワンワンもまんま」
「はーい」
菜都美は、またパンをモグモグしている。
「なっちゃんは、何ヶ月だ?」
「八ヶ月です」
「会話ができるのは1才半過ぎじゃないかな?」
「菜都美は、ずいぶん早くから単語を話していたので、会話はわりとスムーズに覚えていますね。まだパパは言えませんけど」
「成長が早いと思うが、安井、どうだ?」
「菜都美ちゃんはかなり早いと思いますよ。真君が一生懸命に教えているんだと思うけれど、それを差し引いても、よくお話できます」
「まずは、なっちゃんのワンワンのレベルで作ってみたらどうだろう」と朝霧さんが言った。
「それなら、簡単にできます。菜都美はぬいぐるみをずっと持っていますが、ボックスタイプでもいいでしょうか?」
「いつも持っているのか?」
「食事とお風呂の時は、躾のつもりで置くようにしていますが、目覚めから寝るまでは、ぬいぐるみを手放しません」
「それは凄いな」
「この間の大雪の時、雪が溶けるところを見せたら『すごい』と言っていました。それこそすごいと俺が思いましたが、観察することも覚えています」
「取り敢えず、ぬいぐるみタイプで作ってみて、試しにボックスも作ってみよう。なっちゃんの成長は誰が見ても早い」
「分かりました」
「朝霧さん、真がやってみたいことがあるそうなんですが、話を聞いてもらえますか」と篤志が朝霧さんに声を掛けてくれた。
「何がしたいんだ?」
皆の視線が俺の方を向いている。
ドキドキしながら、篤志が与えてくれたチャンスを生かすつもりで、俺はずっと抱えている思いを皆に伝える。
「俺、盲導犬を作りたいんです。大学時代から考えていたんですが、あっちゃんと27才でドクターを取る約束をしていたので、盲導犬の研究までできなかったのです。未練が残っていて、仕事はきちんとするので、盲導犬の研究をさせてもらえませんか?」
「作れる自信はあるの?」
「わんこは、同じわんこを使うので、カメラを替えます。AIの学習も難しくなると思いますが、できないとは思えないのです。俺なら作れると思います」
俺は少し強気にプレゼンをした。
「いいだろう」
「ありがとうございます。クラウドファンディングで寄付を募ってもいいかと思っています。360度カメラを付けたいと思っているので、カメラを作っている会社に協力要請もしてみたいと思います」
「伝があるのか?」
「はい、大学の友達がカメラの会社に就職したので、社長を紹介してもらえたらと考えています。成功すれば、利益も出てくると思うので、他社にもぶつかっていこうかと考えています」
「やってみなさい」と朝霧さんは言った。
「頑張れ」と他の皆が拍手してくれた。
俺は頑張ろうと思った。
俺なら作れると思える。
菜都美が頭をポンポンしているので、菜都美の頭を優しく撫でた。
「菜都美、パパ、頑張るからね」
「んぱ、きー」
「菜都美、好きだよ」
俺は菜都美を抱きしめた。
俺達の家に皆が集まるそうだ。
朝霧さんからは、何も用意しなくてもいいと言われている。
佐伯さんがケーキ当番らしくて、張り切っているそうだ。
色々手配ができているようで、夕方の5時に待ち合わせをしている。
俺と篤志と菜都美は三人で、お風呂に入って、バシャバシャして遊んで、皆が来る前にお風呂を済ませて、菜都美は可愛い犬の柄がついたロンパースを着せた。
ツートンになっていて、フリルがスカートのように見えるが、フリルなのでハイハイも歩くのにも不便にならない。
篤志は普段着のポロシャツを着ている。
俺もいつもと同じシャツの上にトレーナーを着ている。
朝霧さんが500円以下でプレゼント交換をしようというので、俺は悩んで厚手のタオルをネットで買った。
やっと菜都美にわんこをプレゼントできる。
夕方の5時にしたのは、菜都美が眠くなってしまうからだ。
約束の時間に、インターフォンが鳴って、篤志がロックを開けた。
「皆が来たよ」
「菜都美、おいで」
「んぱ、あっこ」
「抱っこね」
俺は菜都美を抱っこして、玄関の前に来た。
篤志が、玄関を開けている。
「いらっしゃい」
「メリークリスマス」と言って、四人は家に入ってきた。
「菜都美、大きくなったな」
「菜都美は今日も可愛いな」
「パパに抱っこしてもらっているのか?」
「菜都美、いい子いい子」
四人が菜都美に話しかけていく。
どう反応していいのか分からずに、菜都美は自分の頭をポンポンとする。
俺は菜都美のポンポンがすむと、菜都美の頭を撫でる。
皆でダイニングに入っていって、机の上にご馳走を並べていく。
ケーキは二段式の大きなケーキだった。蝋燭が一本立っている。
今回も立食パーティーだけれど、菜都美にはテーブル付きの椅子がある。
綺麗に並べられた料理を見て、菜都美は頭をポンポンしている。
「綺麗だな」
「きれー」
俺は菜都美の頭を撫でる。
「お、菜都美、お話できるのか?」
「なちゅみ、いいこ」
「おお。もう会話ができるのか?」と皆が驚く。
「真が根気よく教えているみたいです」と篤志が言った。
「んぱ、まんま」
「お腹空いたか?」
「ぽんぽん」と菜都美はお腹を押さえる。
「椅子に座ろうな」
「はーい」
俺は菜都美を椅子に座らせると、菜都美のプレートに食べられそうな物を少しずつ置いて、大好物のパンを最後に置いた。
「ましゅ」
「どうぞ」
篤志が菜都美のコップにミルクを入れて、置いた。
菜都美のコップはストローがついているが、倒れてもすぐには零れない。
菜都美は好物のパンを手に持ち、かぶりついている。
その合間に、俺はおかずを食べさせている。
皆も食べ出した。
飲み物は、お茶とオレンジジュースだ。
「真君、9体完売したよ」
「本当ですか?幾らで売ったんですか?」
「走る子は、1000万で。遊べる子は1500万、認知症の子は2000万。ボーナス期待していてくれ」と朝霧さんが言った。
「そんなに高く値段を付けたんですか?よく売れましたね?」
「欲しい人は少々高くても、お金を払うんでしょう」と佐伯さんが言った。
「需要はある。この子達をもう少し作ってくれるか?」と朝霧さんは言った。
「はい、このタイプなら直ぐできるので、大丈夫ですよ」
「ボックスの方はどうだ」と前島さんが聞いてきた。
「ボックスは年齢別で作っているので、年齢が上がると、プログラムが複雑になるので、ちょっと大変です。年齢層を何歳から何歳までと決めてもらえると作りやすいです。菜都美のワンワン程度なら、直ぐに作れますが、勉強を教えるタイプは、俺も参考書を見て間違いがないか確かめているので、手間がかかります」
「なるほど」
「それなら、なっちゃんのワンワンタイプの子を作ってみようか?」
菜都美が「わうわう」とワンワンを探し出した。
食事の時は、ワンワンは持たせていない。
食事に集中させた方が、子供の躾にもなるからだ。
「菜都美、ワンワンもご飯を食べているから、菜都美もご飯食べような?」
「わうわう、まんま?」
「そう、ワンワンもまんま」
「はーい」
菜都美は、またパンをモグモグしている。
「なっちゃんは、何ヶ月だ?」
「八ヶ月です」
「会話ができるのは1才半過ぎじゃないかな?」
「菜都美は、ずいぶん早くから単語を話していたので、会話はわりとスムーズに覚えていますね。まだパパは言えませんけど」
「成長が早いと思うが、安井、どうだ?」
「菜都美ちゃんはかなり早いと思いますよ。真君が一生懸命に教えているんだと思うけれど、それを差し引いても、よくお話できます」
「まずは、なっちゃんのワンワンのレベルで作ってみたらどうだろう」と朝霧さんが言った。
「それなら、簡単にできます。菜都美はぬいぐるみをずっと持っていますが、ボックスタイプでもいいでしょうか?」
「いつも持っているのか?」
「食事とお風呂の時は、躾のつもりで置くようにしていますが、目覚めから寝るまでは、ぬいぐるみを手放しません」
「それは凄いな」
「この間の大雪の時、雪が溶けるところを見せたら『すごい』と言っていました。それこそすごいと俺が思いましたが、観察することも覚えています」
「取り敢えず、ぬいぐるみタイプで作ってみて、試しにボックスも作ってみよう。なっちゃんの成長は誰が見ても早い」
「分かりました」
「朝霧さん、真がやってみたいことがあるそうなんですが、話を聞いてもらえますか」と篤志が朝霧さんに声を掛けてくれた。
「何がしたいんだ?」
皆の視線が俺の方を向いている。
ドキドキしながら、篤志が与えてくれたチャンスを生かすつもりで、俺はずっと抱えている思いを皆に伝える。
「俺、盲導犬を作りたいんです。大学時代から考えていたんですが、あっちゃんと27才でドクターを取る約束をしていたので、盲導犬の研究までできなかったのです。未練が残っていて、仕事はきちんとするので、盲導犬の研究をさせてもらえませんか?」
「作れる自信はあるの?」
「わんこは、同じわんこを使うので、カメラを替えます。AIの学習も難しくなると思いますが、できないとは思えないのです。俺なら作れると思います」
俺は少し強気にプレゼンをした。
「いいだろう」
「ありがとうございます。クラウドファンディングで寄付を募ってもいいかと思っています。360度カメラを付けたいと思っているので、カメラを作っている会社に協力要請もしてみたいと思います」
「伝があるのか?」
「はい、大学の友達がカメラの会社に就職したので、社長を紹介してもらえたらと考えています。成功すれば、利益も出てくると思うので、他社にもぶつかっていこうかと考えています」
「やってみなさい」と朝霧さんは言った。
「頑張れ」と他の皆が拍手してくれた。
俺は頑張ろうと思った。
俺なら作れると思える。
菜都美が頭をポンポンしているので、菜都美の頭を優しく撫でた。
「菜都美、パパ、頑張るからね」
「んぱ、きー」
「菜都美、好きだよ」
俺は菜都美を抱きしめた。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
孤狼のSubは王に愛され跪く
ゆなな
BL
旧題:あなたのものにはなりたくない
Dom/Subユニバース設定のお話です。
氷の美貌を持つ暗殺者であり情報屋でもあるシンだが実は他人に支配されることに悦びを覚える性を持つSubであった。その性衝動を抑えるために特殊な強い抑制剤を服用していたため周囲にはSubであるということをうまく隠せていたが、地下組織『アビス』のボス、レオンはDomの中でもとびきり強い力を持つ男であったためシンはSubであることがばれないよう特に慎重に行動していた。自分を拾い、育ててくれた如月の病気の治療のため金が必要なシンは、いつも高額の仕事を依頼してくるレオンとは縁を切れずにいた。ある日任務に手こずり抑制剤の効き目が切れた状態でレオンに会わなくてはならなくなったシン。以前から美しく気高いシンを狙っていたレオンにSubであるということがバレてしまった。レオンがそれを見逃す筈はなく、シンはベッドに引きずり込まれ圧倒的に支配されながら抱かれる快楽を教え込まれてしまう───
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる