唯一の恋

綾月百花   

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6   アンバランス

2   4時間

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 亜稀の頬を平手で打って、冷蔵庫から麦茶を出す。グラスに注いで、冷蔵庫の中に戻す。
 やかんを取って水を入れると、お茶パックを入れて、ガスコンロにかけた。
 麦茶の残りがわずかになっていた。いつもは奈都がこまめに作り置きをしているが、今日はしてなかった。亜稀に抱かれていたのだから仕方がない。
 今日のような休日は、奈都がお茶を持ってきてくれるが、今日は来なかった。喉が渇いて台所に行く途中だった。その途中で、奈都の部屋から亜稀の声が聞こえたので、奈都の部屋を開けたら、泣き濡れた顔で意識を失っている奈都が亜稀に抱かれていた。
「自業自得だな」
「一回は一回だろう?」
「おまえはいつから奈都を抱いていたんだ?」
 亜稀は時計を見る。
 食事をした後、奈都とエッチをしたくなって、迷いながら奈都の部屋訪ねたのは12時半だ。
「1時頃から」
 壁に取り付けられた時計を見ながら、亜稀は答えた。
 12時半とは、さすがに言えなかった。
「今は何時だ?」
「5時10分」
 いつもなら奈都は夕食を作っている時間だ。
「何時間、奈都の体を抱いたかわっかた?」
「普通だろう?」
 パシンと響介は亜稀の頭を叩く。
「おまえはペニスの先を4時間、全力で擦られても痛くはないのか?」
「ペニスの先?」
 亜稀はきょとんと首を傾ける。
「おまえが入れたのは、それほどデリケートな場所だ」
「考えたこともなかった」
 亜稀はズボンの上から自分の欲望に触れた。
 さすがにペニスの先を4時間擦られるのは拷問だ。
 1分だって我慢できない。
 最初は優しく抱いた覚えがあるが、途中から自分が気持ちいい抱き方をして、意識を失ってからは、力一杯押さえつけて、擦りつけた。
「奈都は中が痛いと言った。強く擦りすぎの上に、奥まで入れすぎだ。奈都の体はどこもコンパクトだと言ったはずだ。お前の勃起したペニスの長さと奈都の体型を考えろ」
 響介の声が低い。
 怒っている時の声だ。
「おまえも4時間ペニスの先端を擦り続けろ。ああ、生ぬるいか、4時間尻の中に木の棒でも入れて擦りつけろ。ただ擦りつけるだけじゃなくて、お前がやったように直腸より先に入るように、思いっきり入れろ」
「いやだよ」
「奈都も嫌だったはずだ」
「うん」
 また失敗してしまった。
「今まで付き合ってきた女にも、そうやって抱いてきたのか?」
「4時間はさすがにないし、失神する子もいなかったけど、みんな悦んでいたし。好きだって言ってくれた」
 どの子もそれなりに気持ちがよかったが、奈都の体を知ったら雲泥の差だ。だから時間を忘れて夢中で抱いてしまう。
「セックスはテクニックだけじゃないし、激しくするだけでもないよ。そういうのが好きな人もいるかもしれないけど、奈都は違う。奈都は男の子部分も女の子の部分もすごく敏感なんだ。一度抱けば気づくだろう?おまえはバカだから気づかないか?最初の時も奈都の中にピンポン球入れるし、自分さえよければいいという身勝手な抱き方をしていたから気づかなかったんだろうな。あんなに泣かせたのに、すぐに忘れる鳥頭だ。もう奈都とすることもないから関係ないか」
「もう抱かせてくれないのかな?」
 今も抱きたくて仕方ない。
「自業自得だ。僕はおまえと奈都と抱き合うのは不愉快だったから、奈都が拒絶してくれてよかったとは思うが、傷ついた奈都が心配だ」
「奈都、震えてた。痛いのは嫌だって言ってたのに、また痛い思いさせた」
 初めて抱いた日、悪戯した時のことを思い出した。
 軽い気持ちで入れたいろんな異物。抱かれながら大泣きされた。女の子を抱いて大泣きされたのは初めてだった。ピンポン球を取り出すのに、奈都に痛い思いをさせて、いっぱい泣かせた。
 奈都をあんなに泣かせたのは初めてだった。
「今夜は部屋から出てこないかもしれないな」
「俺ってバカだ」
 部屋に訪ねていって、振り向いた奈都は可愛い笑顔を見せていた。
 好きだと言われて嬉しかったのに。
「昔から、おまえはバカだよ」
「確かに奈都に比べると成績悪いけど」
「成績のこと言ってるんじゃないよ」
「もっと大人になれ」
「うん」
「今夜の夕食はお前が作れ。奈都は食べないかもしれないがな。洗濯もお前がやれ。奈都がやっていたことを代わって全部やれ。どんなに僕たちが奈都に甘えていたのかわかるだろう」
「わかった」
 ガスを止めて、響介は自室に戻った。

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