唯一の恋

綾月百花   

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 羽を抜くと精子が吹き出してきた。
 予想していたのか、響介はタオルでそれを受け止めた。
「怖かったな」
「僕も悪かったんだ。初めは優しかったんだ。だけど、僕が響ちゃんと比較したから。きっとそれで怒らせた」
「どうして抱かれたんだ?」
「お風呂に入ってたら、亜稀も入ってきて抱きしめられたんだ。平等に愛してって言われた。僕は響ちゃんも亜稀も好きだから、どちらかを切り捨てることはできない。だったら、二人に共有されても仕方ないと思えたんだ。僕は間違ってた?」
「奈都は亜稀も受け入れようとしたのか?」
「響ちゃんは嫌だった?」
「僕は奈都を独り占めにしたい」
「響ちゃんごめん」
 奈都はまた泣き出した。
 響介の部屋の寝室にあるカウチに、奈都は寝かされていた。
「叩かれた頬は痛くない?」
「少し痛い」
 響介の手が頬に触れてくる。
「湿布貼るか?」
「大丈夫」
「手のしびれは取れてきた?」
「うん」
「少し体を見せて、怪我してないか調べたいんだ」
「うん」
 奈都は目を閉じて足を開いた。
 響介は奈都の男性器を掴んで、手を這わせて、傷がないか見ていく。
「ここは先端に刺されただけ?」
「うん」
 響介は奈都のそこを口にくわえた。
「響ちゃん」
 飴をなめるように先端に舌があたる。
「あ、あああっ」
 先端を突かれて、吸われる。奈都の小さな欲望は、すぐに蜜を溜める。
「響ちゃん、放して。出ちゃう」
 奈都の全部が響介の口の中に入ってしまう。
 射精を促すように先端を吸われて、亜稀は弾けた。
 奈都のものを飲んで、口から出すと、響介は奈都の顔をじっと見た。
「痛くなかったか?」
「うん」
「尿道に傷ができてたらしみると思う。痛かったら早めに言いなさい」
「わかった」
 掌が小さな睾丸に触れる。
「ここは何かされた?」
「なにも」
「よかった」
 優しい手が小さな睾丸を撫でて、そのまま下に降りていく。
 小さな女性器のすべてにキスをした。
「あああっ」
 初めに抱かれたときのように舌が襞を捲っていく。
「痛かったら言いなさい」
「うん」
 舌先が襞を捲ると、クリトリスに触れる。
 体がびくりと震える。
 少し痛いが、それ以上に感じる。
「響ちゃん、おかしくなる」
 舌先がクリトリスから離れて、小さな穴に触れる」
「響ちゃん、だめ。亜稀の精液洗ってない」
 奈都は響介の肩を押した。
「奈都以外の味がする」
「響ちゃん、ごめん。お風呂に入ってくる」
 横になっていたカウチから足を下ろす。
 身につける服はなかった。
 学校から帰ってきてから、ずっと裸だ。
 静かに立ち上がると、背後から響介が抱きしめてきた。
 掌が小さな胸を包んでいる。
「奈都が亜稀を受け入れるなら、僕も亜稀を受け入れる」
「うん。少し考えたい。あんな抱かれ方は嫌だ。響ちゃんみたいに優しく抱いてくれるなら、受け入れるつもりだったけど」
「亜稀を見捨てるのか?」
「それもできない」
「奈都、お風呂一緒に入ろう。ピンポン球が入ったままなんだろう?」
「自分じゃ取れないかな?」
「僕の指の方が長いし、奈都の体を一番知ってる」
「お風呂は一人で入りたい。あとで取って」
 奈都は裸のまま響介の部屋を出て、自分の部屋に戻った。引き出しからパジャマを出すと、お風呂場に向かった。


 水風呂だったお風呂が、温かなお湯が溜められていた。
 バラの香りの入浴剤が入れられ、お湯が薄いピンク色に変わっていた。
「亜稀」
 亜稀なりの謝罪なのだろう。
 体を流すと、手首がしみた。
 バスチェアーに座って、手鏡で秘部を見る。
 いつも小さな粒のようなクリトリスが赤く充血して腫れていた。触れると少し痛い。小さな穴は、いつもより開いていた。指を入れると、白い液体が出てくる。亜稀の精液だ。
 一番長い中指を中に入れていく。指先に堅い物があたる。ピンポン球だ。掻き出そうとするが、指先で球が転がるだけで、取れそうもない。
 シャワーを出して、亜稀の精液を綺麗に流す。膣の中に温かなお湯が入るのも慣れてしまった。
 お尻に指を入れると、やっぱり白い液体が流れてくる。
 粘り気のある液体は精液だ。
 シャワーをあてて、お尻の中も洗う。
 その二カ所を洗った後に、体中を洗っていく。
 コンビニで男に襲われかけた時は、泣くほど気持ちが悪く。何度洗っても綺麗になった気がしなかったが、亜稀に抱かれて、あのときのような不快感はない。
 ただ、悪戯は怖かったし、あんな抱かれ方は二度と嫌だ。
 体を洗ったあと、亜稀がはってくれたお湯に入る。
 熱すぎず温すぎない適温だ。
「ピンポン球どうしよう」
 響介に取ってもらうのも恥ずかしい。
 けれど、このまま放置は体に悪いだろう。
 お湯の中で穴に手を入れる。
 二本の指を入れて、挟んで出そうと球を掴むが、滑って球は逃げていく。
 指が内壁に包まれて動かすこともできない。
「亜稀のばか」
 諦めて、指を抜く。
 膝を抱えて、お湯に浸かる。
「平等に愛するって、どうしたらいいんだろう」
 亜稀は奈都の体を求めている。
 たくさんいた彼女と別れて、今は響介に抱かれている奈都を、優しく守ってくれている。
 毎日、一緒に登下校するのも楽しいし、亜稀が手を引いてくれるのも嬉しい。
(亜稀の事も好きなんだよ。響ちゃんに抱かれてても)
 いい香りのする入浴剤も嬉しい。
(家にはなかった。買いに行ってくれたのかな?)
 体から力を抜くと、お風呂のお湯に潜った。
 髪がゆらゆら揺れるのも、体に感じる水圧も全部気持ちがいい。
 奈都はプールには行ったことがない。
 両親が、奈都がプールに行くのを止めていた。
 学校の授業も、いつも見学だった。
 今ではその理由もわかる。
 秘密を暴かれるのを避けたかったのだろう。
 頭の傷も水に濡れると、見えてしまう。
 人に指摘されるのも嫌だった。
 だからお風呂が、奈都のプールだった。
「奈都?お風呂長いよ。ご飯だよ。お風呂開けるよ」
 扉が開いた。
「奈都溺れてるのか?」
 亜稀の声もお風呂が開いたことに気づかなかった。
 お風呂の中に両手が入ってきて、奈都はビックリして、湯船の中で足を滑らせた。
 頭が湯船の下まで沈んで、足が浮き上がる
「奈都っ」
 両脇に手を入れられ、引き上げられる。
 咳き込む奈都を、亜稀が抱きしめてきた。
「お風呂で溺れるなよ。心配でお風呂も見張りたくなる」
「亜稀の手にビックリしたんだよ」
「奈都のばか、溺れてる奈都を見る方がビックリするよ」
「でも溺れたのはほんと。足が滑った。助けてくれてありがとう」
「奈都」
 亜稀の唇が奈都の唇に重なる。
 触れるだけの、優しいキスだ。
「今日はごめん。奈都を抱いてるうちに悪戯したくなったんだ。もう絶対にしないから」
 亜稀の頬は、響介に殴られて赤く腫れていた。
「エッチを?」
「悪戯を。だからまた抱かせて。響介と俺を平等に愛して」
「亜稀」
 亜稀の体を押して、体を離す。
「今はしたくない」
「今はご飯だよ。呼びに来たら溺れてるからビックリした」
「着替えたら行くから。先に行っていて」
「また溺れるなよ」
「うん」
 亜稀はもう一度触れるだけのキスをして、浴室を出て行った。
「もう、亜稀の服、外着だった。せっかく綺麗に洗ったのに」
 キスをした唇に触れて、顔が熱くなる。
 奈都はもう一度お風呂に入って、亜稀の優しさを感じていた。

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