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1 欲求不満なのかな
2 弟の素行が悪すぎます 改
しおりを挟むバイトを終えて、スーパーに買い物に行く。
その途中で、亜稀が彼女とファーストフード店に座っているのを見つけた。
顔を近づけてささやき合っている。
彼女が亜稀にキスをした。
胸がドキドキした。二人で立ち上がると、店から出て人通りの多い歩道を歩いて行く。
奈都は亜稀の後をなんとなく追っていた。
人通りは少なくなって、ホテル街に入って行った。
彼女の腕が、亜稀の腕に絡みついて、彼女の体が、体格のいい亜稀の体にもたれかかっている。
二人は自然にホテルに入っていった。
奈都は亜稀の鞄に入っていたコンドームを思い出した。
(今からエッチするんだ・・・)
奈都はホテルの建物を見上げていた。
亜稀が女の子を抱く姿を想像して、それを自分に置き換えてみた。
奈都は無理だと思った。
裸の女の子の姿を想像しても、下半身も疼かないし、実際、女の子の中に自身のモノを挿入できるとも思えなかった。
奈都は自分の小さな性器にコンプレックスを抱いている。
学校のトイレも、いつも個室を使っているほど、他人に見られたくない。
そんな自分に女の子を抱けるはずもない。
抱きたいとも思えない。
男としては失格だ。
振り返ると知らない男性が、奈都の腕を掴んだ。
「いくらだ?」
「え?」
ギラついた目が値踏みするように体を舐める。
足の先から髪の先端まで、嫌らしい目に捉えられた。
(食われる)
本能的にそう感じた。
背筋が震えるほど恐怖がこみ上げてきた。
「いくらで抱かせてくれる?」
両手を掴まれて、キスをするように顔を近づけてきた。
「いやっ」
「かわいい、いい匂いがする」
「抱かれません」
掴まれた腕を振り払って、今歩いてきた道を走って戻っていく。
男が奈都の後を追いかけてきた。
腕を掴まれ、奈都は悲鳴を上げた。
「いやぁー」
悲鳴を上げた体を、強く抱きしめられて、その腕の中でもがく。
水の中で溺れるように暴れる体を、しっかり抱きしめられて、聞き慣れた声が耳元でした。
「奈都、お兄ちゃんだ。どうかしたのか?遅いから迎えに来た」
「響ちゃん」
振り向くと、追いかけてきた男が立ち止まって、じっと奈都を見ていた。
響介の視線も奈都の視線を追いかける。
奈都を見ながら、男は歩き出した。
隣を通り過ぎていく。
「私立城南学園か」
にやりと嗤った顔が、怖かった。
「あの男に何かされたのか?」
涙を拭かれて、響介に抱きついた。
(学校名知られちゃった)
制服を着ているのだから、見ればわかる。
「なんでもない。腕を掴まれて、追いかけられた」
「なんでもなくはないだろう?」
「もう大丈夫。響ちゃん来てくれたし」
何度も深呼吸をして、慣れ親しんだ響介の香りを吸い込んで、体を離した。
「買い物途中で絡まれたのか?」
「ちがう。あ、買い物してない」
スーパーは閉まっていた。
「今日は遅い。何か食べていこう。買い物は明日、一緒について行く。いいな?」
「響ちゃん、ごめん」
「謝らなくていいから」
二人で食事を摂って、帰りにコンビニでお弁当を1個と牛乳と食パンを買って帰って行った。
家に帰ると亜稀が帰っていた。
「ご飯は?」
響介がコンビニ弁当をテーブルの上に置く。
「奈都が襲われかけた。買い物くらい亜稀がしろ」
亜稀の顔色が変わる。
「無事なのか?」
「逃げたし、響ちゃんが来てくれたから」
「だからバイト辞めろって言っただろう」
亜稀の言い方に腹が立った。
奈都は亜稀の顔を見上げた。
「亜稀、今までどこで何してたの?」
「図書館で勉強だよ」
「繁華街の先にあるホテルが図書館だったなんて、初めて知った」
「奈都、後をつけていたのか?」
「たまたま見かけただけ。そのうち女の子に背中刺されるよ」
それだけ言うと、奈都は部屋に戻ってパジャマを持ってお風呂場に行った。
男に触れられた腕が気持ち悪い。
ボディーソープをたっぷりつけて、体を洗って湯船に入る。
亜稀が何をしてようが関係ないはずなのに、悲しくてたまらない。
その日、熱を出した。
翌日のお弁当の下ごしらえをしようとして、台所で倒れてしまった。
響介が寝室に運んでくれて、亜稀が体温計を持ってくる。
体温計の数値を見て、響介がアイスマクラを持ってきてくれる。
「だから言ったのに。奈都はもともと体が弱いのに、無理するから」
亜稀は怒っていた。
「亜稀は黙って部屋に戻りなさい。今夜は僕が奈都を看てるから」
翌日、学校を休んだ。
熱を出していたからか、朝起きてもパンツは濡れてはいなかった。
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