裸足のシンデレラ

綾月百花   

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第十八章

8   花火大会

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 わたしは浴衣を着ると、髪をアップして、かんざしを挿した。

 白色に青い花火が散っている。帯は最初に買ったクリーム色の麻でできた帯だ。

 洒落た飾り結びでお洒落にした。

 彩花には、ピンクの浴衣を着せる。

 子供らしくリボン結びにした。下駄は初めて履くので、転ばないように手を繋いで歩いた方がいいだろう。

 男の子達は甚平なので、小さな子だけ水野さんが着せてくれた。

 初めて部屋以外で見るので、迷子が心配だ。

 部屋に和真さんとティファさんが、迎えに来てくれた。


「彩花、キュートね!」


 彩花の浴衣姿を見たティファさんは、彩花を抱き上げた。

 そうして、振り返った先に、わたしを見つけて、「ミオ、かわいいね!」と言った。

 キュートと可愛いは同じだと思うけれど、ティファさんの中では、どこか違うのかもしれない。

 光輝さんは紺色の浴衣に、クリーム色の帯をしている。

 和真さんは、ダークグレーの浴衣に、白色の帯をしていた。

 ティファさんは、ロイヤルブルーの浴衣に、華やかな牡丹が描かれていた。黄色い帯をしている。

 普通のリボン結びで結ばれていた。


「ミオの帯は、変わった形だな!」

「飾り結びって言うのよ。ティファさんもしてあげましょうか?」

「おう!やってみてくれ」


 ティファさんを連れて、鏡のある部屋に連れて行く。

 帯だけ緩めて、わたしとは違う結び方で華やかにしてみた。



「すごいな!ミオは器用だな!」

「難しくはないから、教えてあげるよ」

「そうか?来年からは教えてくれ!」

「いいわよ」


 リビングに出て行くと、「早く行こう」と子供達が騒いでいる。


「きちんと大人と手を繋ぐこと」

「「「「「はい」」」」」


 ティファさんは人気者で殺到した。

 男の子達がじゃんけんをしている。

 彩花は和真さんと手を繋いでいる。

 この二人は相性がいいのかもしれない。

 ティファさんは輝明がペアになった。

 晴輝は水野さんになり、直輝は宇賀田さんになり、大輝は加羅さんになった。

 わたしは、光輝さんがエスコートをしてくれるそうだ。

 わたしも迷子要員のようだ。

 SPも付いてくる。

 皆で、初めて外から花火を見る。

 思い切って、海岸まで出ると、シートを敷いて座っている人もいた。

 水野さんが手提げからシートを出してくれた。


「どうぞ、お使いください」


 大きな物だったので、使わせてもらう事にした。

 砂浜にシートを敷いて、座っていると、花火が上がり始めた。

 子供達はシートに横になった。

 光輝さんも和真さんも彩花もティファさんまで横になっている。


「美緒も横になれ、真上で花火が見えるぞ」

「うん」


 横になろうとした時に、離れた場所で桜子さんが男性三人と座っていた。

 子供達は横になっているようだ。

 最後の夏になるのかな?と思うと、桜子さんが不憫に思える。

 初めて好きになった相手は、歳の離れた年下の男の子達で、子供を作っても別れなければならない。

 有喜さんと結婚しなければ、彼等とは会わなかったと思うけれど、有喜さんと結婚が桜子さんの運命を大きく変えた。

 妥協せず、有喜さんとの結婚を断り、違う誰かと結婚していたら、幸せな生活が待っていたかもしれない。

 結婚とは人生を大きく変える物だと改めて思った。


「美緒、早く」

「うん」


 わたしは光輝さんの横に、横になった。

 真上で花火が弾けて、吸い込まれそうだ。

 お腹まで響く、花火の音がいろんな雑念を消し去る。

 光輝さんが、わたしの手を繋いできた。

 わたしは、光輝さんの耳元で、「わたしは幸せです」と囁いた。

 微笑んだ光輝さんに、わたしも微笑みを返した。


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