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第四章
5 円城寺の実家、従妹
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お爺さまは、午後からお婆さまの面会に行くと言っていた。
お婆さまの中から、わたしの存在は消えているので、昔の約束が達成できたことは伝えることはできないだろうけれど、光輝さんのお爺さまは、とても喜んでいた。
光輝さんは入籍祝いだからと、またお寿司を食べに連れて行ってくれた。
綺麗で美味しいお寿司を食べて、ホテルに帰ってきた。
「これからは、新婚生活を満喫できる」
「はい」
光輝さんは、部屋に戻るとわたしを抱きしめた。
すっぽり抱きしめられて、照れくさいけれど嬉しい。
「光輝さん、記念に写真を撮りましょう」
「そうだね」
わたしがスマホを取り出すと、光輝さんもジャケットの内ポケットからスマホを取り出した。
美しい景色が見える窓辺に移動して、順番に写真を撮る。
写真を見せ合って、自然に唇が合わさった。
その時、
プルルルルル!プルルルルル!プルルルルル!……
室内の電話が鳴り出した。
リリリリリリリ!リリリリリリリ!リリリリリリリ!……
光輝さんのスマホも鳴り出した。
なんだか既視感を覚える。
唇は離れて、光輝さんは、スマホを見た。見て、通知を切った。
室内の電話に出る。
「円城寺」
『円城寺様、親戚だとおっしゃるお方がお部屋に向かわれました』
「ありがとう」
リリリリリリリ!リリリリリリリ!リリリリリリリ!……
受話器を置くと、またスマホの通知を切った。
「光輝さん、ティファさんですか?」
「いや、違う」
リリリリリリリ!リリリリリリリ!リリリリリリリ!……
「お電話に出てください。わたしはお部屋にいますから」
「いや、いい」
扉がドンドンと叩かれる。
「誰か、来たみたいですね。ティファさんみたい。わたし、出ましょうか?」
「ティファではない」
光輝さんは電話を切ると、扉の方へ歩いて行った。
「静かにしてくれないか?ここはホテルだ」
「それなら、電話に出てくださいな」
(あら、また女性の声がするわ)
「部屋に入れてください」
ドンドンと扉が叩かれ続けている。
「喧しい!」
叩かれる音がやっと止んだ。
扉を開けたのだろうか?
「喧しくしないと扉を開けてくれないでしょう?」
「ここはホテルだ。近所迷惑になるだろう」
「それなら、まず電話に出てくださらない?」
「俺はおまえに用はない」
「冷たいわね、光輝」
部屋に入ってきたのは、和服を着た女性だ。歳はわたしより年上に見える。女性は光輝さんに腕を絡めて、スーツケースを引いていた。
「あら、あなた誰?」
わたしを見た女性は、光輝さんの顔を見上げた。
「俺の妻の美緒だ」
「何ですって?いつ結婚をなさったの?」
「今日だ」
「結婚相手はわたくしのはずでしょう?勝手に入籍をしたの?」
「勝手にはしていない」
女性はスーツケースを手放すと、光輝さんのジャケットを掴んで前後に揺すっている。
「落ち着け、桜子」
「落ちついてなど、いられませんわ。この裏切り、どうしてやりましょう」
平手が光輝さんの頬を打った。
パチンと響く音がした。
わたしは呆然と二人の様子を見るしかなかった。
「酷いわ、わたくしを捨てたのね」
桜子さんは、光輝さんにしがみついて泣きだした。
見ていたくなくて、わたしは自分の部屋に行くことにした。
「待て、美緒」
「……」
(急いで入籍するから、こんなことになるのよ!身辺整理してから口説いてよ!)
わたしは昨夜、荷造りしたばかりの荷物を片付ける事にした。出て行くにもわたしには出て行ける場所がない。
(ティファさんなら匿ってくれそうだけど、アメリカじゃ行けないし……パスポート作っておこうかな?)
「桜子とは結婚の約束はした覚えはないぞ?誤解をさせるような事を言われると、困るだろう」
「わたくしは、昔から心に決めていましたわ。つい、この間まで、あの女性の姿は影すら見たことがありませんわ」
「お見合いしたんだ。それで……」
桜子さんは、グスグス泣いていて、光輝さんは経緯を話している。
(いい男だし、地位も名誉もあって。欠点探す方が難しい……けど、女泣かせね)
実家で使っていた100均の耳栓をして荷物を片付けてしまうと、学校の課題をすることにした。
…………………………*…………………………
トンと肩を叩かれて、わたしは吃驚して跳ね上がった。
部屋は薄暗くなっていた。光輝さんが顔を覗き込んでいた。
わたしは耳栓を抜いた。
「お話はすみましたか?」
「不愉快な思いをさせた」
「まったくね。身辺整理をきちんと行ってから、籍を入れた方が良かったと思うわ。入籍をしたことは、しばらく秘密にした方が良さそうね?それとも離婚届をもらってきましょうか?」
「そんな心配は要らない」
「光輝、早く食事にいたしましょう」
わたしはため息を止めることができなかった。
(まだいるし!)
「桜子は叔母の子で、兄妹のように育ったんだ」
「結婚の約束もされていたみたいね?どうぞ、お二人で食事をされてきたらいかがですか?わたしは耳栓していますから」
耳栓をしようとしたら、手を握られた。
「頼む、信じてくれ。きちんと話をした。一緒に食事をしよう」
仕方なく、わたしは耳栓を置くと、レポートを保存して、ノートパソコンを閉じた。パソコンの電源は落としてはいない。この後もレポートを書いてやろうと思っている。
…………………………*…………………………
「……それでね、明日はお買い物に付き合って欲しいの。光輝はセンスがいいから、……」
桜子さんは、光輝さんの正面に座って、ひたすら話している。
わたしの事は、どうやらいない物と思っているらしい。光輝さんはただ頷いているだけだ。
今日の夕食は特別メニューを頼もうとお寿司を食べながら話していたけれど、今夜の夕食は和食になっていた。
和食が嫌いなわけではないけど、きっと桜子さんの要望で食事が変更になったんだと思った。昨日も和食だったから、変更しなければ、今夜は洋食の日のはずだった。わたしはさっさと食べて席を立った。
先にお風呂に入ってしまおうと思った。
「美緒」
「お先にお風呂に入ってきます」
わたしは軽く会釈して、ダイニングを離れた。会釈したけれど、桜子さんはわたしを見ていなかった。
部屋に入るとため息が漏れる。
下着を持って洗面所に入った。きちんと『美緒 入浴中』の札を出しておいた。
やっと湯船に浸かれるようになったけれど、今夜はシャワーにしようと思った。
(この分だと、しばらく居座りそうね……)
なんとなく寂しい。
話し相手がいない生活など、子供の頃から慣れていたのに、光輝さんと過ごすようになって、わたしの生活は変化していたんだと改めて思う。
寝る支度まですませて洗面所から出ても、桜子さんはまだ光輝さんと話をしていた。
まさにマシンガントークだと思った。
ダイニングテーブルからソファーに移って、テーブルの上にはコーヒーカップが載っている。部屋の中が香ばしいコーヒーの香りに包まれている。
別にコーヒーの香りが嫌いなわけではない。
ただ飲み慣れていないだけだ。
わたしにはコーヒーも紅茶も飲ませてもらえなかった。
紅茶は自販機で紅茶のペットボトルを買って飲むことがあった。
ペットボトルの紅茶と茶葉から淹れられる紅茶は味が違うが、わたしには馴染みがあったから、紅茶を飲んでいるだけだ。
光輝さんが飲んでいるコーヒーを一口飲んだとき、苦さを感じた。
だから、わたしには合わないと思った。舌が慣れていないのだと思う。
わたしは洗面所の札を反対に返えした。札は『ご自由に』に変わった。
昔のように気配を消して、素早く部屋に戻る。
光輝さんが買ってくれた化粧品で肌を整えると、化粧品を片付けて耳栓をした。
これで、何も聞こえない。
ノートパソコンを起ち上げると、部屋の電気を消した。
わたしは実家にいたときは、こうしてわたしの存在を消していた。
受験勉強の時は机のスタンドだけ付けて勉強をしていた。
灯りが廊下に漏れないように襖の上には分厚いカーテンを付けていた。
今はノートパソコンの灯りだけで事が足りる。
今日のわたしは幸せだったような気がするけれど、それは幻を見ていたのかもしれないと思った。
一気に昔に戻ったような気がする。
(集中しよう、集中……)
ひたすらキーボードを叩いて、書き終えると読み返して完成度を上げていく。この分なら明日には提出できそうだ。
…………………………*…………………………
目を覚ますと、わたしはベッドで眠っていた。ノートパソコンは蓋が閉じていた。
(保存した覚えがない)
急いで起きて、パソコンを起ち上げると、作りかけの文章が出てきた。急いで保存をする。
(最後まで書き上げてあった……良かった。後は誤字チェックをして、提出をしよう)
まだ眠くて、ノートパソコンは蓋を閉めると、ベッドに横になった。
耳栓をしたままなので、とても静かだ。
これほどの静寂は、どれくらいぶりだろう。
昔は誰とも話をしなくてもいい世界に憧れた事があった。
もしかしたら、今、願いが叶ったのだろうか?
今は光輝さんと話がしたくしてしたがないのに、こんな時に夢が叶うなんて神様は意地悪だ。
時計を見るとまだ五時だ。
今なら誰にも会わずにすむかな?
わたしは耳栓を外して、部屋を出ることにした。
洗面所に入って朝の支度をすると、冷蔵庫を開けてミネラルウォーターのペットボトルを出し、そのまま部屋に戻った。
室内は静かだ。まだ寝ているのだろう。
外出の予定はないからお化粧はしない。
洋服に着替えて机に向かう。
きちんと提出までしようと思う。
耳栓をして静かな世界を作って、パソコンに向かう。
試験でレポート提出することで単位がもらえる学科もある。
試験まで1週間だから、試験までに提出しなければならないレポートを優先的に完成させよう。
1時間ほどで完成したレポートを教授のアドレスに送ると、ホッと一息付けた。
ペットボトルを開けて、一口飲んで、次のレポートを書き始めた。
トンと肩を叩かれて、吃驚して飛び上がる。
光輝さんが顔を覗き込んでいた。
耳栓を外すと、「おはよう」と声をかけられた。
「きちんと眠ったのか?」
「たぶん眠ったと思う」
「食事にしよう」
「はい」
データーを保存して、ノートパソコンの蓋を閉めると、光輝さんが抱きしめてきた。
けれど、女性の香水の香りがする。
わたしは、胸を押して、その腕から逃げた。
「怒っているのか?」
「女性の香りがする体で、触らないで」
「すまない」
光輝さんは自分のジャケットの香りを嗅いでいる。
わたしは自分から部屋を出て行った。その後から光輝さんが出てきた。
カウンターの奥のミニキッチに桜子さんが立っていた。今日はワンピースを着ていた。
(あのワンピース、わたしの持っている物と同じだわ。彼女がいる間は、同じ物は着ないようにしよう)
買っている場所が同じなら、洋服が被ることもあるのね?
「おはようございます」
「光輝、コーヒーを飲みますか?」
「朝食に付いてきているだろう?」
「あら、本当だ。でも、作ってしまったわ」
わたしの挨拶はスルッと無視して、桜子さんは部屋のマグカップにコーヒーを注いでいる。
「この部屋の物は、全然、お洒落ではないわね」
「ホテルの備品だ。この部屋だけ豪華にする必要は無い」
「光輝は、もっと日常を楽しんだ方がいいわ。娯楽は心を豊かにするのよ」
カップをダイニングテーブルに運んで、当たり前のような顔で光輝さんの席の前に座った。
そこは昔から、彼女の席だったのかもしれない。
わたしは自分の席に座った。
『いただきます』を黙ってして、わたしは朝食を食べ出した。
今日の朝食はまた和食だった。予定では洋食の日だ。和食が嫌いなわけじゃないけれど、なんだかな……と思う。
お味噌汁を一口飲んで、煮物、酢の物、鮭の焼き物、冷や奴……食事は豪華だと思う。
一皿ずつは少ないけれど、いろんなおかずが並べられている。
わたしはいつものようにトマトジュースを飲んだ。
「光輝、トマトジュース嫌いなの。飲んでくださらない?」
「構わないが」
グラスを受け取って、光輝さんはトマトジュースを飲んだ。
わたしはお茶を入れようとした。日本食の時は、ポットにいつも日本茶が入れられてくる。
「わたくしが入れますから、触らないでいただけますか?」
「……」
わたしはポットを置いた。
桜子さんは、並べたカップを二つ持つと、それを持ってミニキッチに行き洗い出した。
(わたしが触った物は汚いと思っているのね?)
「桜子、いい加減にしないか?」
「気になさらないで、汚れが付いていたから洗っただけですわ」
カップを布巾で拭って、テーブルに戻って来た。
ポットから二つのカップにお茶を注いで、一つを光輝さんの前に置いた。
わたしのお茶は入れてくれないのね?
別にいいけど……。
わたしは席を立った。
お茶を飲まなくても、死ぬことはないわ。
「美緒、お茶を飲んでいきなさい」
「ごちそうさま」
光輝さんが急いでわたしのカップにお茶を入れたようだったけれど、もうダイニングテーブルに戻るつもりはない。
わたしは昨夜洗えなかった洗濯物を洗おうと、洗面所の中に入った。
セットして、後は洗い上がるのを待つだけだ。
それから、部屋に戻って耳栓をした。
(ここにいるのが嫌だ)
…………………………*…………………………
時間を見計らって、洗濯物を干しに部屋から出たら、耳を押さえて桜子さんがなんだか喚いていた。
わたしの姿を見ると駆けよって、わたしに指を差した。
「あなた、こんな狭い部屋で洗濯機を回すなんて、常識がないわ。うるさすぎで、頭がクラクラするわ。ホテルの一室で、どこに干すつもりなの?まさかこのリビングルームに干すつもりじゃないでしょうね?」
干す場合は、いつもリビングルームの片隅だ。
「いけませんか?」
「人目に付く場所に干すなんて、常識がないわね。恥ずかしくないのかしら?それに洗濯はメイドの仕事よ。あなたには自尊心はないの?やはりあなたには光輝の妻になる資格はないわね。庶民ならば庶民らしく庶民と結婚しなさい」
「分かりました。今日からわたしの部屋に干します。これでよろしいでしょうか?」
「当たり前よ。わたくしがこの部屋にいる時間に洗濯などしないで欲しいわ。うるさすぎて病気になってしまうわ」
(うるさすぎて、頭がクラクラするのは、わたしも同じよ。少しは黙ったらどうなの?)
わたしはため息をついて、何も答えずに洗濯物を取りに洗面所の中に入った。
「ちょっと無視するんじゃないわよ。生意気な子ね。光輝を誑かして籍を入れるなんて、何が目的なの?どうせお金でしょう?まったく賤しい子だわ。わたくしがお金を恵んで差し上げるから、さっさと別れたらどうなの?」
(ずっと無視していたのだから、そのまま無視をしていてくれていいのに、今度はわたしにマシンガントークなの?光輝さんはどこにいったのかしら?)
洗濯機から洗濯物を取り出して、篭に入れていく。
わたしは部屋に戻ろうと思った。わたしの後を追うように桜子さんは付いてくる。
「こら、無視するんじゃないわよ。下賤な身分の癖に、その体で光輝を堕落させたの?」
「はぁ?わたしは!」
清い身よ!と叫ぶ前に、バタンと音がして、光輝さんが寝室の扉から出てきた。
「――――――それでは、頼む」
どうやら電話をしていたようだ。スマホをジャケットの内ポケットに入れて、近づいてきた。
「桜子、そろそろ帰ってくれ。
俺の生き方に口出しはするな。
俺の妻は美緒だ。
約束通りきちんと桜子の話は、昨日から聞いたはずだ。
もう話すこともないだろう?
洗濯機は俺がこの部屋に入れた。
俺と美緒が快適に暮らせるようにしたんだ。
俺の物も一緒に洗ってもらっている。
干し場もリビングの片隅に置けるようにしてある。
美緒は下賤な女じゃない!
体を売るような女でもない!
文句は俺に言え」
「この魔女に誑かされたのね?」
「美緒は魔女ではない。誑かされたわけでもない」
光輝さんは、きちんとわたしを守る言葉を言ってくれた。けれど、桜子さんは……。
「酷いわ、光輝」
光輝さんに抱きついていった。
「ずっと好きだったの。わたしが好きだったことも気付いていたはずよ。なのに、勝手に籍を入れてしまうなんて。どうしてわたくしが捨てられなくてはならないの?」
光輝さんの胸で、声を出して泣いている。
わたしは部屋に篭を運ぶと簡易の物干しも自室に運んだ。
(桜子さんは、光輝さんが大好きなんだ。いきなり好きな人が入籍したと知ったら辛いだろうな……)
だからと言って、わたしが身を引くのも変だ。わたしも光輝さんが好きだし、光輝さんもわたしを庇ってくれている。
今は信じて待っていよう。
部屋に戻ると耳栓をして、机の横に洗濯物を干し、狭くなった部屋でノートパソコンを開いた。
夕食の時間は中華だった。
どうやらリクエストメニューだったようだ。
桜子さんが大喜びしていた。
テーブルに円卓が置かれて、料理が載せられていた。
初めて見るそれに、わたしは手が出せなかった。
光輝さんが料理を取ってくれる度に、桜子さんは不機嫌になって、わたしを睨みつける。
きっと美味しい物だったと思うけれど、わたしは何を食べたか分からないし、そもそも食べた気がしなかった。
お婆さまの中から、わたしの存在は消えているので、昔の約束が達成できたことは伝えることはできないだろうけれど、光輝さんのお爺さまは、とても喜んでいた。
光輝さんは入籍祝いだからと、またお寿司を食べに連れて行ってくれた。
綺麗で美味しいお寿司を食べて、ホテルに帰ってきた。
「これからは、新婚生活を満喫できる」
「はい」
光輝さんは、部屋に戻るとわたしを抱きしめた。
すっぽり抱きしめられて、照れくさいけれど嬉しい。
「光輝さん、記念に写真を撮りましょう」
「そうだね」
わたしがスマホを取り出すと、光輝さんもジャケットの内ポケットからスマホを取り出した。
美しい景色が見える窓辺に移動して、順番に写真を撮る。
写真を見せ合って、自然に唇が合わさった。
その時、
プルルルルル!プルルルルル!プルルルルル!……
室内の電話が鳴り出した。
リリリリリリリ!リリリリリリリ!リリリリリリリ!……
光輝さんのスマホも鳴り出した。
なんだか既視感を覚える。
唇は離れて、光輝さんは、スマホを見た。見て、通知を切った。
室内の電話に出る。
「円城寺」
『円城寺様、親戚だとおっしゃるお方がお部屋に向かわれました』
「ありがとう」
リリリリリリリ!リリリリリリリ!リリリリリリリ!……
受話器を置くと、またスマホの通知を切った。
「光輝さん、ティファさんですか?」
「いや、違う」
リリリリリリリ!リリリリリリリ!リリリリリリリ!……
「お電話に出てください。わたしはお部屋にいますから」
「いや、いい」
扉がドンドンと叩かれる。
「誰か、来たみたいですね。ティファさんみたい。わたし、出ましょうか?」
「ティファではない」
光輝さんは電話を切ると、扉の方へ歩いて行った。
「静かにしてくれないか?ここはホテルだ」
「それなら、電話に出てくださいな」
(あら、また女性の声がするわ)
「部屋に入れてください」
ドンドンと扉が叩かれ続けている。
「喧しい!」
叩かれる音がやっと止んだ。
扉を開けたのだろうか?
「喧しくしないと扉を開けてくれないでしょう?」
「ここはホテルだ。近所迷惑になるだろう」
「それなら、まず電話に出てくださらない?」
「俺はおまえに用はない」
「冷たいわね、光輝」
部屋に入ってきたのは、和服を着た女性だ。歳はわたしより年上に見える。女性は光輝さんに腕を絡めて、スーツケースを引いていた。
「あら、あなた誰?」
わたしを見た女性は、光輝さんの顔を見上げた。
「俺の妻の美緒だ」
「何ですって?いつ結婚をなさったの?」
「今日だ」
「結婚相手はわたくしのはずでしょう?勝手に入籍をしたの?」
「勝手にはしていない」
女性はスーツケースを手放すと、光輝さんのジャケットを掴んで前後に揺すっている。
「落ち着け、桜子」
「落ちついてなど、いられませんわ。この裏切り、どうしてやりましょう」
平手が光輝さんの頬を打った。
パチンと響く音がした。
わたしは呆然と二人の様子を見るしかなかった。
「酷いわ、わたくしを捨てたのね」
桜子さんは、光輝さんにしがみついて泣きだした。
見ていたくなくて、わたしは自分の部屋に行くことにした。
「待て、美緒」
「……」
(急いで入籍するから、こんなことになるのよ!身辺整理してから口説いてよ!)
わたしは昨夜、荷造りしたばかりの荷物を片付ける事にした。出て行くにもわたしには出て行ける場所がない。
(ティファさんなら匿ってくれそうだけど、アメリカじゃ行けないし……パスポート作っておこうかな?)
「桜子とは結婚の約束はした覚えはないぞ?誤解をさせるような事を言われると、困るだろう」
「わたくしは、昔から心に決めていましたわ。つい、この間まで、あの女性の姿は影すら見たことがありませんわ」
「お見合いしたんだ。それで……」
桜子さんは、グスグス泣いていて、光輝さんは経緯を話している。
(いい男だし、地位も名誉もあって。欠点探す方が難しい……けど、女泣かせね)
実家で使っていた100均の耳栓をして荷物を片付けてしまうと、学校の課題をすることにした。
…………………………*…………………………
トンと肩を叩かれて、わたしは吃驚して跳ね上がった。
部屋は薄暗くなっていた。光輝さんが顔を覗き込んでいた。
わたしは耳栓を抜いた。
「お話はすみましたか?」
「不愉快な思いをさせた」
「まったくね。身辺整理をきちんと行ってから、籍を入れた方が良かったと思うわ。入籍をしたことは、しばらく秘密にした方が良さそうね?それとも離婚届をもらってきましょうか?」
「そんな心配は要らない」
「光輝、早く食事にいたしましょう」
わたしはため息を止めることができなかった。
(まだいるし!)
「桜子は叔母の子で、兄妹のように育ったんだ」
「結婚の約束もされていたみたいね?どうぞ、お二人で食事をされてきたらいかがですか?わたしは耳栓していますから」
耳栓をしようとしたら、手を握られた。
「頼む、信じてくれ。きちんと話をした。一緒に食事をしよう」
仕方なく、わたしは耳栓を置くと、レポートを保存して、ノートパソコンを閉じた。パソコンの電源は落としてはいない。この後もレポートを書いてやろうと思っている。
…………………………*…………………………
「……それでね、明日はお買い物に付き合って欲しいの。光輝はセンスがいいから、……」
桜子さんは、光輝さんの正面に座って、ひたすら話している。
わたしの事は、どうやらいない物と思っているらしい。光輝さんはただ頷いているだけだ。
今日の夕食は特別メニューを頼もうとお寿司を食べながら話していたけれど、今夜の夕食は和食になっていた。
和食が嫌いなわけではないけど、きっと桜子さんの要望で食事が変更になったんだと思った。昨日も和食だったから、変更しなければ、今夜は洋食の日のはずだった。わたしはさっさと食べて席を立った。
先にお風呂に入ってしまおうと思った。
「美緒」
「お先にお風呂に入ってきます」
わたしは軽く会釈して、ダイニングを離れた。会釈したけれど、桜子さんはわたしを見ていなかった。
部屋に入るとため息が漏れる。
下着を持って洗面所に入った。きちんと『美緒 入浴中』の札を出しておいた。
やっと湯船に浸かれるようになったけれど、今夜はシャワーにしようと思った。
(この分だと、しばらく居座りそうね……)
なんとなく寂しい。
話し相手がいない生活など、子供の頃から慣れていたのに、光輝さんと過ごすようになって、わたしの生活は変化していたんだと改めて思う。
寝る支度まですませて洗面所から出ても、桜子さんはまだ光輝さんと話をしていた。
まさにマシンガントークだと思った。
ダイニングテーブルからソファーに移って、テーブルの上にはコーヒーカップが載っている。部屋の中が香ばしいコーヒーの香りに包まれている。
別にコーヒーの香りが嫌いなわけではない。
ただ飲み慣れていないだけだ。
わたしにはコーヒーも紅茶も飲ませてもらえなかった。
紅茶は自販機で紅茶のペットボトルを買って飲むことがあった。
ペットボトルの紅茶と茶葉から淹れられる紅茶は味が違うが、わたしには馴染みがあったから、紅茶を飲んでいるだけだ。
光輝さんが飲んでいるコーヒーを一口飲んだとき、苦さを感じた。
だから、わたしには合わないと思った。舌が慣れていないのだと思う。
わたしは洗面所の札を反対に返えした。札は『ご自由に』に変わった。
昔のように気配を消して、素早く部屋に戻る。
光輝さんが買ってくれた化粧品で肌を整えると、化粧品を片付けて耳栓をした。
これで、何も聞こえない。
ノートパソコンを起ち上げると、部屋の電気を消した。
わたしは実家にいたときは、こうしてわたしの存在を消していた。
受験勉強の時は机のスタンドだけ付けて勉強をしていた。
灯りが廊下に漏れないように襖の上には分厚いカーテンを付けていた。
今はノートパソコンの灯りだけで事が足りる。
今日のわたしは幸せだったような気がするけれど、それは幻を見ていたのかもしれないと思った。
一気に昔に戻ったような気がする。
(集中しよう、集中……)
ひたすらキーボードを叩いて、書き終えると読み返して完成度を上げていく。この分なら明日には提出できそうだ。
…………………………*…………………………
目を覚ますと、わたしはベッドで眠っていた。ノートパソコンは蓋が閉じていた。
(保存した覚えがない)
急いで起きて、パソコンを起ち上げると、作りかけの文章が出てきた。急いで保存をする。
(最後まで書き上げてあった……良かった。後は誤字チェックをして、提出をしよう)
まだ眠くて、ノートパソコンは蓋を閉めると、ベッドに横になった。
耳栓をしたままなので、とても静かだ。
これほどの静寂は、どれくらいぶりだろう。
昔は誰とも話をしなくてもいい世界に憧れた事があった。
もしかしたら、今、願いが叶ったのだろうか?
今は光輝さんと話がしたくしてしたがないのに、こんな時に夢が叶うなんて神様は意地悪だ。
時計を見るとまだ五時だ。
今なら誰にも会わずにすむかな?
わたしは耳栓を外して、部屋を出ることにした。
洗面所に入って朝の支度をすると、冷蔵庫を開けてミネラルウォーターのペットボトルを出し、そのまま部屋に戻った。
室内は静かだ。まだ寝ているのだろう。
外出の予定はないからお化粧はしない。
洋服に着替えて机に向かう。
きちんと提出までしようと思う。
耳栓をして静かな世界を作って、パソコンに向かう。
試験でレポート提出することで単位がもらえる学科もある。
試験まで1週間だから、試験までに提出しなければならないレポートを優先的に完成させよう。
1時間ほどで完成したレポートを教授のアドレスに送ると、ホッと一息付けた。
ペットボトルを開けて、一口飲んで、次のレポートを書き始めた。
トンと肩を叩かれて、吃驚して飛び上がる。
光輝さんが顔を覗き込んでいた。
耳栓を外すと、「おはよう」と声をかけられた。
「きちんと眠ったのか?」
「たぶん眠ったと思う」
「食事にしよう」
「はい」
データーを保存して、ノートパソコンの蓋を閉めると、光輝さんが抱きしめてきた。
けれど、女性の香水の香りがする。
わたしは、胸を押して、その腕から逃げた。
「怒っているのか?」
「女性の香りがする体で、触らないで」
「すまない」
光輝さんは自分のジャケットの香りを嗅いでいる。
わたしは自分から部屋を出て行った。その後から光輝さんが出てきた。
カウンターの奥のミニキッチに桜子さんが立っていた。今日はワンピースを着ていた。
(あのワンピース、わたしの持っている物と同じだわ。彼女がいる間は、同じ物は着ないようにしよう)
買っている場所が同じなら、洋服が被ることもあるのね?
「おはようございます」
「光輝、コーヒーを飲みますか?」
「朝食に付いてきているだろう?」
「あら、本当だ。でも、作ってしまったわ」
わたしの挨拶はスルッと無視して、桜子さんは部屋のマグカップにコーヒーを注いでいる。
「この部屋の物は、全然、お洒落ではないわね」
「ホテルの備品だ。この部屋だけ豪華にする必要は無い」
「光輝は、もっと日常を楽しんだ方がいいわ。娯楽は心を豊かにするのよ」
カップをダイニングテーブルに運んで、当たり前のような顔で光輝さんの席の前に座った。
そこは昔から、彼女の席だったのかもしれない。
わたしは自分の席に座った。
『いただきます』を黙ってして、わたしは朝食を食べ出した。
今日の朝食はまた和食だった。予定では洋食の日だ。和食が嫌いなわけじゃないけれど、なんだかな……と思う。
お味噌汁を一口飲んで、煮物、酢の物、鮭の焼き物、冷や奴……食事は豪華だと思う。
一皿ずつは少ないけれど、いろんなおかずが並べられている。
わたしはいつものようにトマトジュースを飲んだ。
「光輝、トマトジュース嫌いなの。飲んでくださらない?」
「構わないが」
グラスを受け取って、光輝さんはトマトジュースを飲んだ。
わたしはお茶を入れようとした。日本食の時は、ポットにいつも日本茶が入れられてくる。
「わたくしが入れますから、触らないでいただけますか?」
「……」
わたしはポットを置いた。
桜子さんは、並べたカップを二つ持つと、それを持ってミニキッチに行き洗い出した。
(わたしが触った物は汚いと思っているのね?)
「桜子、いい加減にしないか?」
「気になさらないで、汚れが付いていたから洗っただけですわ」
カップを布巾で拭って、テーブルに戻って来た。
ポットから二つのカップにお茶を注いで、一つを光輝さんの前に置いた。
わたしのお茶は入れてくれないのね?
別にいいけど……。
わたしは席を立った。
お茶を飲まなくても、死ぬことはないわ。
「美緒、お茶を飲んでいきなさい」
「ごちそうさま」
光輝さんが急いでわたしのカップにお茶を入れたようだったけれど、もうダイニングテーブルに戻るつもりはない。
わたしは昨夜洗えなかった洗濯物を洗おうと、洗面所の中に入った。
セットして、後は洗い上がるのを待つだけだ。
それから、部屋に戻って耳栓をした。
(ここにいるのが嫌だ)
…………………………*…………………………
時間を見計らって、洗濯物を干しに部屋から出たら、耳を押さえて桜子さんがなんだか喚いていた。
わたしの姿を見ると駆けよって、わたしに指を差した。
「あなた、こんな狭い部屋で洗濯機を回すなんて、常識がないわ。うるさすぎで、頭がクラクラするわ。ホテルの一室で、どこに干すつもりなの?まさかこのリビングルームに干すつもりじゃないでしょうね?」
干す場合は、いつもリビングルームの片隅だ。
「いけませんか?」
「人目に付く場所に干すなんて、常識がないわね。恥ずかしくないのかしら?それに洗濯はメイドの仕事よ。あなたには自尊心はないの?やはりあなたには光輝の妻になる資格はないわね。庶民ならば庶民らしく庶民と結婚しなさい」
「分かりました。今日からわたしの部屋に干します。これでよろしいでしょうか?」
「当たり前よ。わたくしがこの部屋にいる時間に洗濯などしないで欲しいわ。うるさすぎて病気になってしまうわ」
(うるさすぎて、頭がクラクラするのは、わたしも同じよ。少しは黙ったらどうなの?)
わたしはため息をついて、何も答えずに洗濯物を取りに洗面所の中に入った。
「ちょっと無視するんじゃないわよ。生意気な子ね。光輝を誑かして籍を入れるなんて、何が目的なの?どうせお金でしょう?まったく賤しい子だわ。わたくしがお金を恵んで差し上げるから、さっさと別れたらどうなの?」
(ずっと無視していたのだから、そのまま無視をしていてくれていいのに、今度はわたしにマシンガントークなの?光輝さんはどこにいったのかしら?)
洗濯機から洗濯物を取り出して、篭に入れていく。
わたしは部屋に戻ろうと思った。わたしの後を追うように桜子さんは付いてくる。
「こら、無視するんじゃないわよ。下賤な身分の癖に、その体で光輝を堕落させたの?」
「はぁ?わたしは!」
清い身よ!と叫ぶ前に、バタンと音がして、光輝さんが寝室の扉から出てきた。
「――――――それでは、頼む」
どうやら電話をしていたようだ。スマホをジャケットの内ポケットに入れて、近づいてきた。
「桜子、そろそろ帰ってくれ。
俺の生き方に口出しはするな。
俺の妻は美緒だ。
約束通りきちんと桜子の話は、昨日から聞いたはずだ。
もう話すこともないだろう?
洗濯機は俺がこの部屋に入れた。
俺と美緒が快適に暮らせるようにしたんだ。
俺の物も一緒に洗ってもらっている。
干し場もリビングの片隅に置けるようにしてある。
美緒は下賤な女じゃない!
体を売るような女でもない!
文句は俺に言え」
「この魔女に誑かされたのね?」
「美緒は魔女ではない。誑かされたわけでもない」
光輝さんは、きちんとわたしを守る言葉を言ってくれた。けれど、桜子さんは……。
「酷いわ、光輝」
光輝さんに抱きついていった。
「ずっと好きだったの。わたしが好きだったことも気付いていたはずよ。なのに、勝手に籍を入れてしまうなんて。どうしてわたくしが捨てられなくてはならないの?」
光輝さんの胸で、声を出して泣いている。
わたしは部屋に篭を運ぶと簡易の物干しも自室に運んだ。
(桜子さんは、光輝さんが大好きなんだ。いきなり好きな人が入籍したと知ったら辛いだろうな……)
だからと言って、わたしが身を引くのも変だ。わたしも光輝さんが好きだし、光輝さんもわたしを庇ってくれている。
今は信じて待っていよう。
部屋に戻ると耳栓をして、机の横に洗濯物を干し、狭くなった部屋でノートパソコンを開いた。
夕食の時間は中華だった。
どうやらリクエストメニューだったようだ。
桜子さんが大喜びしていた。
テーブルに円卓が置かれて、料理が載せられていた。
初めて見るそれに、わたしは手が出せなかった。
光輝さんが料理を取ってくれる度に、桜子さんは不機嫌になって、わたしを睨みつける。
きっと美味しい物だったと思うけれど、わたしは何を食べたか分からないし、そもそも食べた気がしなかった。
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