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4 御曹司は玩具に夢中です
1 本社の秘書課で研修
しおりを挟む亜梨子は研究所から本社の秘書課に研修に来ている。
最初にピンク部に案内してくれた青山部長が、ピンク部の秘書課を兼任しているらしい。
「女の子に任せてもいいんだけど、今時はセクハラで訴えられそうでね」
「はい」
青山部長の隣に椅子を並べて、亜梨子は座っている。
秘書課の女性たちの目が怖い。
青山部長は、まだ若く、三十代くらいだ。
薬指を見ると、指輪はされていない。独身なのかもしれない。
(なるほど、皆さんは私に焼き餅を焼いていらっしゃる?)
刺さるような視線を全身に受けて、亜梨子はゲンナリする。
青山部長も誉とほどではないが、整った顔をして、優しい。
きっとモテるのだろう。
さっさと仕事を覚えて、ピンク部に戻らなければ、秘書課で一悶着起きそうだ。
「仕事は簡単だよ。注文されてきた物を配送部に送り、レビューがきたら、ホームページに匿名で載せて、満足度を計算されて載せるだけ。あと購入時のメールに案内が欲しいかどうかのチェックをするところがあるんだが、案内が欲しいというお客に新製品が出る度に、メールで案内を送るだけ。でも、ほとんど極秘で購入しているから、新商品の案内が欲しいと印をつけてく人は少ない。ピンク部のHPの更新も仕事だ。綺麗に写真を撮ってホームページに貼り付けて、どんな商品か案内を書いていくだけだ」
「はい」
「ホームページは作ったことはあるかな?」
「大学で勉強してきました」
「それなら、君の好きなように作り直してみてもいいだろう」
「勝手に触ってもいいのですか?」
亜梨子と青山部長は小声で話している。
「購入者はほとんど女性だ。女性目線で作り直し、コメントも入れてやったらよりわかりやすいだろう」
「コメント・・・」
亜梨子は顔を赤らめた。
青山部長は、亜梨子が検体になっていることを知っているのだろう。
(恥ずかしい)
「もうすぐ新商品も出るから、男性の顧客も増えるだろう。購入者は極秘だ。厳重にしてくれ」
「わかりました」
亜梨子は頭を下げた。
「それじゃ、試しに今日の注文の品を配送部に送ってくれるか?」
「はい」
青山部長は椅子を滑らせ、自分のデスクを亜梨子にわたした。
秘書課の女性が、青山部長に近づき、確認作業をしながら、青山部長のデスクをちらちと見る。ホームページは開いてなかったので、いかがわしい写真には見られずに済んだ。
「お昼、手の空いた者から行ってくれよ」
「はーい」
秘書課の女性たちが出て行く。
「青山部長はおいでにならないんですか?」
「牧野君の作業が終わったら行くよ」
秘書課の女性たちは不満げな顔をして部屋を出て行った。
「できました」
「どれどれ」
青山部長の顔が近くなる。
残っていた秘書課の女性が、じっと見ている。
(ここは居心地が悪い)
「うん、できているね。一人でできそう?」
「はい」
「覚えが早くて助かるよ」
青山部長は亜梨子の頭をポンポンと撫でた。
「わからなくなったら、いつでも聞きにおいで」
「お願いします」
亜梨子は頭を下げた。
「それでは牧野君も食事行くか?あまり遅いと食べるものがなくなってしまうぞ」
「はい」
「青山部長、私も手が空きましたので、一緒によろしいでしょうか?」
「もちろんいいとも」
杉浦あかねと書かれたネームプレートには、黒文字で秘書課と書かれていた。
亜梨子は自分のネームプレートを見ると、秘書課の文字がピンク色になっている。
本社と区別されているのかと初めて気付いた。
亜梨子は普段着だが、本社の秘書課は、黒色のスーツ姿だ。
「ピンク部は緩いのね。普段着でお客様のお相手をなさるの?」
「研究所なので、あまりお客様はいらっしゃいません」
「暇そうでいいわね」
「こらこら、杉浦君、牧野君を虐めてはいかん。副社長の命令に従っているだけだからね」
「わかりました。ごめんなさい」
杉浦は、すぐに亜梨子に頭を下げた。
頭を下げたが、目つきが睨んでいる。
(早く、ピンク部に戻ろう)
食堂でもずっと見られて、亜梨子だけ無料なのに気付いて、杉浦はまた亜梨子を睨んだ。
その日のお昼は、お皿にあまり取れなくて、少しも食べた気がしなかった。
亜梨子は午後からピンク部の亜梨子の部屋で、パソコンに向かっていた。
ノートパソコンを亜梨子用に与えられた。
久しぶりの事務仕事は楽しい。
自由にホームページを作り直してもいいと言われたので、試しに作りだした。
扱っている物は大人の玩具だが、商品だ。
売れなければ、収益にならない。
売り場がホームページなら、もっと詳しく書いてもいいだろう。
倉庫に行って、実際の商品を持ってきて、サイズを計ったり、イメージも乗せて宣伝する。
「亜梨子帰宅時間だよ」
「はい」
「何を熱心にやっているんだ?」
「ホームページを作ってみようかと思って、試しに作っているんです」
「どれどれ?」
誉は亜梨子の机に置かれたノートパソコンを覗き込む。
「可愛い感じになったね」
「ありがとうございます」
「もうすぐ新商品が出るから、その商品ができあがったら、大きく宣伝してくれ」
「わかりました」
亜梨子は作りかけホームページを保存すると、ノートパソコンの電源を落とした。
「さあ、帰るぞ」
「お疲れ様です」
誉が嬉しそうに微笑む。
二人で誉のマンションに帰る。
一緒のベッドで眠り、毎晩抱き合っている。
後孔ではなく、きちんと女の子の場所を愛してくれる。
悶々はなくなった。
愛される喜びを知って、とても幸せだ
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