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1 社長の御曹司に迫られています
7 同居?それとも同棲?
しおりを挟むキャッシュカードを持っていたことから銀行に寄って通帳の再発行をしてもらえた。頭の回転が落ちている亜梨子に代わって、誉が再発行に必要な物を揃えてくれた。
家が全焼し、すべてを失った亜梨子に下着や服も買ってくれた。
女性店員に教えてもらったのだと笑いながら、亜梨子を化粧品売り場に連れ行き、使ったこともない高価な化粧品を揃えてくれた。シャンプーやリンス、トリートメントまで揃えてくれて、忘れがちな櫛まで買ってくれた。
今まで持っていた物よりすべて豪華だ。
「働いて、お返しします」
「返す必要はないけど、僕と結婚したら、返す心配もしなくていいよ」
「それはできません」
社長の御曹司で、ピンク部の社長だ。身分が違いすぎる。
誉が選んだランジェリーも洋服も、亜梨子が今まで身につけたことのないほど、肌触りも良く、可愛らしいが、値段が可愛くない。
貧乏人の亜梨子には、手が出せない部類の下着や洋服だ。
お店で美しいワンピースに着替えると、そのまま夕食を食べに連れて行ってくれた。
入ったこともない、ホテルのレストランで食事を摂った。
フランス料理という名前しか知らない、フランス料理のフルコースを食べさせてもらった。
食べ方は、誉の真似をした。
見たことのない食べ物は、キラキラして見えた。
実際、盛り付けも美しく、味も美味しい。
車の運転をしている誉はワインを頼まなかったが、亜梨子にはグラスワインを頼んでくれた。
初めて飲むお酒も美味しくて、ほんのりと酔った。
天中殺かと思える一日の終わりは、天国に連れて行かれたような気持ちよさだった。
帰りの車の中で、亜梨子は自分にできることを考えた。
「家事は私がします」
「頼むよ」
「はい」
できることを探したら、家のことをすること以外に浮かばなかった。
連れてこられたのはマンションだった。
すぐに管理人に顔認証をしてもらい。セキュリティーの厳しいマンショの扉が開くようにしてもらった。部屋の玄関は鍵を持っていれば入れるタイプで、入り口のボタンを押すだけだ。
家に入ると、広い玄関があり真っ直ぐ廊下が続いていた。
「どうぞ」
「お邪魔します」
「明日からは、ただいまだよ」
「はい」
買ってきた洋服や下着、バックや靴は、いっぱいの紙袋に入れられている。それを誉が持っている。
「亜梨子、右側の扉を開けて」
「はい」
言われた部屋を開けると10畳くらいの部屋だった。
がらんとした空き部屋だ。
誉は、その部屋に荷物を全部下ろした。
「この部屋を使ってもいいよ」
「お借りします」
亜梨子は深く頭を下げた。
「家の中を案内するよ。隣の部屋が僕の部屋だ」
開けられた部屋には大きなベッドと小さなテーブルが置かれて、間接照明で天井に灯りが映り込んでいる。
部屋の大きさは軽く20畳ほどありそうだ。広くて、落ち着いた色合いだ。
「全灯したいときは、上のスイッチね。僕は間接照明の方が落ち着くから、いつもこんな感じ」
「はい」
「トイレとお風呂は反対側の扉ね」
扉を開けて、見せてくれる。
「お風呂、露天風呂みたい。外の景色が見えるんですね」
「高層マンションだから覗かれないと思うけど、気になるならスクリーンをつけようか?」
「いいえ。夜景が綺麗なので、このままで構いません」
トイレも綺麗にされている。
(几帳面なのかな?)
チリや埃も見当たらない。
亜梨子は床やトイレの棚をじっと見ていた。
家のことをすると言ったが、あまりにも綺麗にされている。
「週に二度、家政婦が来て掃除をしていってくれる」
亜梨子の視線に気付いたのか、誉が教えてくれた。
なるほど。それでこんなに綺麗なのか。
正面の扉を開けると対面式のキッチンと大きなダイニングテーブルが置かれ、続きになっているリビングには、大きなテレビとL字型のソファーと飾り棚があった。
「広いですね」
飾り棚の中には、お洒落なグラスやガラス製品が飾られていた。
清潔感のある綺麗な部屋だ。
変な人だと思っていたが、部屋を見る限り、いかがわしい物は置いていないし、むしろあまり生活感は感じられない。
キッチンは使われてないようで、お鍋も炊飯器もない。
あるのはコーヒーメーカーくらいだ。
「あの、炊飯器とかお鍋はないのですか?」
「家で食べたことがないんだ。研究所にいることが多いからね。たまに眠りに帰るくらいかな」
「そうなんですか?」
「炊飯器とお鍋か。食料も買いに行くか?」
時計を見ると、夜の9時過ぎだ。
お店は閉まっている。
「朝食はいつもどうなさっているんですか?」
「マンションの1階に喫茶室のあるパン屋が入っているから、そこで食べて出勤している」
「一人だとその方が安上がりですね」
「まあ、そうだね」
やはりやることはない。
(居候かな?イヤだな、そういうの)
亜梨子は項垂れた。
貧乏性の亜梨子は、何か役目がないと落ち着けない。
「今夜は遅いので、明日の朝は1階のパン屋に連れて行ってください」
亜梨子は深く頭を下げた。
(部屋に戻ろうかな。やることがないなら)
「あの」
「そうだ。ネットショッピングしようか?」
部屋にいますという前に、明るい声を出した誉の手が亜梨子の手を握って、リビングの奥に連れていく。
いかがわしい仕事をさせられたが、一貫して誉は亜梨子に対して優しい。
明るい笑顔に、亜梨子の沈んだ気持ちが引き上げられる。
(本物の王子様みたい)
今日はいろいろ助けてもらった。
貯金通帳も手元に戻ってきたし、生活できるようにいろんな物を買ってもらった。
一人だったら、途方に暮れたまま何もできなかっただろう。
いてくれて良かった。
助けてくれる人が、一人でもいてくれて良かった。
「ソファーに座って」
「はい」
ソファーに座ると、ノートパソコンを持った誉が、亜梨子のすぐ横に座った。
「炊飯器だったね」
検索して人気順に出してくれた。
「こんなに高いんだ」
亜梨子は今まで千代さんの家の炊飯器を使っていたので、値段は知らなかった。
買って欲しいとは言えなくなってしまった。
「どれがいい?」
「私には買えません」
「それなら僕が選ぼう」
誉は口コミや情報から選んでいく。
「お鍋だったね」
検索して、取っ手の取れるフライパンもついた3点セットを選んで、フライパン返しもついでに入れてくれる。
「ネットで買い物って簡単なんですね」
「検索したことはないの?」
「講義の資料なんかは、学校で検索していましたけど、私、個人でパソコンを持っていなかったので、学校でしか資料作りもできなくて。課題は全部学校でしていました」
「不便だっただろう?」
太股と太股が触れて、なんだか恥ずかしい。
ノートパソコンは、亜梨子と誉の片足の上に跨がるように乗っているので、動くわけにはいかなくて、亜梨子は整った顔立ちの誉に見られる度にドキドキしていた。
(酔ってるからかな?でも、ハンサムだよね)
「私の両親は私が高校一年の時、事故で亡くなりました。自損事故だったので、保険金もほとんど下りなくて、両親が残した貯金とバイトをして大学に入ったんです。両親が大学は出ておきなさいって言っていたので。家はあったんですが、父が経営していた会社がすぐに潰れてしまって、社員の人に退職金を払うために、家も売ってしまったんです。それで、千代さんの家を低賃金で借りていたんです。パソコンを買う余裕は、私にはなかったんです。スマホの維持がギリギリでした。今、スマホがないと就活もまともにできないので。就職できてホッとしていたのに・・・」
午前中の実験のことを思い出して、気が滅入ってきてしまった。
「うちで稼げばいいんじゃないか?亜梨子の仕事は、頑張った分だけ歩合制で上がっていくよ」
「体を売るんですよね?」
「うちは風俗じゃないよ。れっきとした会社で、務めているのは研究所だ」
誉は自社のホームページを開いて、ピンク部のネット販売を出した。
「うちが売っている商品だ」
ノートパソコンをしっかり見るとALICE大人の玩具と書かれていた。
商品が人気順にならんでいる。
昼間見せてもらった男性器のような物から変な形の物。使い方がわからない物まで、綺麗な写真で、何方向から撮影されて載っている。色はピンクが多い。濃いピンクからスケルトン、まるでガラスのように見える物まである。
「子供向けのホームページとは別で作ってある。個人情報は極秘だ。満たされていても満たされていなくても欲しくなる物なんだよ。気軽に買えるようにレビューも人気度も目で見てわかるようになっている。客が評価をするんだ。客に喜んで使ってもらえるために、研究が必要なんだよ。亜梨子がする仕事は、このホームページを見に来て、購入してくれる人の役に立つ。立派な仕事だ。誰にでもできることじゃない」
「なんで私なんですか?」
「僕好みなんだよ。その小さな体も、顔も、胸も。僕の理想のタイプなんだ」
「はあ」
「初めて見た時にスカウトするつもりだった。リクルートスーツを着ていたからね」
「研究材料になると思ったんですか?」
「そうとも思ったが、亜梨子自身に興味があった。僕と付き合わないか?」
「はぁ?」
今、告白されたような気がするが、気のせいだろうか?
「僕のことは嫌いか?」
「突然言われたって、なんて返事をしたらいいのかわかりません」
パソコンを亜梨子に持たせて、誉は抱きしめてくる。
「この抱き心地の良さ。やっぱり最高だ」
包みこまれるように初めて抱きしめられて、頬が熱くなる。
「社長、私、酔ってるみたいです」
「社長じゃなくて、誉だ」
「誉さん」
呼んでみたら、なかなか良い響きだ。
誉は亜梨子の膝の上からノートパソコンを持ち上げると、センターテーブルにパソコンを置いて、亜梨子をまた抱きしめた。
「一目惚れだよ」
瞳と瞳が合わさり、ふわりとキスをされて、亜梨子は目を瞬かせる。
ファーストキスだ。
そのままソファーに押し倒されて、また唇が触れた。
啄むようなキスを繰り返しながら、ワンピースの上から胸を揉まれる。
「んんんっ」
キスが深まり、誉の舌が、亜梨子の舌に絡みつく。
(待って、待って、ああああん)
胸の先端を摘ままれて、お腹の奥がキュンと疼いた。
今日初めて知った快感が呼び覚まされて、体の奥に欲しくなる。
誉の手がスカートの中に入ってきて、パンティーの上から会陰に触れる。
「濡れてるね、感じる?」
亜梨子は頷いた。
「欲しくなってきただろう?」
亜梨子は慌てて首を横に振ったが、誉が言うように、もっと奥に欲しい。
誉は、ニコッと魅力的な笑みを浮かべると、亜梨子のパンティーをずらして、膣に指を入れてきた。たった一本の指が、体内を探る。
「あああ、だめ」
「亜梨子、すごくエッチな顔をしてるよ」
「誉さん、やめて」
ワンピースはたくし上げられ、ブラジャーもずらされて、片手が胸を揉み、乳首は吸われる。
抜き差しされる指が、もどかしい。
もっと激しく。もっと奥まで欲しい。
亜梨子は、指が抜けないように、下腹部に力を入れる。
「可愛いな。挿入したくなるよ」
すっと指を抜かれて、物足りなさに誉を見つめる。
(もっと続きをしてみたい)
「物欲しそうに見て。もっと欲しくなったんだろう?」
「抱かれるなら、誉さんがいいです」
「もう少し、お預けだ」
挿入していた指が、小さな突起に触れて、こねる。
「いやっ」
「ここも感じるだろう?クリトリス、クリ責めだ」
今度はもう片方の胸を揉みながら、感じる小さな突起を指先で摘まむ。
「あああん」
腰をくねらせ、亜梨子は悲鳴を上げる。
誉は亜梨子から手を外すと、自身のベルトを緩めて、勃起した性器を出した。
始めて見る男性器に、亜梨子は目が離せなくなる。
とても大きい。こんなものが入るのだろうか?
「入れるの?」
「まだ入れられない」
亜梨子の胸を両手で挟み込むようにすると、誉は二つの胸の間に、勃起した性器を入れて、激しく腰を前後に振った。胸と胸の間を通って、何度も先端が顔を出す。だんだん激しくなってきて、ピチャッと顔にしぶきが飛んできた。亜梨子の顔と胸は精液で濡れた。
「なんて愛らしいんだろう」
また口づけされた。お腹の中がキュンとするほど寂しく感じた。
誉は亜梨子の顔と胸に放った精液をティッシュで拭うと手を引いて、亜梨子を起こした。
「お風呂に入っておいで」
「先にお借りしていいんですか?」
「僕が亜梨子を汚してしまったから、綺麗にしておいで」
「先にお借りします」
「亜梨子、敬語はいらないよ。僕たちは夫婦になるんだから」
「私、まだ返事はしていません」
「僕が決めたんだ。抱きしめて確信した。亜梨子以外考えられない」
返事ができずにいる亜梨子の手を引いて、風呂場に連れて行く。
「パジャマと下着を持ってきます」
「行っておいで」
部屋に入って、紙袋の中から新しいパジャマと下着とお風呂セットを持ってくる。
洗面所に入ると、誉は歯ブラシを出してくれていた。
「これを使って」
パッケージの中に入ったまま洗面台の上に置く。
「タオルはこの棚の引き出しに入ってるよ」
「はい」
ワンピースは誉の精液で汚れてしまったので、洗わないと。
洗面所に洗濯機はあった。
「洗濯の洗剤はありますか?」
「ここにあるよ」
洗面台の引き出しを開けて、見せてくれる。
「誉さんがお風呂に入ったら、洗濯します」
誉が嬉しそうに微笑んだ。
(あっ、すごく美形。きっとすごくモテるんだろうな)
「早く、入っておいで」
「はい、誉さん」
亜梨子は深く頭を下げた。
誉が洗面所から出て行く。
(爽やかだな。かっこいい)
初めて着るネグリジェを着て、誉の洋服を洗い、室内干し用のスペースに洋服を干していると、背後から髪を掴まれた。
「もうすぐ終わります」
背が低いので高い場所に干すのは大変だ。
次から、ダイニングの椅子を持ってこよう。
「髪が濡れてるね」
「ドライヤーが見当たらなかったので」
「ドライヤーか。壊れてから買ってないな」
「自然乾燥します」
ハンガーを掛けようとして、なかなか届かない。
(あと10㎝。いやいや20㎝身長が欲しい)
飛び上がるようにしてかけようとしている亜梨子からハンガーを取ると、誉がハンガーをかけてくれた。
「ありがとうございます」
「ここの干し場も、高さ調節ができる物に交換しよう」
「明日からは、椅子を使わせてもらいます」
亜梨子はにっこり笑う。
この家は居心地がいい。
千代さんと住んでいたときも住み心地は良かったが、男性と一緒に住むことに躊躇いを持っていたが、優しい気持ちでいられる。
「これで終わりだね?」
「はい」
「それじゃ、こっちにおいで」
「なんでしょう?」
「そろそろ眠ろう。明日も早い」
「はい。おやすみなさい」
亜梨子はあてがわれた部屋に行こうとして、手を握られた。
「寝室はこっち」
誉は、亜里砂の手を引き、誉の部屋に入っていく。
広い部屋に、大きなベッドが鎮座している。
「とんでもないです」
「亜梨子の部屋にはベッドはないだろう?」
「床で眠りますから」
「僕の家で、そんな寝かせ方はできないよ」
「さあ、おいで」
まるで人形を持ち上げるように脇に手を入れると、誉は亜梨子を軽々持ち上げる。
そのままベッドの上に載せられた。
「布団に入ってね。風邪を引くから」
誉は亜梨子の横に、横たわった。
「ほら、おいで」
布団を捲られて、布団に入っていった。
「お邪魔します」
「今日から僕の抱き枕だ」
誉の手が亜梨子の体を抱き寄せる。
「落ち着くよ、やっぱり」
「私は落ち着きません」
「ドキドキしてるね」
「心臓の音、聞かないでください」
亜梨子の体をもっと抱きしめて、誉は自分の心臓の音が聞こえるように引き寄せた。
「僕もドキドキしてるよ」
「ほんとうだ」
亜梨子と同じくらい心臓はドキドキしていた。
「好きな子を抱きしめてドキドキしないわけがない」
「本気で好きなの?」
「研究をやめて、このまま抱いてしまいたいくらい好きだよ」
告白をされたのは初めてではないが、こんなにドキドキしたことは初めてだ。
亜梨子は顔が熱くなる。
誉の心臓の音を聞きながら、亜梨子は頷いた。
「私もたぶん好きです」
「たぶんは余分だな」
誉が亜梨子を抱きしめながら、笑った。
亜梨子の顔に笑みが浮かんでいた。
こんなに優しく抱きしめられたのは、両親を除いて、初めてだ。
誉の心音を聞きながら、亜梨子は目を閉じた。
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