167 / 181
オブシディアン領で労働中
報告とコレットの教育
しおりを挟む
ルーゼウスからの連絡には、即答で買い戻せと命令を出しておいた。
元々買い戻すのが目的だからそれは良い。
問題は、その後のことだ。
一度奴隷落ちしたら、平民に戻るのは難しい。
前例が殆どないと言っても差支えないだろう。
戻れたとしても一生『元奴隷』というレッテルを貼られるのだから溜まったものじゃない。
奴隷に関する法整備をしないことには、根本的な問題は解決しないだろう。
なので、その辺りのことはパパンに丸投げしておいた。
専門家ほどではなくとも、広く浅く法律のことを知っておかなければならない。
領主って本当に頭が良くないと出来ない仕事だと今更ながらに痛感した。
前世の記憶頼りで内政チートもどきで奮闘しているが、ぶっちゃけ上手く行っているのかどうか分からない。
問題を片付けても、ゴキブリのようにドンドン増えて手元に戻ってくる。
テープライターで書き起こした報告書をシルフに渡して、パパンと王妃に届けるようお使いを頼んだ。
返信がくるまでは、暫く待機だ。
最速で今日中の返信か、それとも話し合いをして数日待つのか。
そこは、パパンと王妃の采配によるだろう。
私が小休憩をしている頃、コレットはフリックの鬼畜な課題を課せられていた。
「お嬢様の恩情で首と胴が繋がっていることを一生感謝して生きなさい。私は、貴女に対して麦一粒の欠片も期待はしておりません。ですが、結果を残さねば私の恥になります。よって、最低限使えるくらいには鍛えて差し上げます」
コレットの再教育を命じられたフリックは、初っ端からコレットを全否定していた。
「……はい」
下手に反論したり、反抗したりしようものなら物理的な教育的指導が飛んでくる。
顔を狙わない辺りが、陰湿さを感じる。
「返事に覇気がありません」
「イエッサー!」
コレットはビクッと身体を硬直させ直立不動になり、大声で返事を返す。
フリックは一瞥した後、コレットに分厚い本を手渡した。
「あの……これは?」
「この国の歴代の貴族の系譜と各領地の特産物などが記載された本です。公用語はアングロサクソン語となっておりますが、他領独自の訛りがありますので全て頭に叩き込みなさい」
百科事典か? とツッコミたくなるくらい分厚い本に、コレットの顔色は真っ青になる。
嫌と拒否をすれば何されるか分からない。
かと言って出来なければ、これまた何されるか分からない。
本を手に固まるコレットに対し、フリックは容赦なく言い放つ。
「2週間時間を与えましょう。貴女が能無しでクソだということは理解しておりますので、クソはクソなりに最低限の知識を身に付けなさい。2週間だけ他の仕事は免除して差し上げます。覚えられなかったら、別の方法を考えます。私に負担をかけるようなことはなさらないで下さいね」
「イエッサー!」
殺気混じりの命令に、コレットは半べそをかきながら本を死ぬ物狂いで覚えようとした。
結果は、惨敗だった。
フリックも最初から期待していなかったのか、プランBへ移行しますと言いながら、コレットを引きずって組手をしながら本の内容を質問するという行動に出た。
覚えていなければボコボコにされ、覚えていてもボコボコにされる。
どちらにしろ青痣を作る事には変わりない。
何で私がと悔し涙を流しているコレットだが、フリックはその考えも見抜いていたのか早々に彼女の心をへし折りにかかっていた。
元々買い戻すのが目的だからそれは良い。
問題は、その後のことだ。
一度奴隷落ちしたら、平民に戻るのは難しい。
前例が殆どないと言っても差支えないだろう。
戻れたとしても一生『元奴隷』というレッテルを貼られるのだから溜まったものじゃない。
奴隷に関する法整備をしないことには、根本的な問題は解決しないだろう。
なので、その辺りのことはパパンに丸投げしておいた。
専門家ほどではなくとも、広く浅く法律のことを知っておかなければならない。
領主って本当に頭が良くないと出来ない仕事だと今更ながらに痛感した。
前世の記憶頼りで内政チートもどきで奮闘しているが、ぶっちゃけ上手く行っているのかどうか分からない。
問題を片付けても、ゴキブリのようにドンドン増えて手元に戻ってくる。
テープライターで書き起こした報告書をシルフに渡して、パパンと王妃に届けるようお使いを頼んだ。
返信がくるまでは、暫く待機だ。
最速で今日中の返信か、それとも話し合いをして数日待つのか。
そこは、パパンと王妃の采配によるだろう。
私が小休憩をしている頃、コレットはフリックの鬼畜な課題を課せられていた。
「お嬢様の恩情で首と胴が繋がっていることを一生感謝して生きなさい。私は、貴女に対して麦一粒の欠片も期待はしておりません。ですが、結果を残さねば私の恥になります。よって、最低限使えるくらいには鍛えて差し上げます」
コレットの再教育を命じられたフリックは、初っ端からコレットを全否定していた。
「……はい」
下手に反論したり、反抗したりしようものなら物理的な教育的指導が飛んでくる。
顔を狙わない辺りが、陰湿さを感じる。
「返事に覇気がありません」
「イエッサー!」
コレットはビクッと身体を硬直させ直立不動になり、大声で返事を返す。
フリックは一瞥した後、コレットに分厚い本を手渡した。
「あの……これは?」
「この国の歴代の貴族の系譜と各領地の特産物などが記載された本です。公用語はアングロサクソン語となっておりますが、他領独自の訛りがありますので全て頭に叩き込みなさい」
百科事典か? とツッコミたくなるくらい分厚い本に、コレットの顔色は真っ青になる。
嫌と拒否をすれば何されるか分からない。
かと言って出来なければ、これまた何されるか分からない。
本を手に固まるコレットに対し、フリックは容赦なく言い放つ。
「2週間時間を与えましょう。貴女が能無しでクソだということは理解しておりますので、クソはクソなりに最低限の知識を身に付けなさい。2週間だけ他の仕事は免除して差し上げます。覚えられなかったら、別の方法を考えます。私に負担をかけるようなことはなさらないで下さいね」
「イエッサー!」
殺気混じりの命令に、コレットは半べそをかきながら本を死ぬ物狂いで覚えようとした。
結果は、惨敗だった。
フリックも最初から期待していなかったのか、プランBへ移行しますと言いながら、コレットを引きずって組手をしながら本の内容を質問するという行動に出た。
覚えていなければボコボコにされ、覚えていてもボコボコにされる。
どちらにしろ青痣を作る事には変わりない。
何で私がと悔し涙を流しているコレットだが、フリックはその考えも見抜いていたのか早々に彼女の心をへし折りにかかっていた。
0
お気に入りに追加
2,919
あなたにおすすめの小説
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。
紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。
学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ?
婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。
邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。
新しい婚約者は私にとって理想の相手。
私の邪魔をしないという点が素晴らしい。
でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。
都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。
◆本編 5話
◆番外編 2話
番外編1話はちょっと暗めのお話です。
入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。
もったいないのでこちらも投稿してしまいます。
また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる