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オブシディアン領で労働中

鑑定具が欲しい

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 フリックの無茶振りの難易度が爆上がりして、頭を抱えているリリアンです。
 馬鹿王子とその側近、学園についてはパパンと下僕なかま達に丸投げしたので領地経営をさっさと軌道に乗せなければ王都に戻ることすら出来ない。
 旧オブシディアン領の奴隷商の間では、私の顔と名前(偽名)は把握されているだろう。
 大量購入した奴隷たちは、フリックの配下に加えられてビシバシ扱かれている。
 今、欲しいものとしては適正儀式で使用される鑑定具だ。
 自分や相手のスキルを手軽に見れると、商売の幅が広がる。
 自分のステータスは、教会に行きさえすれば見れるが、ぶっちゃけ面倒臭い。
 魔具師と拳闘士の素養はあるのだから、作れないこともないだろう。
「教会の保有する鑑定具、こっそり借りたら駄目かしら」
 書類にサインをしながら、思わず私の心の声が漏れてしまった。
 フリックは、追加の資料を机の上に置きながら答える。
「お嬢様、流石にそれは無理だと思います。精々、壊れたものなら入手し易いのではありませんか?」
「……その発想はなかったわ。修理をする目的で、回収するのはありね」
 この国で使われている鑑定具の大半は、ナリスからの輸入に頼っている。
 そのナリスも最近はキナ臭いし、自前で用意出来るものはした方が良いに決まっている。
「フリック、采配の権限をあげるわ」
「それは、どういう意味ですかな?」
「フェディーラとフリックは、補佐として着任してますが全権はわたくしが持っています。だから、わたくしを2、補佐である二人にそれぞれ1ずつ権利を与えます。この書類の山を見る限り、わたくしで無くても出来る書類が沢山交っているの。だから、ね?」
 私の為に必死扱いて馬車馬のように働きなさいな、と笑みを浮かべて圧をかけてみる。
「……誰の入れ知恵ですか、全く」
 フリックは、大きな溜息を吐いてこめかみを押さえている。
 何だ、私と同じことを考えた人がいたんだ。
 彼の様子から察するに、お爺様あたりかしら。
「ひ・み・つ♡ 辞令書は、直ぐに書いて渡すから判断に困るもの以外は全て二人で処理をして頂戴。後、フェディーラの動向にも注意しておいて」
「かしこまりました」
 フリックは、一礼すると部屋を後にした。
 取り合えず、書類地獄からは一旦抜け出せそうである。
 王妃が紹介したフェディーラを信頼するには、聊か不安分子を孕んでいる。
 彼の仕事ぶりは信用しているが、信頼するのとは別問題である。
「まあ、なるようになるしかないか」
 私は、急ぎの仕事だけ片付けてフリックが見繕った護衛を連れて教会へと足を運んだ。


 アングロサクソン領の教会と比べると、清貧とは程遠い豪華絢爛な教会だ。
 聖女降板事件で国内のユーフェリア教会は、清貧というより極貧な状態になりつつある。
 はずなのだが、やはり奴隷密売で私腹を肥やしている人間がまだ隠れているということなのだろう。
 教会内を歩き見回っていると、管理している司祭が飛んできた。
「リリアン様、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「抜き打ちの視察ですわ。それと、鑑定魔法具の状態を確認しようかと思いまして伺いましたの。例の一件で、ステータスを確認されるために足を運んで下さる信徒方がいらっしゃいますでしょう。万が一壊れたり、不具合が起きていたら新しいものと交換しなくてはなりませんので見せて頂いても宜しいかしら?」
 ニコニコと笑みを浮かべながら、本来の目的をそれとなく伝えると司祭はハンカチで汗を拭きながら、コクコクと頭を縦に振っている。
 鑑定具が保管されている場所に案内され、手に取り確認をする振りをした。
「……あら、小さいですが傷が付いてますわね」
 司祭から見えないように、ひびを入れさせて貰いました。
 所詮、道具。
 頑丈ではあるが、無理に力を加えればひびの1つや2つ付けることは容易い。
「本当ですね。気付きませんでした。しかし、この教会にはこれしかないので困りましたな」
 チラチラとこちらを見てくる司祭に、
「早急に新しい物を手配致しますわ。ただし、ひびが入った物を使い続けるのは危険ですので回収させて頂きますわ。信徒の皆様には、新しい物が届くまでお待ち頂くように司祭様からお伝え下さいませ。わたくしは、もう少し教会内を視察して帰りますので、どうかお気になさらず」
と有無を言わさずに鑑定具を回収して、カモフラージュの視察を続けた。
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