152 / 181
オブシディアン領で労働中
鑑定具が欲しい
しおりを挟む
フリックの無茶振りの難易度が爆上がりして、頭を抱えているリリアンです。
馬鹿王子とその側近、学園についてはパパンと下僕達に丸投げしたので領地経営をさっさと軌道に乗せなければ王都に戻ることすら出来ない。
旧オブシディアン領の奴隷商の間では、私の顔と名前(偽名)は把握されているだろう。
大量購入した奴隷たちは、フリックの配下に加えられてビシバシ扱かれている。
今、欲しいものとしては適正儀式で使用される鑑定具だ。
自分や相手のスキルを手軽に見れると、商売の幅が広がる。
自分のステータスは、教会に行きさえすれば見れるが、ぶっちゃけ面倒臭い。
魔具師と拳闘士の素養はあるのだから、作れないこともないだろう。
「教会の保有する鑑定具、こっそり借りたら駄目かしら」
書類にサインをしながら、思わず私の心の声が漏れてしまった。
フリックは、追加の資料を机の上に置きながら答える。
「お嬢様、流石にそれは無理だと思います。精々、壊れたものなら入手し易いのではありませんか?」
「……その発想はなかったわ。修理をする目的で、回収するのはありね」
この国で使われている鑑定具の大半は、ナリスからの輸入に頼っている。
そのナリスも最近はキナ臭いし、自前で用意出来るものはした方が良いに決まっている。
「フリック、采配の権限をあげるわ」
「それは、どういう意味ですかな?」
「フェディーラとフリックは、補佐として着任してますが全権はわたくしが持っています。だから、わたくしを2、補佐である二人にそれぞれ1ずつ権利を与えます。この書類の山を見る限り、わたくしで無くても出来る書類が沢山交っているの。だから、ね?」
私の為に必死扱いて馬車馬のように働きなさいな、と笑みを浮かべて圧をかけてみる。
「……誰の入れ知恵ですか、全く」
フリックは、大きな溜息を吐いてこめかみを押さえている。
何だ、私と同じことを考えた人がいたんだ。
彼の様子から察するに、お爺様あたりかしら。
「ひ・み・つ♡ 辞令書は、直ぐに書いて渡すから判断に困るもの以外は全て二人で処理をして頂戴。後、フェディーラの動向にも注意しておいて」
「かしこまりました」
フリックは、一礼すると部屋を後にした。
取り合えず、書類地獄からは一旦抜け出せそうである。
王妃が紹介したフェディーラを信頼するには、聊か不安分子を孕んでいる。
彼の仕事ぶりは信用しているが、信頼するのとは別問題である。
「まあ、なるようになるしかないか」
私は、急ぎの仕事だけ片付けてフリックが見繕った護衛を連れて教会へと足を運んだ。
アングロサクソン領の教会と比べると、清貧とは程遠い豪華絢爛な教会だ。
聖女降板事件で国内のユーフェリア教会は、清貧というより極貧な状態になりつつある。
はずなのだが、やはり奴隷密売で私腹を肥やしている人間がまだ隠れているということなのだろう。
教会内を歩き見回っていると、管理している司祭が飛んできた。
「リリアン様、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「抜き打ちの視察ですわ。それと、鑑定魔法具の状態を確認しようかと思いまして伺いましたの。例の一件で、ステータスを確認されるために足を運んで下さる信徒方がいらっしゃいますでしょう。万が一壊れたり、不具合が起きていたら新しいものと交換しなくてはなりませんので見せて頂いても宜しいかしら?」
ニコニコと笑みを浮かべながら、本来の目的をそれとなく伝えると司祭はハンカチで汗を拭きながら、コクコクと頭を縦に振っている。
鑑定具が保管されている場所に案内され、手に取り確認をする振りをした。
「……あら、小さいですが傷が付いてますわね」
司祭から見えないように、ひびを入れさせて貰いました。
所詮、道具。
頑丈ではあるが、無理に力を加えればひびの1つや2つ付けることは容易い。
「本当ですね。気付きませんでした。しかし、この教会にはこれしかないので困りましたな」
チラチラとこちらを見てくる司祭に、
「早急に新しい物を手配致しますわ。ただし、ひびが入った物を使い続けるのは危険ですので回収させて頂きますわ。信徒の皆様には、新しい物が届くまでお待ち頂くように司祭様からお伝え下さいませ。わたくしは、もう少し教会内を視察して帰りますので、どうかお気になさらず」
と有無を言わさずに鑑定具を回収して、カモフラージュの視察を続けた。
馬鹿王子とその側近、学園についてはパパンと下僕達に丸投げしたので領地経営をさっさと軌道に乗せなければ王都に戻ることすら出来ない。
旧オブシディアン領の奴隷商の間では、私の顔と名前(偽名)は把握されているだろう。
大量購入した奴隷たちは、フリックの配下に加えられてビシバシ扱かれている。
今、欲しいものとしては適正儀式で使用される鑑定具だ。
自分や相手のスキルを手軽に見れると、商売の幅が広がる。
自分のステータスは、教会に行きさえすれば見れるが、ぶっちゃけ面倒臭い。
魔具師と拳闘士の素養はあるのだから、作れないこともないだろう。
「教会の保有する鑑定具、こっそり借りたら駄目かしら」
書類にサインをしながら、思わず私の心の声が漏れてしまった。
フリックは、追加の資料を机の上に置きながら答える。
「お嬢様、流石にそれは無理だと思います。精々、壊れたものなら入手し易いのではありませんか?」
「……その発想はなかったわ。修理をする目的で、回収するのはありね」
この国で使われている鑑定具の大半は、ナリスからの輸入に頼っている。
そのナリスも最近はキナ臭いし、自前で用意出来るものはした方が良いに決まっている。
「フリック、采配の権限をあげるわ」
「それは、どういう意味ですかな?」
「フェディーラとフリックは、補佐として着任してますが全権はわたくしが持っています。だから、わたくしを2、補佐である二人にそれぞれ1ずつ権利を与えます。この書類の山を見る限り、わたくしで無くても出来る書類が沢山交っているの。だから、ね?」
私の為に必死扱いて馬車馬のように働きなさいな、と笑みを浮かべて圧をかけてみる。
「……誰の入れ知恵ですか、全く」
フリックは、大きな溜息を吐いてこめかみを押さえている。
何だ、私と同じことを考えた人がいたんだ。
彼の様子から察するに、お爺様あたりかしら。
「ひ・み・つ♡ 辞令書は、直ぐに書いて渡すから判断に困るもの以外は全て二人で処理をして頂戴。後、フェディーラの動向にも注意しておいて」
「かしこまりました」
フリックは、一礼すると部屋を後にした。
取り合えず、書類地獄からは一旦抜け出せそうである。
王妃が紹介したフェディーラを信頼するには、聊か不安分子を孕んでいる。
彼の仕事ぶりは信用しているが、信頼するのとは別問題である。
「まあ、なるようになるしかないか」
私は、急ぎの仕事だけ片付けてフリックが見繕った護衛を連れて教会へと足を運んだ。
アングロサクソン領の教会と比べると、清貧とは程遠い豪華絢爛な教会だ。
聖女降板事件で国内のユーフェリア教会は、清貧というより極貧な状態になりつつある。
はずなのだが、やはり奴隷密売で私腹を肥やしている人間がまだ隠れているということなのだろう。
教会内を歩き見回っていると、管理している司祭が飛んできた。
「リリアン様、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「抜き打ちの視察ですわ。それと、鑑定魔法具の状態を確認しようかと思いまして伺いましたの。例の一件で、ステータスを確認されるために足を運んで下さる信徒方がいらっしゃいますでしょう。万が一壊れたり、不具合が起きていたら新しいものと交換しなくてはなりませんので見せて頂いても宜しいかしら?」
ニコニコと笑みを浮かべながら、本来の目的をそれとなく伝えると司祭はハンカチで汗を拭きながら、コクコクと頭を縦に振っている。
鑑定具が保管されている場所に案内され、手に取り確認をする振りをした。
「……あら、小さいですが傷が付いてますわね」
司祭から見えないように、ひびを入れさせて貰いました。
所詮、道具。
頑丈ではあるが、無理に力を加えればひびの1つや2つ付けることは容易い。
「本当ですね。気付きませんでした。しかし、この教会にはこれしかないので困りましたな」
チラチラとこちらを見てくる司祭に、
「早急に新しい物を手配致しますわ。ただし、ひびが入った物を使い続けるのは危険ですので回収させて頂きますわ。信徒の皆様には、新しい物が届くまでお待ち頂くように司祭様からお伝え下さいませ。わたくしは、もう少し教会内を視察して帰りますので、どうかお気になさらず」
と有無を言わさずに鑑定具を回収して、カモフラージュの視察を続けた。
0
お気に入りに追加
2,918
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる