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幼少期

ストーカーにストーカーと言っても伝わらない

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 ノームに一途な恋をしているウンディーネが我が家にやってきて賑やかになった。
 賑やかになったというのは、少しばかり語弊があるかもしれない。
 傍から見ればノームが何もないところでギャーギャー騒いでいるのだ。
「ねえ、リリー……あれ大丈夫なの?」
「ああ、ノームにぞっこんの精霊が押しかけているだけだからね。害はないよ…多分」
 ウンディーネの関心はノームにあるわけで、ノームは単純に逃げ回っている。
 それが傍から見たら独り言を喚き散らしている異様な光景が出来上がる。
「流石にこの状況が続くと困るわよね」
 可愛い双子ちゃんを迎えた時に、あれを見て怯えたら元もこうも無い。
 仕方がない。
 ここは、一肌脱ぎますか!
「ウンディーネ、ちょっと良い?」
「何よ。私は忙しいのよ」
「いや、ノームを追いかけまわすのに忙しいだけじゃん。実はさ、ノームの好みの情報を入手したんだけど」
 私の言葉に、ノームを追いかけまわしていたウンディネーはピタリと動きを止めた。
 よしよし、こちらに意識を持ってきたのを確認して手招きした。
 ウンディネーは、ふよふよと私の前にあるティーカップの淵に座った。
「それ、本当なの?」
「本当だよ。どさくさに紛れて自分の好みをゲロッたから間違いはない」
「じゃあ、教えなさいよ」
「良いけど。私の監修のもと、改革するわよ!」
「は?」
「ノームはね、ボンキュッボンのナイスバディな女性が大好きなの。そんなに丸々と肥えたブタは論外よ!」
 ビシッと指を突き付けて事実を告げると、ザワッとウンディネーから殺気が放たれる。
「私の事をブタ呼ばわりするつもり……」
「本当のことだもの。私から見れば、肥えたブタ。おばちゃんにしか見えない! そこでまずは見た目から変えるのよ。まずは、痩せろ」
「何でよ!! この姿だって人間の男が好む姿だって調べたのよ」
「何年前の話だよ!」
 思わず突っ込みを入れてしまった。
 いかんな。
「ノームの好みはメリハリのあるボディの女性なの。肉の塊にしか見えない姿で迫っても断られる。というか、既に拒否られているわね」
 私の言葉にウンディーネは涙目だ。
「大体、どうしてそんなに太ったのよ?」
「ドライアドを脅して蜂蜜や果実を献上させただけよ」
 予想以上に酷かった!!
 脅して森の恵みを奪うとか無いわー。
「ここ数百年は、同じものばかりで飽き飽きしていたのよ」
「でも、ダイエットという概念はないのね」
「ダイエット? 何それ?」
「自発的に運動したりして痩せることよ」
「痩せたら私の美貌が台無しになるじゃない!」
「肉だるまに凄まれても全然怖くないんだけど。今の姿でも十分ブスだからね。もし私以外に貴女が見えたなら、ブスって言うわよ」
 断言すると、物凄く傷ついた顔をされてしまった。
 でも、本当のことなので謝罪する気はない。
「まずは、痩せてから考えましょう!」
 お騒がせなウンディーネにダイエットを提案して、一時的にノームから引きはがすことに成功しノームは感謝の気持ちなのか純度の高い宝石の塊を毎日1つ贈ってくれるようになった。
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