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幼少期

王都へ嫌々お引越し

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 側近を連れて王都にあるアングロサクソン邸にやってきました。
 領地よりも狭い感がある佇まいだが、他の貴族に比べれば広い方なんだと。
「リリアンお嬢様、お待ちしておりました」
「貴方が、執事長のフリック・スー?」
「はい。この館を大旦那様より預かっております」
 恭しく最敬礼をするフリックに、私は出来る男は違うなと感心していた。
 周囲を見渡せば塵一つなくピカピカに磨かれている。
 若い頃の彼は、さぞモテただろう。
「私付きのメイドと従者を連れてきたの。ここでのルールを徹底的に叩き込んでね。手加減は要らないから」
「畏まりました」
 私の言葉に青ざめるメイド&従者達、強く生き抜けよと心の中で健闘を祈った。
「リリアン様、メイド長のメアリー・スーと申します。お嬢様のお部屋をご案内致します」
 能面とまではいかないが、無表情の挨拶には吃驚した。
 ひっつめ髪のお団子頭と言えば、フランシス・ホジソン・バーネットの『小公女』の登場人物ミンチン院長を思い浮かべてしまった。
 表情で言えばミンチン院長の方があるが、メアリーは出来る女オーラが凄く出ている。
 メアリーの後ろをついて行くと、一番日当たりの良い部屋に通された。
「こちらが、お嬢様のお部屋で御座います」
「想像していたよりも広いのね」
 領地より狭いと聞いていたから部屋も狭いと思っていたが、領地で使っている部屋の面積と大差がない。
「お嬢様がお越しになると伺い、部屋の内装を変えました」
「え!? お金がかかったんじゃないの?」
 内装工事だけでどれほどの金が動いたのか怖くて聞けない。
「予算内に収めておりますのでご安心下さい。お嬢様、貴族には見栄というものが時折必要になるのです」
 見栄の塊が服を着ている貴族は五万といるだろうが、それを堂々と言ってのけちゃうメイド長に胸が熱くなった。
 やだ、出来るこのひと
 女の私でもプロポーズして欲しいわ。
「私がポンコツだから、メイド長としてアリーシャを鍛えて頂戴。鬼教育スパルタで良いから、お願いね」
「勿論で御座います。お嬢様のポンコツをさりげなく自然にカバー出来るように仕込みます」
 とても力強い答えに嬉しいが、ポンコツを繰り返されて地味に心にダメージを負った。
「ガリオンもフリックの元で執事見習いをして貰います」
「はあ!? 俺は、リリアン様の護衛で雇われてんだぜ。何で執事見習いをしなきゃならねーんだよ」
 ふざけんなと怒るガリオンに対し、メアリーは無言で彼の胸倉を掴んだかと思うと容赦のない往復ビンタをかました。
 バシーンッバシーンと凄い音がしていて、聞いているこっちが痛いと誤解してしまいそうだ。
「お嬢様の護衛は基本中の基本です。側近は、身の回りのことはさることながら屋敷の切り盛りを出来るようになって一人前の使用人なのですよ。この屋敷に勤める者は、須らく一通りのことが出来るように仕込まれます。それが気に入らないのであれば、今すぐ辞して家に帰りなさい」
 私でもチビリそうな程の殺気に、ガリオンは泣きながら謝っている。
「ずびばぜんでじだぁぁ」
「活舌が悪いうえに小声では聞こえませんよ」
 容赦なく往復ビンタが繰り出され、彼の両頬が赤く腫れるまでビンタは続いた。
 途中で止めたんだが、これも指導の一環と言われてしまえば私もそれ以上口にすることが出来なくなった。
 魔法で作り出した氷をハンカチに包んでガリオンに渡しておいた。
 メアリーは、次は使用人の部屋と館のルールについて説明すると言って私が連れてきた使用人たちを連れて行った。
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