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幼少期

押し売りはノーサンキューです

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 クーリングオフなしで無理矢理精霊と契約させられました。
 地の大精霊だからか、おでこに突進されちょっと赤く腫れた。
 許すまじと思っていたが、気が向いたら呼び出しに応じるとか言ってたので暫く放置していたら押しかけて来た。
「何でワシを呼ばんのじゃ!」
「普通に生活していたら呼ぶ必要ないよ」
 マナーと勉強の日々に、精霊を呼ぶ必要性を感じないと言えばプリプリと怒り出した。
「折角、このワシが契約してやったのに! それでも主か!」
「自分で気が向いたら呼びかけに応じるとか言ってたし。必要ないから呼ばなかっただけで何で怒られるの? 意味不明」
「精霊魔法について知りたいんじゃろう。だったら、ワシを呼ぶべきじゃろう」
 うわー、面倒くさいのが来た。
 ワーワーと私の周りを飛び回りながら喚くノームを叩き落としたい衝動にかられた。
「リリー、ひとりごとはイタイひとだよ」
「アリーには見えないんだっけ。今、私の周りに精霊がいるんだよ」
 飛び回っていたノームを鷲掴みにしてアリーシャの目の前にぶら下げてみるが、彼女は目を凝らしているが見えないようだ。
「みえないわ」
「聞こえる人は稀にいるみたいだけど、私みたいに見える人は初めてなんだって」
「すごい! だんなさまにほうこくしないと!! もしかして、せいじょさまなのかもしれないわね」
 目をキラキラして自分のことのように喜ぶアリーシャを落ち着けと肩を叩いた。
「お父様に報告するのは止めて! これ以上、勉強を増やされたくないわ。精霊が見えたからって聖女認定されたら、世の中聖女ばかりよ」
「でも……」
「精霊の声が聞こえる者は、種族問わずにいるわ。その人たちを聖女と祭り上げるようなものよ。七歳になれば教会で適正が分かるんだから、それまで好きにしたいの! これ以上勉強したら、私過労死しちゃう」
 五歳児の私に対する要求が高いのに、これ以上ハードルを上げられたら本当に過労死どころかストレスで死にかねない。
 必死の形相で口止めする私に、アリーシャは渋々納得してくれた。
「あとで、だんなさまにしかられてもしらないからね!」
「その時は……その時よ!」
 一瞬たじろいだが、叱られることを先延ばしにすることを選択した。
「いつまでワシをぶら下げとる。罰当たりじゃぞ!」
「ごめん」
 パッと手を離したら、ノームは服をパタパタと叩いてしわを伸ばしている。
「主は、放っておいたら一生呼び出さない思ったから仕方なく傍に控えてやろう」
 ありがたく思えと言わんばかりのノームの態度に、私は思いっきり顔を顰めた。
「リリー、かおがこわいわよ」
「いや、ちょっと精霊が押しかけてきて迷惑しているというか」
「失礼な主じゃのう」
「私しか見えない相手に喋りかけている構図が、痛い人みたいじゃない。精霊魔法には興味があるけど、必要かって聞かれれば別段必要性を感じないし。普通の魔法も使えるわけだし」
 コスパを考えなければ精霊魔法でなくても、通常魔法で十分なのだ。
「注文が多い主じゃ。仕方がない。これで良かろう」
 ノームがトカゲになった。
「……トカゲ」
「阿呆! 地龍の幼体を模したもんじゃ」
 手のひらサイズのトカゲが地龍の幼体って……。
 可愛くない。
「リリー、そのトカゲが……いましゃべった?」
「ああ、他の人にも見えるように地龍の幼体に擬態したんだって。ノーム君です」
 アリーシャの目の前にノームを持ち上げると、ヒッと小さな悲鳴が上がった。
「ち、ちかづけないで」
「あー……」
 私は爬虫類とか全然平気だけど、一般的な女の子は苦手だよなぁ。
 やっぱり女子力が足りないのか、と思わぬ事実に凹んだ。
「犬や猫になれないわけ?」
「そんな脆弱なものに擬態せねばならん。ワシは大精霊じゃぞ。恰好良いだろう」
 ぽってりとしたお腹に、全体的に丸いフォルムの地龍幼体(笑)を格好良いとは言い難い。
「百歩譲って可愛いだよ」
 私の感想に暫くギャーギャー喚いたが、屋敷の者にバレると面倒なことになるので脳天にチョップをかまして黙らせた。
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