茜色の頬 小学生編

ひじり つかさ

文字の大きさ
上 下
4 / 4

卒業

しおりを挟む
日記はボロボロになったけど
智也くんの温かい心に助けられました。

今回の事もあり、以後は智也くんの提案で
文通をする事になりました。

幾日か、かかってしまうので不便だけれど
これから中学の頃まで続く
私達の大事なツールとなって行くのでした。

智也くんも言ってたけど
日記や手紙って学校で言えない事でも
スラスラと書けちゃうから

ふしぎ!


季節は変わり......智也くんの誕生日!
小さなプレゼントを用意した私、
でも......中々渡す機会がなくて!

見かねた、なっちんが電話で呼び出して
公園で待ち合わせして直接渡せばと提案

ドキドキでいっぱいの私を応援する様に
なっちんと、とこちゃんが両脇に

狭い電話ボックスの中
ありったけの十円玉

受話器を持ち......震える指先

トゥルル-- トゥルルル-- ガチャ!

十円玉が吸い込まれる音と共に

「はい!一ノ瀬です」

私はびっくりして
咄嗟に受話器を置いてしまった。

「なにやってんの!お金勿体無い!」

「だっ、だって知らない人が......」

「親でしょ!二人しかいないんだから!」
「どうするの?諦めるの?」



沈黙の後......
私は再び受話器を取り......

トゥルル-- トゥルルル-- ガチャ!

「はい!」

とこちゃんから背中をトントンと......

「もっ もしもし!」

「もしかして茜ちゃん!」
智也くんの声にホッとした私!

なっちんと、とこちゃんの協力で無事
智也くんに渡せた誕生日プレゼント

もう次の年が近づく季節


しかし......そんな季節を飛び越える出来事が

二学期の終業式の朝!
黒崎先生の一言から始まった!

「今日は残念な お知らせが......」
「卒業までの約束だった一ノ瀬が
お父さんの転勤で本日東京に帰る事になった」

えぇ--っ

「そこでだ!一ノ瀬は、例え短くても
俺と同じ日に、この学校に入学した
俺の生徒だ!そして六年一組の仲間だ!
だから一ノ瀬の為に六年一組だけの
卒業式をしないか?」

この時 先生の一言が沈みかけた雰囲気を
再び希望に変えてくれました。

「今から台紙を回すから皆んなで
寄せ書きをしよう!」

そして先生も、何かを書き始めました!

でも、まわって来た台紙......

私は......

私には......

書ける言葉が......

見つからない?



「よし!みんな書いてくれたな!」

「ありがとう!」

「一ノ瀬智也殿、本校で六年一組の
仲間になってくれて
皆んなに 色んな想い出を
残してくれて、本当にありがとう!
俺たち 私たちは、仲間だ!」

「忘れるな!智也!」

そう言うと、手書きの証書を
智也くんに手渡した。

拍手と、すすり泣きの、声にならない声が
静かな教室を駆け巡った。

ゆっくりと教室のドアが開き

「黒崎先生!一ノ瀬くんの親御さんが、
来られました」

「じゃ!寄せ書きを代表で一名!
智也の見送りと、先生と一緒に行って
欲しいが......」

あかちんがいいと思います!」

「茜でいいんじゃない!」

「茜でしょ!」


「じゃ!茜...... 行こうか!」

ゆっくり廊下を降り正門前へ

「とっ...... 智也くん......」
「ごっ...... ごめんね!」

「あまり、話せなくて......」

「智也くんの好きな 明るい女の子に......
なるから......」
「頑張って...... なるから!」


「ありがとう!茜ちゃん!」
「手紙絶対に続けようね!」

「茜ちゃんは、今のままで良いよ」


車に乗る前に、寄せ書きを渡し
智也くんからは、思いがけないプレゼントが

赤い髪留めと、メモには......
「茜ちゃんの、茜色の頬が大好き!」


車が小さく消えて行くまで先生と私は
ジッと見つめていました!

「茜! 大丈夫か?」

「はい」

涙はサヨナラの涙じゃない
大好きが、始まる......
うれし涙!

きっと...... きっと...... そう!


家に帰るとポストに一通の手紙......
そう......智也くんからの

「いまごろ...... 届いた?」

私の事を想ってギリギリに届くように
したみたいで......

でも......手紙は......遅刻だったよ!

手紙の最後に

いつも真っ赤な顔をして 
もじもじしていた
茜ちゃんが、本当に大好だ!
の、走り書き!

智也くん......




桜が満開の時期

入学式......

素晴らしい青空

「見てるかな?この青空を智也くんも」

セーラー服に身を包んだ私!
智也くんにも、見せたい!

木村 茜 中学一年生に......













しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...