茜色の頬 小学生編

ひじり つかさ

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交換日記

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夏休み......先生が突然の出張で
先生が見る筈のクラスで
飼育していた金魚の世話が出来なくなり
飼育係りの私と一ノ瀬くんに急遽
先生の代わりに一週間お世話する事に

「水!汲んでくる来るから、
金魚バケツに、入れといて!」

一ノ瀬くんに言われるまま私は......
手元が狂い、金魚が床に......
ちょうど水汲みから、戻って来た
一ノ瀬くん

「あっ!死んじゃう、死んじゃう!」
と咄嗟に素手で金魚を掴むとバケツの中に
私は......

「ごっ......ごめんなさい!」
「でも、一ノ瀬くん......」

「智也で、いいよ!」

「えっ?」

「僕も......茜ちゃんって!呼んでるし!」

また少し頬を赤らめ俯き加減に頷くと

「とっ 智也くん」

胸の鼓動と共に一段と赤さが増して
でも......もっと......もっと
智也くんと......おしゃべりしたい
私は大きく息を吸い込むと

「すっ......凄いね!素手で掴んで......」

「これくらい......どうて事ないよ!」

はにかんだ笑顔が教室の窓から差し込む
日差しに照らされてキラキラしながら

「カエルも掴めるよ!」

私は必死で首を横に振りながら

「えっ!むり!むり!」

突然、私の目を見ながら......

「茜ちゃんと やっと会話が出来た!」
「茜ちゃんの事!もっと......知りたい!」

「わっ......私......もっ」

私は、ふとクラスで流行っている
交換日記を思い出して

「とっ、智也くん」
「よかったら......こっ......交換日記......
してくれませんか?」

いっ言えた!
ドキドキして気が......遠くなりそう!

「いいね!日記なら言いづらい事も
書けそうだし......やろう!」
「お互いの机の中に入れっこして」

「うん!」
私は大きく頷きました!

山登りで大きな声を出した経験が
私にほんの少し勇気をくれた......
私は心の底から嬉しくて......

こうして新学期から交換日記をする約束を
した私たち!

色んなことを、知りたい!
私の、わくわくした気持ちと、
綺麗になった水槽で気持ち良さそうに
泳ぐ金魚が尾びれをフリフリしながら
楽しそうに泳いでいるのを見て
私もウキウキした気分になりました。


新学期!真新しい日記帳!

誕生日は?星座は?好きなアイドルは?

好きな色は......

私は、赤...... 赤が好き!
直ぐに赤くなる顔は嫌いだけど......

色は......好き!だから、いつも
赤いリボンを身に着けてる!

私も......智也くんのこと......知りたい

好きなスポーツは何ですか?
好きな食べ物はなんですか?
好きなタイプは?

「明るくて!可愛い子!」

私は......明るい?......可愛い?

直ぐに赤くなって!
言葉も少ない私を......

一ノ瀬くんは......気に入ってくれてるの?
不安ばかりが......

交換日記を始めて幾日か経った頃
いつもの様に日記を入れようとした時
あっ!

昨日 席替えをしたのを忘れてた!
確か......私の斜め後ろの...... 横?

私は机の中を覗き何も入って無い机!

「智也くんは、置き教科書とかし無いし」

そっと日記を入れました。

皆んなが登校して来た頃、事件が......

「うん?なんだコレ!
コレって交換日記か?」
声をあげたのは大森 徹くん
やがて男の子たちの人集りが出来!
悪ふざけが!始まった!

「おいイニシャルが書いてあるぜ!」

「A.K & T.I」

「A.Kって、あかちんじゃね!」

「じゃT.I は一ノ瀬......転校生か!」

「ヒューヒュー」

もう大騒ぎ......

騒ぎを聞き付け、なっちんが

「人の日記 読むなんて、サイテー」
「返してやんなよー」

つかみ合いになり
やがて日記は台紙からノートの糸が
ほつれ日記がバラバラに......

足跡が無数につき......ボロボロに......

「お前が、引っ張るからだぞ!
夏美のせいだからな!知らねからな!」

そう言って男の子たちは消えて行った。

教室に戻った私は......

あかちん取り返したけど......
ごめん、ごめんね!」

私は溢れる涙が抑えられず......
間違えて机に入れたから......

なっちんは悪くない......

 でも!

どうコントロールしていいか、
わからない、感情が堪えきれず......

独特な雰囲気の中、
智也くんが教室に入ってきた!

ただならぬ様子に、気付き
智也くんが泣いてる私に駆け寄った!

私は......

「智也くん!ごめん!ごめんなさい!
智也くんの書いてくれた事 
全部...... こんな事に......
私が間違えて違う子の机に入れたから......
ごめん!ごめんなさい」

私は涙で顔があげられず、教室全体も
異様な雰囲気に......

でも、智也くんの落ち着いた声が
不安な空気を変えてくれました。

「大丈夫!日記は無くならないよ!」
「茜ちゃんが書いてくれた事
全部! 僕の中に......」

そう言と指先を頭と......そして......
ゆっくり手のひらを胸に当て

「ここに...... あるから」

どれだけ智也くんの言葉に救われたか

少し背伸びした

乙女心に

敏感に

伝わりました。


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