茜色の頬 小学生編

ひじり つかさ

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山登り

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なっちんと、とこちゃんと、私とで先生の
ところに参加メンバーの報告に行きました。
一ノ瀬くんの名前が入っていた事で、
先生から、凄く褒められ
放課後に持って行く物や諸注意を......

「持って行く物は以上な!
あと手袋と履き慣れた靴 
特に女子は、必ずズボンでな」

昨日の雨に皆んな心配したけど、
山登り当日は朝から快晴でした。

麓の古墳公園に集まり準備体操をして
先生を先頭に山登りのスタートです。

一時間程登ったあたり!
最初は皆んな はしゃいで いたものの
少しずつ口数が少なくなりかけた頃
先生から

「もう少しで休憩ポイントだから」

その言葉にホッとしたのか、私は......
「きゃっ」
ぬかるんだ道に足を滑らせた。
次の瞬間一ノ瀬くんの手が私の手を
しっかりと掴んだ!
「大丈夫?」
「う......うん、あっ......ありがとう」
私は、また顔を赤らめ小声で答えた。

すかさず先生が
「あっ!大丈夫か?」

「おぉ!一ノ瀬やったなぁ!
男は、女の子を守るもんだ!」

「よ--し!皆んな手繋いで行こう!」

なっちんは、とこちゃんと手を繋ぎ
健ちゃんと章ちゃんは......

「えぇ!男同志で......」

「先生の手が空いてるぞ!」

「健ちゃんで、いいです!」

その場が笑いで包まれました。

私は恥ずかしさで頬が赤く染まるのが
自分でもわかるくらいに......

それでも一ノ瀬くんは力強くグイグイと
引っ張ってくれる。

休憩ポイントを過ぎ、再び元気を取り戻した
皆んなは歌を歌いながら頂上を目指しました。

そして遂に頂上に!
何時も下から見上げる山が
今日は......低いとはいっても眼下に広がる
見慣れた町並みは、いつもと全然違う!
皆んな達成感でいっぱいでした。

「どうだ!これが、小さくても、
山登りの醍醐味だ!」

「途中 苦しかったり 辛かったり
それでも時には、助けて、助けられて
決して、ひとりじゃ無い!
支え合って、生きてるって感じるだろう」

「お前たちも、これから苦しい事や、
辛い事が有るかも知れないが、
今日の事を思い出して!
助けてあって、支え合って生きてくれ!」

この時ばかりは全員で、

「はい!」の合唱!

「じゃ--授業は終わり!」

「先生!弁当食べていい」と
章ちゃんと健ちゃん!

「待て待て!山といったら、
する事があるだろう!」
と先生が言うと、突然大きな声で!

「三枝--!美味しい弁当!ありがとう!」
新婚さんらしく、奥さんの名前を!

「よし!ひとりずつ言ってけ!」

その場の気分に乗って次々と......

章ちゃんが
「彼女が、ほし--い!」
なっちんが
「部活で優勝した--い!」
健ちゃんが
「今度のテスト百点取るぞ--」
とこちゃんは
「りょ!料理が上手になりた--い!」
一ノ瀬くんは
「山登り!楽しかった--」

皆んなの歓声や拍手が続き、
いよいよ私に......
でも......私は......また、顔が真っ赤に......
「えぇ......と えっと......」

先生が近くに来て
「茜!言葉じゃ無くてもいい!」
「うぅ--でも、わぁ--でも、
生きてるって実感して心の底から
叫んでみろ!そしたら楽しくなるから!」

先生の言葉が、励みになり私は......
大きく深呼吸をして......
次の瞬間!

「わ----ぁ----」

なっちんが
「びっくりした!あかちん!声出るじゃん」

皆んな口々に
「すごい!」
「びっくりした!」
「やったね!」の声

そして一ノ瀬くんは
「おどろいた!でも......すごい!」
先生も
「茜!気分はどうだ?」

「きぃ......気持ち......いい」と
また小声に.....

なっちんや、皆んなも
「戻っちゃった!」

でも先生は
「いい!いい!何でも一歩ずつだ!」

「今日皆んなは、
茜の初めて!を見たんだろう?
こんな素晴らしい事は無い!
皆んな今日の日を忘れるな!」

「じゃ!いただきま--す!」

今日!皆んなと食べた、お弁当は
忘れられない、美味しさでした。

帰りは下り坂で、麓の古墳公園に着いてから
ドロケイで遊んで、
先生とも別れた帰り道、なっちんに

「ねっ!いつまで手!繋いでんの?」

その時初めて気付き、はっとした二人
一ノ瀬くんが、自然にサッと手を出して
来るので、いつしか当たり前の様に......

二人だけになった帰り道!
意識をすると、また顔が赤くなって
家の前に来た時に一ノ瀬くんが

「茜ちゃんの頑張った声!よかった!
でも、もじもじして赤くなってる
茜ちゃんも、好きだよ!」

「じゃ!また明日!」

好きだよ!の優しい言葉......
私は声も出せないまま、
ずっと一ノ瀬くんを見送っていました。




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