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ようこそ♪ニャンダーランドへ!」

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「えーーー、では樋口さん、他にも猫がモテる理由があるんですが何かわかりますか?」

「えー?ヒナはーーー、なんかよくわかんないけどーーーナーニーーーー?」

「ステキですね。一人称が自分の下の名前の女の子、キライじゃないです。嫌がる人もいると思いますがワタシはイイと思いますよ。では、そんな樋口さんにお教えしたい猫がモテる理由なんですが、、、」

 

 おバカキャラのように話す樋口さんに対し、先生の言葉はやさしい。

 でも、やさしさの奥に見えない怖さがある。

 普段大人しい人が怒ると怖くなっちゃうあのイメージ。先生の脳内のどこかに隠されている怒りスイッチを押してしまったらとんでもないことになりそうな気がした。

 

 先生は、わたしの脳内セリフに気付いたのかチラッとわたしを見たが、すぐに目をそらし、今までよりも早口でまくしたてるように猫がモテる理由を話し出した。

 

※先生の授業は早口で言葉数が多く、聞き取れない言葉もあったり、たまに話が脇道にそれたりして話し言葉で書いてしまうと原稿用紙の無駄になりそうなので、わたしがノートにまとめた要点をご覧頂きます。

 

【猫がモテる理由】

◎丸くてぱっちりした目の人を「猫目」と呼ぶように、猫の目は丸くて大きく、とてもぱっちりしている。大きい瞳がみんなに愛される。

◎猫の小さな口とおでこの大きさの比率は人間の赤ちゃんと似ている。だから母性本能をくすぐる。

◎「体を足などにこすりつける」「鳴きながらスリスリする」これもかわいい。

◎こすりつけるのはニオイを付けているという説がある。ニオイをつけて自分の物と主張している。これは飼い主さんを「自分のものだと主張している」そんな欲張りなところもかわいい。

◎自由奔放でかわいい

◎マイペース、マイウェイなのがかわいい

◎ツンデレなのがかわいい

◎素っ気ないと思ったら急に甘えてくる所がかわいい

◎妹キャラっぽいところもかわいい

◎「俺がいないとダメだなコイツは」と男性の保護欲をかきたてるところがかわいい

◎道端に落ちてるマフラーや手袋、倒れてる人間には触らないのに野良猫をなでなでできるのはとにかく猫が可愛いからだ

  ・

  ・

  ・

 なるほど。一番最後の項目は必要だったのだろうか?わたしは改めてノートを見直し、首をかしげた。

 

 でも、でも、でも、、、

 

 

 

 この授業、めっちゃ楽しい!!!

 

 先生の長々とした話が全然ツラくなかった。そんなに猫に興味あるワケでもなかったのに、自分でも目がキラキラしているのがわかる。

 好きなアーティストの新曲を聞いているときのようなワクワク感とすべての言葉が頭に浸透していく感じと似ている。

 先生の話し方もたしかに上手い。声も聞き取りやすくて(早口すぎるけど)週末の朝にラジオから聞こえてきてもおかしくないぐらいだ。

 

バーーーン!!!

 

 言葉のマシンガンが止まったと思ったら、突然銃声のような衝撃音が耳をつんざいた。黒板を思い切り叩いた先生の手の周囲にはチョークの粉がキラキラと舞っていた。

 

「ですが、こんなことはよく言われていることです。これができる女子なんて、世の中にはくさるほどいます」

 

バンッ!

 今度は机に両手を叩き付けて言った。

「みなさんが学ぶべきはここからです!
 行きますヨーーーー!!!!次の授業はコーーーーーレだーーーーーーーーー!」

 

 

 そう言いながら黒板を突き出すように力強く両手で押した。
 すると、黒板は観音開きの扉のように大きく開いた。
 黒板の向こうには教室よりも広いキラキラした部屋が広がっていた。

 

 え?なになに?こわいこわい

 

「ようこそ♪ニャンダーランドへ!」

 

 は!?
 ニャンダーランドって?
 …そう思いながら、ようやく目の前の光景を冷静に見られるようになってきた。

 

 目の前に広がっていたのは、猫カフェだった。

 わたしたちがいる教室と向こうをへだてた間にはマジックミラーがあり、向こう側の部屋ではかわいい猫たちが自由気ままに過ごしている。

 そんな猫たちを見て微笑んでいるお客さんの姿もたくさんあった。

 

「早速ですが、これからみなさんには猫になっていただきます。こちらは現在絶賛営業中のホンモノの猫カフェです。お店に入ったらその瞬間から皆さんは猫です。お客さんの目には、皆さんが猫にしか見えません。思う存分、猫になりきって実際の猫よりも人気者になってください。それがここからの課題です。どうでしょう?ご理解いただけましたでしょうか?」

 

 シーンとしたまま。シーンとしまくっている教室。誰も返事をしない。できないというのが正しいかもしれない。ところが、

「ちょっと待って下さい!こんなことやってなにか意味があるんですか?」

 

 一番後ろに座っていた女子が突然立ち上がって声を挙げた。先生は少しだけ振り返り、チラッと細い目で見つめた。

 

「なにか意味があるのか、、、う~ん、そうですねえ、、、でもそれって今、聞くことですか?」

 

 女子は眉間にシワを寄せる。
 それ以上に先生の目つきも鋭く変わった。


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