春 かすか

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第四部

おりのなか

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 ⚠︎閲覧自己責任・性的描写あり

 ーーこの屋敷に来て、三年が経つ。閉ざされた空間の中で、ぼくは、三年の月日をたった一人で過ごした。

 三年前、えりかが夢に出て来た、ゆきのあの発言により、ぼくが絶望に暮れた日。ーーあれから、えりかと再会する事になると予期していたのだが、えりかとは、えりかがこの屋敷の屋上から飛び降りてからは、一度も対面していない。

 鏡の中に映るぼくは、大分変わった。背も伸びたし、声変わりもした。三年経った今、生きていれば、えりかも少なからず、成長した姿になっているだろう。

 ーー今のぼくは、えりかとは会いたくはなかった。

 だけど、そのぼくの切実な思いは。ーー数日後に、無情にも打ち砕かれる事となる。

   ♡

 ぼくの十三歳の誕生日。ゆきに誕生日を祝われる中、食堂で誕生日パーティーをした。ゆきは酒を飲んでいる。今日のゆきは上機嫌そうだった。

 自室に戻ると、ゆきからの大量のプレゼントが届く。その中から、高価そうな万年筆を一本、開封した。シンプルだが、有名なブランドのメーカーだった。ぼくは、ボールペンで小豆にメモを取る癖があるので、これは使おうと思った。

 ーーそうだ。かすかに見て貰いたいものがあるんだ。夜の八時頃に僕の仕事が終わるから、その時間帯に地下室に来てくれないかい?

 ふと、ゆきに言われた言葉を思い出す。ぼくは、アンジュを今日の分、ゆきから貰っていない事に気付く。毎日欠かさず、飲まなければいけない必需品のアンジュ。ぼくは、置き時計を見やると八時前の時刻だった為、ゆきの用件と次いでにアンジュを貰いに、地下室へ向かった。

   ♡

 地下室は滅多に来ない。扉をノックすると、ゆきから「ーー開いてるよー」と間延びする応答があったので、ぼくは地下室の扉を開けた。地下室の内装は、屋敷と大差なかった。ぼくは、部屋を見渡す。

 ゆきが優雅にソファに腰掛けて、ワインを嗜んでいた。ゆきの両隣には、ゆきの友人である、ジャムとルキがいる。二人はトランプでポーカーをしていた。

 シャンデリアが輝く中で、三人はそれぞれ、趣味に興じている。ぼくは、何の為に呼ばれたのかと思い、不思議そうにしていると、ゆきは、ぼくにあっけらかんと笑顔で言ったのだ。

「ーーかすか。服、全部脱いで?」

   ♡

 ぼくは、黙って、ゆきの言われた通りにすると、ゆきからは布の目隠しをされた。ゆきに手を繋がれて、手探りで歩を進める全裸のぼく。

 そして、鉄の扉が開く音がして、足を進めるとゆきに仰向けにベッドへ寝かせられた。両手足に枷をつけられる。そして、目隠しを外されて、光が眩しくて、目を凝らすと、にっこり微笑むゆきがぼくを見下ろしていた。

 移動した場所、ぼくがいる場は。ーーそこは、檻の中だった。

「……今日の日の為に、前から準備しておいたんだ。ーーかすかが喜んでくれると思って」

 そのゆきの不穏な言葉に、今から何が始まるのだろうと思う。でも、もうぼくは、今のぼくは、驚かずに無表情で黙り込んでいた。

 ゆきは奥のカーテンを開ける。ぼくは、寝た体制のまま、顔を上げて開かれたカーテンの奥に視線を運ぶ。

 最初、そこに、何があるのかが分からなかった。薄暗い空間の中に、もぞりと動く何かがいる。

 それはーー人影だった。

「ーー!!?」

 ぼくは、驚愕して目を見開く。そこには、いやらしい下着姿の成長したえりかが恥じらいを含んだ表情で座っていた。息を呑むぼくに、ゆきは檻から出ると、無情にも鉄製の扉を閉める。ーー扉の閉まる音で目の前が真っ暗になる感覚がした。

「ーーじゃあ、存分に楽しんで? かすか。久し振りのえりかをいっぱい堪能してね」
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