25 / 80
第二章
#2-2-2 謎の男②
しおりを挟む
「ほらな」
「あららー……」
龍の予想通り、〈きくちパン〉はすでに閉店していた。閉店時間は一八時らしいが、それまでに完売してしまう事がほとんどで、時間いっぱいまで営業しているところを、龍は今までほとんど見た事がなかった。
「せっかくですから、もうちょっとお散歩しましょ」
「何処に行くんだ」
「一つ隣の道はどうです? 雷徒町に続いている、廃墟のある通りです」
「いいけど……あの廃墟って、やっぱ出るのか? 昔、住人が殺されたって聞いた事があるんだが」
「綺麗な女性が一人で住んでいらっしゃいますよ。会いに行きますか?」
「いや、それはいい……。雷徒町へ出たら戻るぞ。暗くなったからな」
「はーい」
高齢者や犬を散歩させる女性、学生たちとすれ違いながら、二人は雷徒町へ続く道を進んだ。
「ちょっと肌寒いな」
「気温が下がってきましたね」
「でもお前は人間じゃないから大して──」言い終わらないうちに、龍は歩みを止めた。
「どうしました?」
「人が出て来た。あの廃墟の門から」
廃墟まで一四、五メートル程離れているが、見間違いではなかった。帽子を被った背の高い、風貌からして白人であろう男性が一人、門を出て後ろ手にゆっくり閉めているところだ。
「鎖がしてあったはずだ」
「住人の良香さんに頼めば開けてもらえますよ」
「〝見える〟人間……か?」
男性は雷徒町の方向へ歩き出しかけたが、龍に気付くと立ち止まった。その視線は、明らかに龍だけでなくアルバにも向けられている。
「見えてるな」
「そうみたいですね」
引き返すのも不自然なので、龍は再び歩き出した。
「あの男性、ちょっと変な感じがします」
一歩遅れて続くアルバが呟いた。どういう意味かと問う余裕もないうちに、男性の前に差し掛かった。
「そちらのお嬢さん、デュラハンだよね」
何かしら声を掛けられるのではないかと予想してはいたが、龍は少々驚いた。相手が違和感のない流暢な日本語を喋った事に対してではない。首を外していなければ甲冑姿でもなく、首なし馬にも乗っていない少女が、何故デュラハンだとわかったのだろうか。
「……見えるんですね」
龍が答えると、男性はうっすら微笑み、今度はアルバに向かって、
「日本でデュラハンだなんて珍しいな。アイルランドかスコットランド出身かな」
「アイルランドです」アルバが答えた。
「アイルランドか。いい所だよね。私は好きだよ」
「有難うございます」
街灯がすぐ近くにあるので、改めて男性の容姿を確認する事が出来た。一九〇センチはありそうな背丈に、ストロベリーブロンドの短髪、白いというよりは若干青白い肌。三〇代くらいだろうか。ワインレッドの帽子──ホンブルグハットという名前だと、龍は後日知る──と、同色のスーツを着こなしている。
──派手だな。
それでも不思議と、浮いているとは感じなかった。むしろ、静かにしていればほとんどの人間は彼の存在に気付かないのではないか──何故かそんな気がした。
男性と目が合うと、龍はドキリとした。
「人を探しているんだ」
男性は龍の視線を気にしている様子はなく、うっすら微笑んだままだったが、反対に龍は何となく落ち着かなかった。
「アヤタカ・ミチワキって男を知っているかな」
「……アヤタカ?」
「君や私と同じく〝見える〟人間だ。黒いセミロングヘアーで、左耳にシルバーのピアスをしている。背丈は君より二、三センチくらい高い。年齢は確か、四〇くらいだったかな。ハジメ・オオイと名乗る事もあるようだ」
龍とアルバは顔を見合わせ、先にアルバがかぶりを振ると、龍も「いいえ」と答えた。
「それじゃあ、その姪にあたるサオリ・ミチワキって女性は?」
──サオリ・ミチワキ?
「彼女の方には一度も会った事がないんだけど、後ろのあの家の女性によると、二〇歳前後で、ここからそう離れていない所に住んでいるようなんだ。その姪っ子なら居場所がわかるかなと思ってね」
──ヴードゥーの精霊を連れているっていう……?
「その人も知らないですねえ」アルバはごく自然に答えると、碧い目で龍を見やった。
「……俺も知らないです」龍も努めて自然に答えた。
「そのアヤタカさんて方とは、お友達なんですか?」アルバが男性に尋ねた。無邪気さを装いながらもその実、しっかり探りを入れている。
「友達……だって?」男性はほんの一瞬真顔を見せたが、すぐにまた微笑んだ。「そんな間柄じゃない。ただの顔見知りさ」
ジジジジッ。ジジジジジーッ。
街灯から虫の鳴き声のような唸り音が響く。龍は何故か余計に落ち着かなくなってきた。
「すまないね、時間を取らせてしまって。私はこのまま雷徒町方面へ行く。君たちも同じかな」
「いえ、逆です。ちょっと散歩していたんで」
「そうか。それじゃあ、気を付けて帰るんだよ」
「はい」
男性の後ろ姿が小さくなると、龍とアルバも元来た道を戻った。
「アルバ、今の人──」
「何だかちょっと怖かったです」
「怖い?」
デュラハンが、何よりもアルバが発するとは思えない意外な言葉に、龍は目を丸くした。
「あの男性、人間には間違いないんでしょうけど……でも、普通の人間じゃない」
「……まあ、〝見える〟人間なら、普通じゃないかもな」
「そうじゃなくて……それだけじゃなくて……うーん……」
アルバが考え込み始めたので、龍は何も口出しせず黙って隣を歩いた。一度だけ後ろを振り向いてみたが、男性の姿はすでになかった。
「さっきの男性、かなり強い力を持っているようでした。それこそ、人並外れた」
自宅マンションの目の前まで来ると、アルバはようやく口を開いた。
「力、って」
「俗に言う魔力とか霊力ってやつですね。人外の存在を認知出来るからって、強いとは限らないんですよ」
「へえ……?」
「それと……かなり長生きされていると思います」
「長生き?」
「本来ならとっくに死んでいるはず。少なくとも、見た目通りの年齢じゃないですよ」
「……何だそれ」
エントランスで住人とすれ違ったので、互いに会釈する。エレベーターホールに着き、周囲に他の住人がいない事を確認すると、龍は続ける。
「俺が見た限りじゃ、三〇代くらいだったけど……まさか、もっとじいちゃんて事か?」
「おじいちゃんなんてレベルじゃないかもしれません」エレベーターに乗り込みながらアルバが答えた。「総合的に判断して、とにかく普通の人間じゃありません」
龍が階数ボタンを押し、扉が閉まる。
「……悪い、わからない事だらけなんだが」
苦笑する龍に対し、アルバは真顔で、
「それはワタシも同じです」
家族はまだ誰も帰ってはいなかった。あと三〇分かそこらで、母か兄が姿を見せるだろう。
龍とアルバは並んでベッドに腰を下ろした。
「で、さっきの続きだけどさ……そんな得体の知れない男が、道脇茶織さんのおじさんを探しているって……どういう事だろうな。〝見える〟人間同士の繋がりなんだろうけど」
「少なくとも、仲良しではなさそうでしたね」
「茶織さんの名前が出た時、名前だけなら知ってるって答えようか迷ったんだ。でも先にお前が知らないって答えて、俺にもそう言えって目で訴えてるのがわかったからさ」
アルバはウフフと笑い、
「教えちゃいけない気がしたんです。それに名前だけ知ってるって答えても、ややこしくて面倒でしょう。順を追って色々と説明しなくちゃなりませんし」
「説明したら、協力者になってくれたって事は──」龍は男性の表情、とりわけ微笑みを思い出し、かぶりを振った。「──ないよな、多分。あの人は尋ね人以外には興味がなさそうだった」
男性は親しげで口調は柔らかく、何度か微笑んではいたが、そんな様子を目にしても龍は落ち着かなかった。その理由が、今になってわかった気がした。
「あの人、目が全然笑ってなかったもんな」
「ええ。作り笑いが下手っぴでした」
リビングの方が騒がしくなった。母と兄が一緒に帰って来たようだ。駅か道の途中で会ったのだろう。
「ちょっとぉー、龍? 帰って来てるんなら洗濯物取り込んでおいてよねーっ!」
「龍、今日はローストビーフだぞ!」
「ビーフじゃなくてポークよ、ポーク」
アルバが楽しそうに笑いかけた。あの男性と違い、見ているこちらも顔が綻ぶような、愛らしく自然な表情だ。
「リュウさん、行ってらっしゃい」
「ああ」
龍が部屋を去ると、アルバはベッドに腰掛けたまま思案した。
ピエロ以外にも困った要素が増えてしまった。良香の屋敷の前で出会ったあの男、今まで遭遇したどの人間よりも、あらゆる意味で異様だった。愛馬を殺したむさっ苦しい男が可愛く思えるくらいだ。そもそも今日のあの男は、もはや人間とは呼べないのではないだろうか。
龍は気付いていなかったようだが、あの男は、アヤタカ・ミチワキについて語る時、どす黒い殺意を隠そうともしなかった。
龍がサオリ・ミチワキと知り合ったがために、あの男に目を付けられ、危害を加えられるような事があってはならない。殺人ピエロだろうが人間を辞めかけた男だろうが、人類を滅ぼすために天界から遣わされた天使の軍団だろうが、龍を傷付けようとする者は絶対に許さない。
リビングの方から笑い声と、カチャカチャとした音が聞こえた。あの輪に入れば──入る事が出来るのならば──龍と二人きりの時とはまた違った楽しさと、暖かさが感じられるに違いない。そう考えるのは、この家に来てから、これで何度目だろうか。
アルバは首を外すと両腕で抱え込み、碧い目をゆっくりと閉じた。
「あららー……」
龍の予想通り、〈きくちパン〉はすでに閉店していた。閉店時間は一八時らしいが、それまでに完売してしまう事がほとんどで、時間いっぱいまで営業しているところを、龍は今までほとんど見た事がなかった。
「せっかくですから、もうちょっとお散歩しましょ」
「何処に行くんだ」
「一つ隣の道はどうです? 雷徒町に続いている、廃墟のある通りです」
「いいけど……あの廃墟って、やっぱ出るのか? 昔、住人が殺されたって聞いた事があるんだが」
「綺麗な女性が一人で住んでいらっしゃいますよ。会いに行きますか?」
「いや、それはいい……。雷徒町へ出たら戻るぞ。暗くなったからな」
「はーい」
高齢者や犬を散歩させる女性、学生たちとすれ違いながら、二人は雷徒町へ続く道を進んだ。
「ちょっと肌寒いな」
「気温が下がってきましたね」
「でもお前は人間じゃないから大して──」言い終わらないうちに、龍は歩みを止めた。
「どうしました?」
「人が出て来た。あの廃墟の門から」
廃墟まで一四、五メートル程離れているが、見間違いではなかった。帽子を被った背の高い、風貌からして白人であろう男性が一人、門を出て後ろ手にゆっくり閉めているところだ。
「鎖がしてあったはずだ」
「住人の良香さんに頼めば開けてもらえますよ」
「〝見える〟人間……か?」
男性は雷徒町の方向へ歩き出しかけたが、龍に気付くと立ち止まった。その視線は、明らかに龍だけでなくアルバにも向けられている。
「見えてるな」
「そうみたいですね」
引き返すのも不自然なので、龍は再び歩き出した。
「あの男性、ちょっと変な感じがします」
一歩遅れて続くアルバが呟いた。どういう意味かと問う余裕もないうちに、男性の前に差し掛かった。
「そちらのお嬢さん、デュラハンだよね」
何かしら声を掛けられるのではないかと予想してはいたが、龍は少々驚いた。相手が違和感のない流暢な日本語を喋った事に対してではない。首を外していなければ甲冑姿でもなく、首なし馬にも乗っていない少女が、何故デュラハンだとわかったのだろうか。
「……見えるんですね」
龍が答えると、男性はうっすら微笑み、今度はアルバに向かって、
「日本でデュラハンだなんて珍しいな。アイルランドかスコットランド出身かな」
「アイルランドです」アルバが答えた。
「アイルランドか。いい所だよね。私は好きだよ」
「有難うございます」
街灯がすぐ近くにあるので、改めて男性の容姿を確認する事が出来た。一九〇センチはありそうな背丈に、ストロベリーブロンドの短髪、白いというよりは若干青白い肌。三〇代くらいだろうか。ワインレッドの帽子──ホンブルグハットという名前だと、龍は後日知る──と、同色のスーツを着こなしている。
──派手だな。
それでも不思議と、浮いているとは感じなかった。むしろ、静かにしていればほとんどの人間は彼の存在に気付かないのではないか──何故かそんな気がした。
男性と目が合うと、龍はドキリとした。
「人を探しているんだ」
男性は龍の視線を気にしている様子はなく、うっすら微笑んだままだったが、反対に龍は何となく落ち着かなかった。
「アヤタカ・ミチワキって男を知っているかな」
「……アヤタカ?」
「君や私と同じく〝見える〟人間だ。黒いセミロングヘアーで、左耳にシルバーのピアスをしている。背丈は君より二、三センチくらい高い。年齢は確か、四〇くらいだったかな。ハジメ・オオイと名乗る事もあるようだ」
龍とアルバは顔を見合わせ、先にアルバがかぶりを振ると、龍も「いいえ」と答えた。
「それじゃあ、その姪にあたるサオリ・ミチワキって女性は?」
──サオリ・ミチワキ?
「彼女の方には一度も会った事がないんだけど、後ろのあの家の女性によると、二〇歳前後で、ここからそう離れていない所に住んでいるようなんだ。その姪っ子なら居場所がわかるかなと思ってね」
──ヴードゥーの精霊を連れているっていう……?
「その人も知らないですねえ」アルバはごく自然に答えると、碧い目で龍を見やった。
「……俺も知らないです」龍も努めて自然に答えた。
「そのアヤタカさんて方とは、お友達なんですか?」アルバが男性に尋ねた。無邪気さを装いながらもその実、しっかり探りを入れている。
「友達……だって?」男性はほんの一瞬真顔を見せたが、すぐにまた微笑んだ。「そんな間柄じゃない。ただの顔見知りさ」
ジジジジッ。ジジジジジーッ。
街灯から虫の鳴き声のような唸り音が響く。龍は何故か余計に落ち着かなくなってきた。
「すまないね、時間を取らせてしまって。私はこのまま雷徒町方面へ行く。君たちも同じかな」
「いえ、逆です。ちょっと散歩していたんで」
「そうか。それじゃあ、気を付けて帰るんだよ」
「はい」
男性の後ろ姿が小さくなると、龍とアルバも元来た道を戻った。
「アルバ、今の人──」
「何だかちょっと怖かったです」
「怖い?」
デュラハンが、何よりもアルバが発するとは思えない意外な言葉に、龍は目を丸くした。
「あの男性、人間には間違いないんでしょうけど……でも、普通の人間じゃない」
「……まあ、〝見える〟人間なら、普通じゃないかもな」
「そうじゃなくて……それだけじゃなくて……うーん……」
アルバが考え込み始めたので、龍は何も口出しせず黙って隣を歩いた。一度だけ後ろを振り向いてみたが、男性の姿はすでになかった。
「さっきの男性、かなり強い力を持っているようでした。それこそ、人並外れた」
自宅マンションの目の前まで来ると、アルバはようやく口を開いた。
「力、って」
「俗に言う魔力とか霊力ってやつですね。人外の存在を認知出来るからって、強いとは限らないんですよ」
「へえ……?」
「それと……かなり長生きされていると思います」
「長生き?」
「本来ならとっくに死んでいるはず。少なくとも、見た目通りの年齢じゃないですよ」
「……何だそれ」
エントランスで住人とすれ違ったので、互いに会釈する。エレベーターホールに着き、周囲に他の住人がいない事を確認すると、龍は続ける。
「俺が見た限りじゃ、三〇代くらいだったけど……まさか、もっとじいちゃんて事か?」
「おじいちゃんなんてレベルじゃないかもしれません」エレベーターに乗り込みながらアルバが答えた。「総合的に判断して、とにかく普通の人間じゃありません」
龍が階数ボタンを押し、扉が閉まる。
「……悪い、わからない事だらけなんだが」
苦笑する龍に対し、アルバは真顔で、
「それはワタシも同じです」
家族はまだ誰も帰ってはいなかった。あと三〇分かそこらで、母か兄が姿を見せるだろう。
龍とアルバは並んでベッドに腰を下ろした。
「で、さっきの続きだけどさ……そんな得体の知れない男が、道脇茶織さんのおじさんを探しているって……どういう事だろうな。〝見える〟人間同士の繋がりなんだろうけど」
「少なくとも、仲良しではなさそうでしたね」
「茶織さんの名前が出た時、名前だけなら知ってるって答えようか迷ったんだ。でも先にお前が知らないって答えて、俺にもそう言えって目で訴えてるのがわかったからさ」
アルバはウフフと笑い、
「教えちゃいけない気がしたんです。それに名前だけ知ってるって答えても、ややこしくて面倒でしょう。順を追って色々と説明しなくちゃなりませんし」
「説明したら、協力者になってくれたって事は──」龍は男性の表情、とりわけ微笑みを思い出し、かぶりを振った。「──ないよな、多分。あの人は尋ね人以外には興味がなさそうだった」
男性は親しげで口調は柔らかく、何度か微笑んではいたが、そんな様子を目にしても龍は落ち着かなかった。その理由が、今になってわかった気がした。
「あの人、目が全然笑ってなかったもんな」
「ええ。作り笑いが下手っぴでした」
リビングの方が騒がしくなった。母と兄が一緒に帰って来たようだ。駅か道の途中で会ったのだろう。
「ちょっとぉー、龍? 帰って来てるんなら洗濯物取り込んでおいてよねーっ!」
「龍、今日はローストビーフだぞ!」
「ビーフじゃなくてポークよ、ポーク」
アルバが楽しそうに笑いかけた。あの男性と違い、見ているこちらも顔が綻ぶような、愛らしく自然な表情だ。
「リュウさん、行ってらっしゃい」
「ああ」
龍が部屋を去ると、アルバはベッドに腰掛けたまま思案した。
ピエロ以外にも困った要素が増えてしまった。良香の屋敷の前で出会ったあの男、今まで遭遇したどの人間よりも、あらゆる意味で異様だった。愛馬を殺したむさっ苦しい男が可愛く思えるくらいだ。そもそも今日のあの男は、もはや人間とは呼べないのではないだろうか。
龍は気付いていなかったようだが、あの男は、アヤタカ・ミチワキについて語る時、どす黒い殺意を隠そうともしなかった。
龍がサオリ・ミチワキと知り合ったがために、あの男に目を付けられ、危害を加えられるような事があってはならない。殺人ピエロだろうが人間を辞めかけた男だろうが、人類を滅ぼすために天界から遣わされた天使の軍団だろうが、龍を傷付けようとする者は絶対に許さない。
リビングの方から笑い声と、カチャカチャとした音が聞こえた。あの輪に入れば──入る事が出来るのならば──龍と二人きりの時とはまた違った楽しさと、暖かさが感じられるに違いない。そう考えるのは、この家に来てから、これで何度目だろうか。
アルバは首を外すと両腕で抱え込み、碧い目をゆっくりと閉じた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
シゴ語り
泡沫の
ホラー
治安も土地も悪い地域に建つ
「先端技術高校」
そこに通っている主人公
獅子目 麗と神陵 恵玲斗。
お互い、関わることがないと思っていたが、些細なことがきっかけで
この地域に伝わる都市伝説
「シシ語り」を調べることになる…。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【連作ホラー】伍横町幻想 —Until the day we meet again—
至堂文斗
ホラー
――その幻想から、逃れられるか。
降霊術。それは死者を呼び出す禁忌の術式。
歴史を遡れば幾つも逸話はあれど、現実に死者を呼ぶことが出来たかは定かでない。
だがあるとき、長い実験の果てに、一人の男がその術式を生み出した。
降霊術は決して公に出ることはなかったものの、書物として世に残り続けた。
伍横町。そこは古くから気の流れが集まる場所と言われている小さな町。
そして、全ての始まりの町。
男が生み出した術式は、この町で幾つもの悲劇をもたらしていく。
運命を狂わされた者たちは、生と死の狭間で幾つもの涙を零す。
これは、四つの悲劇。
【魂】を巡る物語の始まりを飾る、四つの幻想曲――。
【霧夏邸幻想 ―Primal prayer-】
「――霧夏邸って知ってる?」
事故により最愛の娘を喪い、 降霊術に狂った男が住んでいた邸宅。
霊に会ってみたいと、邸内に忍び込んだ少年少女たちを待ち受けるものとは。
【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】
「どうか、目を覚ましてはくれないだろうか」
眠りについたままの少女のために、 少年はただ祈り続ける。
その呼び声に呼応するかのように、 少女は記憶の世界に覚醒する。
【流刻園幻想 ―Omnia fert aetas―】
「……だから、違っていたんだ。沢山のことが」
七不思議の噂で有名な流刻園。夕暮れ時、教室には二人の少年少女がいた。
少年は、一通の便箋で呼び出され、少女と別れて屋上へと向かう。それが、悲劇の始まりであるとも知らずに。
【伍横町幻想 ―Until the day we meet again―】
「……ようやく、時が来た」
伍横町で降霊術の実験を繰り返してきた仮面の男。 最愛の女性のため、彼は最後の計画を始動する。
その計画を食い止めるべく、悲劇に巻き込まれた少年少女たちは苛酷な戦いに挑む。
伍横町の命運は、子どもたちの手に委ねられた。
ラヴィ
山根利広
ホラー
男子高校生が不審死を遂げた。
現場から同じクラスの女子生徒のものと思しきペンが見つかる。
そして、解剖中の男子の遺体が突如消失してしまう。
捜査官の遠井マリナは、この事件の現場検証を行う中、奇妙な点に気づく。
「七年前にわたしが体験した出来事と酷似している——」
マリナは、まるで過去をなぞらえたような一連の展開に違和感を覚える。
そして、七年前同じように死んだクラスメイトの存在を思い出す。
だがそれは、連環する狂気の一端にすぎなかった……。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
心霊捜査官の事件簿 依頼者と怪異たちの狂騒曲
幽刻ネオン
ホラー
心理心霊課、通称【サイキック・ファンタズマ】。
様々な心霊絡みの事件や出来事を解決してくれる特殊公務員。
主人公、黄昏リリカは、今日も依頼者の【怪談・怪異譚】を代償に捜査に明け暮れていた。
サポートしてくれる、ヴァンパイアロードの男、リベリオン・ファントム。
彼女のライバルでビジネス仲間である【影の心霊捜査官】と呼ばれる青年、白夜亨(ビャクヤ・リョウ)。
現在は、三人で仕事を引き受けている。
果たして依頼者たちの問題を無事に解決することができるのか?
「聞かせてほしいの、あなたの【怪談】を」
怪異相談所の店主は今日も語る
くろぬか
ホラー
怪異相談所 ”語り部 結”。
人に言えない“怪異”のお悩み解決します、まずはご相談を。相談コース3000円~。除霊、その他オプションは状況によりお値段が変動いたします。
なんて、やけにポップな看板を掲げたおかしなお店。
普通の人なら入らない、入らない筈なのだが。
何故か今日もお客様は訪れる。
まるで導かれるかの様にして。
※※※
この物語はフィクションです。
実際に語られている”怖い話”なども登場致します。
その中には所謂”聞いたら出る”系のお話もございますが、そういうお話はかなり省略し内容までは描かない様にしております。
とはいえさわり程度は書いてありますので、自己責任でお読みいただければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる