57 / 113
57
しおりを挟む「ぐふっ…!?」
模擬戦闘が始まって5分もしない内に青年が倒れ、HPゲージが赤色になり点滅し始めた。
「あ…えと、あの…やりすぎでしたか…?」
対する女の人は全くの無傷で困惑した様子で倒した青年に駆け寄る。
「…な…!?」
「…結局、ステータスの差が埋まれば経験だのレベルの差だのは関係ないんだな」
信じられない物を見るように驚愕して言葉を失ってる男の隣で彼女はつまらなそうに呟く。
「…い、いったい、どんなステータス強化を…?」
「ん~?『腕力強化』と『脚力強化』、『硬化』に『視力強化』…あとは『集中力強化』や『知力強化』かな?」
呆然としたように聞いてくる男に彼女は適当に返した。
「腕力強化や脚力強化、硬化は分かるが…視力強化や集中力強化…知力強化とは…?」
「さあ?動体視力とかの目の良さが上がるんじゃないの?あとは集中力が上がるとか…頭の良さが上がるとか…」
「頭の良さだと!?」
彼女の適当な返答の最後の方に男が食い気味で反応する。
「ど、どういう風に頭が良くなるんだ!?」
「どういう風って…判断力や理解力、記憶力とかが上がるんじゃないの?」
興奮したように聞いてくる男に彼女は鬱陶しいものを見るような表情になって聞き返す。
「…なんと…!そんな夢のような…!……頼みがある!!」
男は感激したように呟くと彼女の前で膝を着いた。
「同じ料理でも良い…だから俺の食事は毎日三食『知力強化』の効果がある物にしてくれないか?この通りだ!」
そして彼女に頼みながら深々と頭を下げる。
「えー…面倒くさいから嫌だ」
「ソコをなんとか…!頼む!」
彼女が却下するも粘るように男はまた頭を下げた。
「俺の願いを聞いてくれるなら君の奴隷にでも下僕にでもなんでもなろう!なんでも言う事を聞くからお願いだ!この通りだ!」
「…ぐっ…俺、から…も、頼む…!」
なりふり構わず頭を下げる男を見て可哀想になったのか、何か思う事があったのか、何かを感じたのか…
青年も体を引きずるように歩いて来て彼女に頭を下げて頼む。
「…そこまで言うんなら…」
流石の彼女も青年と男の二人に頭を下げられるとアレなのか…嫌そうに渋々折れる。
「本当か!?ありがとう!お前のおかげだ!」
「うぐっ!?」
男は彼女の嫌そうな承諾を聞いて嬉しさを抑えきれずに青年に抱きついた。
が、青年は怪我が痛むのか顔を顰める。
「…と言うかあんた死にかけじゃん」
「…回復、アイテムが…さっきで、底…尽きていた…」
未だにHPゲージが赤で点滅している青年を見て彼女が呆れたように言うと、苦しそうに呟いた。
「…まあ私の所為でもあるし…スキル『料理』」
彼女は納得いかなそうな顔をして袋からフライパンを取り出すとスキルを使う。
「包丁スキル『千切り』『笹切り』フライパンスキル『瞬間加熱』」
袋から取り出した山菜やきのこを彼女はスキルで鮮やかに空中で切り刻んで炒めていく。
「はいよ」
「…すまない…」
彼女が料理を入れた皿とスプーンを差し出すと青年は申し訳なそうに受け取って食べ始める。
「今日の夕飯からが楽しみだ…!ようやく俺の夢が現実に…!」
青年が緑色の光に包まれ、HPゲージが赤から黄色に変わると男はワクワクした様子で呟いた。
0
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~
厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない!
☆第4回次世代ファンタジーカップ
142位でした。ありがとう御座いました。
★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています
葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。
そこはど田舎だった。
住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。
レコンティーニ王国は猫に優しい国です。
小説家になろう様にも掲載してます。
魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました
うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。
そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。
魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。
その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。
魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。
手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。
いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる