11 / 113
11
しおりを挟む
「さてと…始めるか」
家に着いて食材の仕分けや仕込みを終わらせた彼女がエプロンを着ける。
「…ポニーテール、似合うな」
「確か、魚の生臭さがダメだって言ってたよね?」
青年の褒め言葉をスルーして彼女は確認するように聞く。
「…ああ、だが食べれない事は無い」
「…じゃあコイツのだけ刺身にしますかね…スキル『料理』」
彼女は料理の方向性を決めて呟くとスキルを使う。
「コンロスキル『発火』」
コンロがあるのにも関わらず彼女はわざわざスキルを使って火をつけ、キノコと魚を一つずつ網に乗せて焼き始めた。
パラパラ…と上から塩をふりながらキノコと魚をひっくり返して両面焼いていく。
「…フライパンスキル『瞬間加熱』」
酒を少し入れたフライパンに網を移して蓋を閉め今度は蒸し始める。
「…?何を…?」
「………よし」
青年の呟きを無視して時間を計るかのように指折り数えてた彼女が、急に蓋を開けて網を取り出しキノコと魚を皿に移す。
「おお!美味そうだな!…もしかして俺のためにわざわざ…?」
「は?何言ってんの?」
期待を込めたような青年の言葉を一蹴した彼女は皿を持って外に出た。
「…俺のための料理じゃなかったのか…」
「アレは『網焼きの酒蒸し』って言って、あのキノコと魚でやったら『意思疎通』の付与効果があるんだよ」
テーブルに突っ伏して落ち込んでいる青年に戻って来た彼女が説明する。
「…意思、疎通…?」
「ん、ボスの魔物が人間の言葉を聞けて喋るようになる」
あんたが来なけりゃあんなん必要無かったのに…と彼女は愚痴りながらコンロに火をつけた。
「…どういう事だ?」
「魔物達が山から出なけりゃ退治する必要は無いんっしょ?だったら出ないように言えば良い」
彼女はコンロに大きな網を敷いて魚を並べながら説明する。
「なるほど…そのためにわざわざ魚とキノコを?」
「…せっかく環境を整えた山から出るのは嫌だし」
手袋を着けて網を動かしながら魚をくるくる回し、彼女が呟く。
「…そうか、だが…魔物退治は俺の一存でどうこう出来る問題では…」
あの魔物にやられた負傷者も多数出てるからな、納得させるのは難しいかもしれない…と言って青年は腕を組む。
「どうせあんた達が喧嘩売ったんだろ?」
「…人を襲っていると報告があったから仕方なく、だ」
「魔物もきっと同じだっただろうよ…人間が喧嘩を売って来たから買っただけ、ってな」
ソレを魔物の所為にして退治ってのも大分自己中心的だねぇ?と青年に対して皮肉で返した。
「…君は魔物の味方なのか?」
「これでも中立で平等のつもりだけど?人間と魔物…立場を同じに思ってるだけだ」
「平等…立場を同じに、か…」
彼女の言葉を聞いて青年は腕組みを解き顎に手を当てる。
「魔物や動物側には妥協させるけど、人間側は妥協しない…おかしいなぁ?」
「…住処や食料の問題か?」
イジワルそうに言った彼女の発言の意図を察した青年は顎に手を当てたまま問う。
「人間なら、いきなり家を壊されて畑を潰されたら人権侵害だ!と訴えるか過激な行動に出るだろう?魔物や動物だって一緒だと思わないか?」
「…だがそれは…」
「人間が先住民の魔物や動物を追い出して森を開発するのと、魔物が街を占拠するの、やってる事は似たようなもの…で?人間ならどうする?」
言い淀む青年に対して彼女は振り返りもせずに追い討ちをかけた。
「街を取り返すために魔物を駆逐するよな?ソレって共存する気無くない?」
「人間の生活が第一だから…」
「その考えって人間側は妥協してるの?」
だんだん声が小さくなっていく青年に彼女は攻めるように言葉を続ける。
「…じゃあどうしろと?」
「街を壊して植樹して魔物に譲る」
「!?そんな事したら街に住んでた人達はどうなるんだ!」
せっかく手に入れた住居や仕事を放棄しろと!?と青年は立ち上がった。
「うん、ソレが魔物達の考えと同じだよ」
「!?…!住処…食料…!」
「漫画やアニメ風に言うならば正義と正義のぶつかり合いってやつ?」
妥協しないで妥協させてる側が折れるのが一番の最善手でハッピーエンドなんだろうけど、と言葉を残して彼女は網を持って外に出た。
「…そうか…これは、理不尽な戦争と同じか…」
彼女が戻って来るとテーブルに握り拳を置いてる青年が意味不明な結論に至ったらしい事を呟く。
「…俺は、間違っていたのか…?」
「さあ?あんたの正義や正しさなんてあんたにしか分からないし?」
青年の真顔での問いに彼女は軽いノリで返して魚をまな板に乗せる。
家に着いて食材の仕分けや仕込みを終わらせた彼女がエプロンを着ける。
「…ポニーテール、似合うな」
「確か、魚の生臭さがダメだって言ってたよね?」
青年の褒め言葉をスルーして彼女は確認するように聞く。
「…ああ、だが食べれない事は無い」
「…じゃあコイツのだけ刺身にしますかね…スキル『料理』」
彼女は料理の方向性を決めて呟くとスキルを使う。
「コンロスキル『発火』」
コンロがあるのにも関わらず彼女はわざわざスキルを使って火をつけ、キノコと魚を一つずつ網に乗せて焼き始めた。
パラパラ…と上から塩をふりながらキノコと魚をひっくり返して両面焼いていく。
「…フライパンスキル『瞬間加熱』」
酒を少し入れたフライパンに網を移して蓋を閉め今度は蒸し始める。
「…?何を…?」
「………よし」
青年の呟きを無視して時間を計るかのように指折り数えてた彼女が、急に蓋を開けて網を取り出しキノコと魚を皿に移す。
「おお!美味そうだな!…もしかして俺のためにわざわざ…?」
「は?何言ってんの?」
期待を込めたような青年の言葉を一蹴した彼女は皿を持って外に出た。
「…俺のための料理じゃなかったのか…」
「アレは『網焼きの酒蒸し』って言って、あのキノコと魚でやったら『意思疎通』の付与効果があるんだよ」
テーブルに突っ伏して落ち込んでいる青年に戻って来た彼女が説明する。
「…意思、疎通…?」
「ん、ボスの魔物が人間の言葉を聞けて喋るようになる」
あんたが来なけりゃあんなん必要無かったのに…と彼女は愚痴りながらコンロに火をつけた。
「…どういう事だ?」
「魔物達が山から出なけりゃ退治する必要は無いんっしょ?だったら出ないように言えば良い」
彼女はコンロに大きな網を敷いて魚を並べながら説明する。
「なるほど…そのためにわざわざ魚とキノコを?」
「…せっかく環境を整えた山から出るのは嫌だし」
手袋を着けて網を動かしながら魚をくるくる回し、彼女が呟く。
「…そうか、だが…魔物退治は俺の一存でどうこう出来る問題では…」
あの魔物にやられた負傷者も多数出てるからな、納得させるのは難しいかもしれない…と言って青年は腕を組む。
「どうせあんた達が喧嘩売ったんだろ?」
「…人を襲っていると報告があったから仕方なく、だ」
「魔物もきっと同じだっただろうよ…人間が喧嘩を売って来たから買っただけ、ってな」
ソレを魔物の所為にして退治ってのも大分自己中心的だねぇ?と青年に対して皮肉で返した。
「…君は魔物の味方なのか?」
「これでも中立で平等のつもりだけど?人間と魔物…立場を同じに思ってるだけだ」
「平等…立場を同じに、か…」
彼女の言葉を聞いて青年は腕組みを解き顎に手を当てる。
「魔物や動物側には妥協させるけど、人間側は妥協しない…おかしいなぁ?」
「…住処や食料の問題か?」
イジワルそうに言った彼女の発言の意図を察した青年は顎に手を当てたまま問う。
「人間なら、いきなり家を壊されて畑を潰されたら人権侵害だ!と訴えるか過激な行動に出るだろう?魔物や動物だって一緒だと思わないか?」
「…だがそれは…」
「人間が先住民の魔物や動物を追い出して森を開発するのと、魔物が街を占拠するの、やってる事は似たようなもの…で?人間ならどうする?」
言い淀む青年に対して彼女は振り返りもせずに追い討ちをかけた。
「街を取り返すために魔物を駆逐するよな?ソレって共存する気無くない?」
「人間の生活が第一だから…」
「その考えって人間側は妥協してるの?」
だんだん声が小さくなっていく青年に彼女は攻めるように言葉を続ける。
「…じゃあどうしろと?」
「街を壊して植樹して魔物に譲る」
「!?そんな事したら街に住んでた人達はどうなるんだ!」
せっかく手に入れた住居や仕事を放棄しろと!?と青年は立ち上がった。
「うん、ソレが魔物達の考えと同じだよ」
「!?…!住処…食料…!」
「漫画やアニメ風に言うならば正義と正義のぶつかり合いってやつ?」
妥協しないで妥協させてる側が折れるのが一番の最善手でハッピーエンドなんだろうけど、と言葉を残して彼女は網を持って外に出た。
「…そうか…これは、理不尽な戦争と同じか…」
彼女が戻って来るとテーブルに握り拳を置いてる青年が意味不明な結論に至ったらしい事を呟く。
「…俺は、間違っていたのか…?」
「さあ?あんたの正義や正しさなんてあんたにしか分からないし?」
青年の真顔での問いに彼女は軽いノリで返して魚をまな板に乗せる。
10
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~
厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない!
☆第4回次世代ファンタジーカップ
142位でした。ありがとう御座いました。
★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる