クラスまるごと異世界転移

八神

文字の大きさ
上 下
282 / 556

282

しおりを挟む
「さっき聖域の旗ってのを買いに来たんだけど、とっくに売り切れてたって言われてね」

「…そういう事か。交渉のついでにこの書類を持って来た…と」

「そういう事。だからその旗を売ってくれない?」

「ふむ…確かに勢いで買ってはみたものの、俺には使い用も使い道も無い」


俺が用件を言うと王子は書類をテーブルの上に置いて考え始める。


「あの旗をウミハラ殿に譲る事には異論も問題も無いが…せっかくの機会だ。タダで、というワケにはいかんなぁ」

「ま、そうなるわな…じゃ、110万でどう?」


王子のニヤリと悪そうな笑顔での言葉に俺は定価の1割増しの値段を提示した。


「金の話では無い。実は是非ともウミハラ殿にお願いしたい事があるのだが…」

「お願い?」

「ウミハラ殿は『ラフィ・マクシール』というアイシェをご存知か?」

「あー、アレね」

「!やはりツテが!?どうにかして、手に入れる事は出来ないだろうか!?一度は飲んでみたいのだ!」


…なんか知らんが、コッチの王子もアッチの王子と同じくワインが欲しいらしい。


「この前ワウシャープで飲んだアイシェの銘柄を思い出すに、ドロウィンの王族とも繋がりがあるウミハラ殿にならツテがあると踏んでいたが…!頼む!モニクァに流すよう、なんとか便宜を図ってくれ!」

「そうしたら旗を売ってくれるワケね?」

「ああ!場合によっては値引きしてもいい!」

「マジで?」

「約束しよう!このヒルミィ、二言は無い!」


長々と喋る王子に確認すると予想外の提案をしてくるので再度確認したら王子は胸を張って宣言する。


「ちょうど良かったね。まだ残ってるよ」

「…は?」


俺が兵にクーラーボックスを持って来るよう指示をしながら言うと王子は間の抜けたような声を出す。


「ノンアルのヤツは残念ながら在庫切れ、欲しかったらまた後日って事で。んで、ソレが料金表」

「…料金表?…まさか…!その、中に…!?」


兵からクーラーボックスを受け取りながら説明し、兵に紙を渡させると…


王子は紙とクーラーボックスを交互に見て何かに思い至ったかのように驚く。


「一応『ド・ロゼリーシェ』も少しは残ってるよ。どうする?」

「……なんと…本物なのか?ソレが全部、この紙に書かれている銘柄だと…?」

「ごめん。さっき売ったから欠品もあるや」


俺の確認に王子が驚愕しながら疑うように呟くので、俺はさっきの事を思い出して一言断りを入れた。


「……と、とりあえず『ラフィ・マクシール』の白の20年物を」

「はいよ。他には?」

「…赤の20年物と、40年物。白の40年物も欲しいのだが…」

「おー、一本で200万はするのに結構いくねぇ」


アッチの王子と同じような豪快な大人買いに俺は円換算で計算しながら弄るように言う。


「…本当に、本物なのか?…ラベルを見る限り本物のようだが…いやしかし、俺様とて噂で聞く程度のもので本物は未だ見た事が無いからな…」


あまりに簡単に手に入るから疑わしいのか…王子は怪しむようにテーブルの上に置かれた瓶を手に取り、ラベルを見ながら呟いた。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎
ファンタジー
 自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。 死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。 *10/17  第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。 *R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。  あと少しパロディもあります。  小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。 YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。 良ければ、視聴してみてください。 【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮) https://youtu.be/cWCv2HSzbgU それに伴って、プロローグから修正をはじめました。 ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ
ファンタジー
【小説家になろう】さまにて作品を先行投稿しています。 俺、畑中幸司。 過疎化が進む雪国の田舎町の雑貨屋をしてる。 来客が少ないこの店なんだが、その屋根裏では人間じゃない人達でいつも賑わってる。 賑わってるって言うか……祖母ちゃんの頼みで引き継いだ、握り飯の差し入れの仕事が半端ない。 食費もかかるんだが、そんなある日、エルフの女の子が手伝いを申し出て……。 まぁ退屈しない日常、おくってるよ。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

処理中です...